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鬼頭 美江 専任講師(専攻 社会心理学)

(1) 社会学とはどのような学問とお考えですか。

私が社会学と出会ったのは、大学院生として最初に参加した国際学会で、社会学者による対人関係の研究を目にした時でした。社会心理学やコミュニケーション学の研究者が、対人関係を構成する個人の特性や行動、個人同士の相互作用を対象とした研究を行っているのに対し、社会学者はその関係を取り巻くソーシャルネットワークや社会環境が与える影響を研究対象としていました。

社会学とは、一言で言ってしまえば、そうしたソーシャルネットワークや社会環境のような「社会」について学ぶ学問です。ただ、一言で「社会」といっても様々なレベルでの社会が考えられます。もっとも規模の小さいレベルでは家族や友人グループなどの身近に存在する集団、少しずつ規模を広げていくと、近隣に暮らす人々で作り上げられる地域、国、さらには「人間社会」という人類全体を含むようなマクロなレベルで考えることもできます。こうした社会というのは、どのような人々が集まって形成されるものなのでしょうか。また、こうして人々が作り上げた社会というのは、どのような特徴を持ち、個人にどのような影響を与えているのでしょうか。このような問いに答えながら、社会の実態を明らかにするのが、社会学という学問なのではないでしょうか。

 

(2) 先生が専攻されている、あるいは、この大学で学生に教えられている社会学とはどのような学問ですか。

私の専門分野は社会心理学です。社会心理学とは、集団や国などの社会や社会状況が個人の行動や心理過程に与える影響を検討していく学問です。個人を取り巻く社会や社会状況によって、その人がどのように行動するのか、どのように感じるのかが大きく異なることがあります。例えば、友人と一緒にいる時と家族と一緒にいる時、あるいは1人でいる時とでは、みなさんも違った行動をとるかもしれません。これは、「誰と一緒にいるか」という社会状況が、みなさん個人の行動に影響していることを表しています。

私は、社会心理学の中でも、友人関係や恋愛関係などの身近な対人関係が専門です。人は、どのような人を好きになり、友人関係や恋愛関係を築いていくのでしょうか。また、どのような対人関係が長続きするのでしょうか。対人関係の研究分野では、このように人が他者に魅かれるという対人魅力や対人関係の持続を規定する要因に関する研究が数多く行われてきています。また、対人関係の研究は、これまで欧米を中心に行われてきました。しかし、近年、対人関係における人々の行動や心理過程に様々な文化差があることが見出されています。私の担当する「社会心理学」や「対人関係論」では、こうした対人関係に関する比較文化研究についても、私自身が北米で経験したことも踏まえて、紹介していきます。

 

(3) 1~2年次で読んで欲しい本

  1. 『「伝わる文章」が書ける作文の技術―名文記者が教える65のコツ』(外岡秀俊 朝日新聞出版 2012) 文章は、ただ書くだけが目的ではありません。その文章を向けて書いた相手に、何かを「伝えること」が目的です。理解しやすい文の構成から、文を組み合わせて相手に伝わる文章の書き方まで、分かりやすく解説しています。レポートを書く際などに、ぜひ参考にしてください。
  2. 『伝える力2』(池上彰 PHPビジネス新書 2012) 上記1が「書く」技術に焦点を当てていたのに対し、こちらは、それに加え、「話す」技術についても解説しています。授業内での発表や、就職活動での面接などに参考になるでしょう。
  3. 『統計学が最強の学問である』(西内啓 ダイヤモンド社 2013) 社会科学などの分野で一般的に使われる統計分析の方法や、統計を用いたデータの解釈の仕方について、数学が苦手な読者にも非常に分かりやすく、説明しています。統計の勉強のためだけでなく、読み物としてもおすすめの一冊。『統計学が最強の学問である〔実践編〕』と併せて読んでみてください。
  4. 『エピソードでわかる社会心理学:恋愛関係・友人関係から学ぶ』(谷口淳一・相馬敏彦・金政祐司・西村太志 北樹出版 2017) 社会心理学の入門書は様々ありますが、社会心理学における主な概念に関連する事例が「エピソード」として、ここまで盛り込まれているものは珍しいです。大学生を想定した読者層が容易に自分の経験と関連付けられる事例をもとに、それが社会心理学的にどのように説明可能か、関連する研究を含めて、解説されています。
  5. 『Media Makers-社会が動く「影響力」の正体』(田端信太郎 宣伝会議 2012) TwitterなどのSNSの発展が著しい昨今、誰もがメディアでメッセージの発信者となりうる状況になってきています。メディアの在り方や、メディアをどう使っていったらよいのかについて、分かりやすく解説しています。
  6. 『ぼくの生物学講義―人間を知る手がかり』(日高敏隆 昭和堂 2010) 動物行動学者である著者が大学で行っていた生物学の講義を文字に起こし、本にまとめたものです。大学の講義が基になっているので、主に人間行動の進化について、非常に理解しやすく書かれています。
  7. 『働かないアリに意義がある』(長谷川英祐 メディアファクトリー新書 2010) 働きアリの中でも、一定の割合で働かないアリが存在するようです。驚くべきはそれだけではなく、『働きアリ』という名を持ちながらも、働かないアリに進化的適応価があるということです。社会性昆虫であるアリについての話が主ですが、人間にどのように適用できるのかを考えながら読むと、さらに興味深いと思います。
  8. 『恋するオスが進化する』(宮竹貴久 メディアファクトリー新書 2011) 主に昆虫の配偶行動に関する一冊。文字通り、命を懸けて、パートナーを獲得しようとする、昆虫たちの生き様が描かれています。
  9. 『夫婦格差社会-二極化する結婚のかたち』(橘木俊詔・迫田さやか 中公新書 2013) 近年、個人と個人との間に所得などによる格差が広がり、その格差は、個人同士が形成する夫婦と夫婦との間にも広がっています。ともに高所得の夫婦と、ともに低所得の夫婦の事例を紹介し、結婚に関する地域差や、離婚や未婚による格差に関する社会調査データをまとめています。
  10. 『震災婚』(白河桃子 ディスカヴァー携書 2011) 東日本大震災は、人々の価値観やライフスタイルに多大な影響を与えました。結婚・恋愛に対する考え方についても例外ではありません。震災をきっかけに、結婚した人たち、逆に、恋人と別れた人たち。震災の前後で、女性たちの恋愛や結婚、婚活がどのように変化したのかについての調査取材をまとめています。

(4) 3~4年次で読んで欲しい本

  1. 『対人関係と恋愛・友情の心理学』(松井豊・編 朝倉書店 2010) 対人関係の分野でこれまで培われてきた研究成果の総覧。この一冊で、対人関係研究を概観できます。
  2. 『Intimate Relationships (7th Ed.)』(Rowland S. Miller McGraw Hill Higher Education 2015) 北米における対人関係の講義で頻繁に用いられている教科書。対人関係研究に関して網羅的に扱っています。「英語の文献はちょっと...」と言わず、対人関係に興味があるのなら、ぜひ手に取って、章の一部でも良いので、読んでほしい一冊です。
  3. 『対人関係の社会心理学』(吉田俊和・橋本剛・小川一美 ナカニシヤ出版 2012) 「良好なコミュニケーションとは何か?」「なぜ愛情は浮き沈みするのか?」などの日常生活で私たちが抱く、対人関係に関する数々の疑問に対して、社会心理学の視点から、回答を試みています。
  4. 『進化と人間行動』(長谷川寿一・長谷川眞理子 東京大学出版会 2000) 進化心理学の教科書的一冊。進化論の基本的な考え方から、人間の協力行動や配偶行動などがどのように進化してきたのかを分かりやすく解説しています。
  5. 『文化を実践する―社会行動の文化・制度的基盤』(西條辰義監修 山岸俊男編 勁草書房 2014) マクロな社会・文化とマイクロな個人の心・行動とが、お互いどのように影響しあうのかという相互影響過程について、「文化」の研究に携わる著名な研究者たちが、それぞれ最先端の研究活動を紹介しています。
  6. 『木を見る西洋人 森を見る東洋人』(リチャード・E・ニズベット ダイヤモンド社 2004) アジア人と欧米人が持つ異なる思考様式が人類史上どのように生まれ、この思考様式の違いが人々の行動や認知過程に影響を与えているという理論を展開。様々な文化差の原因を説明する理論として、文化心理学の分野で注目を集めています。
  7. 『信頼の構造―心と社会の進化ゲーム』(山岸俊男 東京大学出版会 1998) 人が他者を信頼するとはどういうことなのか、人々を取り巻く社会構造と個人の信頼行動とがどのように相互に影響しあい進化してきたのかについて、理論化しています。人々の行動に対する社会構造の影響だけでなく、人々の行動がどのような社会構造を作り上げているのかを論じており、社会学を学ぶみなさんには、ぜひ読んでほしいです。
  8. 『つながれない社会:グループ・ダイナミックスの3つの眼』(日比野愛子・渡部幹・石井敬子 ナカニシヤ出版 2014) 人とのつながりが希薄になってきていると言われる日本社会。なぜ人とつながれなくなったのかを、社会的交換理論、文化心理学、社会構成主義の3つの視点から、様々な研究データを踏まえ、解説しています。
  9. 『「婚活」現象の社会学』(山田昌弘編 東洋経済新報社 2010) 結婚活動、いわゆる「婚活」の実態と、なぜこれほどまでにブームになったのかを社会調査データなどを元に明らかにしています。
  10. 『インターネット心理学のフロンティア―個人・集団・社会』(三浦麻子・森尾博昭・川浦康至 誠信書房 2009) インターネット上での人々の行動や対人関係、集団過程は、オフラインとは何が異なるのでしょうか。インターネット心理学に関する必読書。

(5) 先生の代表的な著書または論文を二つか三つ教えてください。

  1. Kito, M., Yuki, M., & Thomson, R. (2017). Relational mobility and close relationships: A socioecological approach to explain cross-cultural differences. Personal Relationships. doi: 10.1111/pere.12174
  2. Kito, M. (2016). Shared and unique prototype features of relationship quality concepts. Personal Relationships, 23, 759-786.
  3. 山田順子・鬼頭美江・結城雅樹, (2015), 「友人・恋愛関係における関係流動性と親密性―日加比較による検討―」『実験社会心理学研究』 55, 18-27.
  4. Kito, M. (2005). Self-disclosure in romantic relationships and friendships among American and Japanese college students. Journal of Social Psychology, 145, 127-140.