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浅川ゼミ

浅川 達人(専攻領域:都市社会学・社会調査)

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被災地復興支援活動と社会学

テーマの説明

(1) 被災地復興支援活動
東日本大震災が引き起こした大津波によって,住民の約1割が死者・行方不明者となるという甚大な被害を受けた岩手県大槌町。この地域にある吉里吉里という集落を,私は2011年4月以来毎月必ず1回は訪問し,復興支援活動を行ってきました。社会学者として復興支援活動にどのような貢献ができるか,被災地の復興を社会学はどのように捉えることができるのか。2015年度の浅川ゼミではこれをテーマに,みなさんと議論したいと考えています。

(2) なぜ議論するのか
私は「議論したい」という表現を用いました。なぜ「議論したい」という表現を用い,「教えてさしあげたい」という表現を用いないのか。それは,復興支援活動には「正解」が用意されていないからです。どこかにマニュアルがあって,「正しい」復興支援活動のメニューが記載されていて,それを忠実に辿れば「正しい」活動ができる,というものではない。つまり,「正解を教える」ことなどできないのです。
ではどうやって,為すべき復興支援活動を選ぶのか。私はこれまで,何年後かにあの活動は「正解」だったと言っていただける活動を目指して,先行事例を参考にしながら,被災地で暮らす人々や現地で活動するNPOやボランティアなどいろいろな方々と議論しつつ活動してきました。自分が為すべき活動の方向性は,活動と議論を通して自らが選択するほかないのです。だから,議論が大切になります。

(3) 何を学んでいただきたいか
つまり,復興支援活動の現場では,未だ「正解」が明らかにされていない問題に対して,「正解」を見つけることができる能力が求められているのです。既に知られた正解を整理して頭に納め,それらを効率よく提示してみせる能力だけが求められているわけではないのです。
ここでちょっと想像をたくましくして,社会に出て働いている自分の姿を思い浮かべてみてください。職場では想定内のことも生じますが,想定外のできごとも頻繁に生じ,それらに対して対処を求められる場合があることは,想像に難くないですね。つまり現実の日常生活世界を生き抜いていくためにも,前述の能力が必要であることがわかると思います。
2015年度の浅川ゼミでは,被災地復興支援活動を素材として,この能力に磨きをかけていただきたいと願っております。

使用予定テキスト・主要な参考文献(使用する文献は変更する可能性があります)
  1. 藻谷浩介ほか『里山資本主義―日本経済は「安心の原理」で動く』角川書店,2013年
  2. 船津衛ほか『21世紀社会とは何か―「現代社会学」入門』恒星社厚生閣,2014年
  3. 船津衛・浅川達人『現代コミュニティとは何か』恒星社厚生閣,2014年
  4. 山下祐介『限界集落の真実:過疎の村は消えるか』ちくま新書,2012年
  5. 玉野和志(編)『ブリッジブック社会学』信山社,2008年
ゼミの進め方・ゼミ合宿など

前期は上記文献リストのうち2点ほどを各自が読み,報告者がレジュメを作成し報告を行い,浅川が必要な補足と論点の整理を行いながらメンバーで議論をするというスタイルで進めます。とはいえ,"教室での"ゼミだけではなく,週末などを利用して実際に被災地を訪問し,復興支援活動に従事することも計画しています。
また,例年9月に,ゼミ合宿を行ってきました。ゼミ合宿では,山下(2012)をテキストとして,人口減少が著しい地域に実際に身を置きながら「過疎とはどのようなことか」を考察するとともに,ゼミメンバー相互の親睦を深める予定です(ゼミ合宿は必ず参加してください)。ゼミ合宿以外にも,複数回のfieldworkやまち歩きを計画しています(これらへの参加は,任意です)。
後期に講読する文献は,前期の間にみなさんと話し合って決めたいと思います。