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社会福祉学科

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武川正吾(担当科目:社会政策A・B)

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専門領域あるいは担当科目の紹介

社会政策A・B

福祉はもともとは「さいわい」「しあわせ」という意味でしたが,日本国憲法の25条で生存権(「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」)が宣言され,社会福祉,社会保障,公衆衛生の向上が国家の義務とされて以来,何らかの理由で困っている人(言いかえると「さいわい」の欠けている人)に対して支援や援助を行うことが福祉のもうひとつの重要な意味となりました.

社会福祉にとって,ミクロ(微視的)の水準ではソーシャルワークが重要な役割を果たします.ソーシャルワークについては社会福祉学科の他の先生方が説明されていると思いますので,その内容について,ここでは深入りしません.

他方,マクロ(巨視的)やメゾ(中間的)の水準では,社会政策が社会福祉を実現するための重要な公共政策となります.社会政策はソーシャルワーカーが活用しうる資源の多く(すべてではありません)を提供します.ソーシャルワークがうまく機能するためには,社会政策の存在が前提となります.このように社会政策はソーシャルワークと相互補完的な関係にあります.

社会政策は,経済政策との対比でも用いられます.この場合,経済政策が経済の安定や成長を目的とした公共政策であるのに対し,社会政策は,人々の生活の安定や向上を直接の目的とした公共政策となります.人々の生活は多くの局面から成り立っていますので,社会政策も多くの分野から成り立っています.

現代社会では,人々が日常生活を送るうえで仕事(労働・雇用)が重要な役割をはたしています.したがって仕事に関する公共政策は社会政策の重要な柱です.

また安心して生活を送るためには,さまざまな社会的リスクに対応した仕組みが必要となります.このため何らかの理由で収入が途絶えたり,通常以上の支出が必要となったときのために,年金,児童手当,生活保護など所得保障のための施策が社会政策のもうひとつの重要な柱となります.

さらに病気になったり,ケガをしたり,障害をもったり,要介護の状態となったりしたときには所得保障(現金給付といいます)だけでなく,社会サービス(現物給付といいます)が必要となってきます.保健,医療,福祉サービス,住宅なども社会政策を構成していると考えるべきでしょう.

私たちが生活する市場経済の下では,生活に必要なものは通常,市場の価格メカニズムを通じて需要と供給が調整されます.しかし何らかの理由でそうした調整になじまない領域もあります.例えば,自分が買いたい自動車が値段が高すぎるからといって買うのを諦めたひとがいたとして,多くのひとはそのことが問題だとは思わないでしょう.しかし病気になったとき医療費が高すぎるために治療を諦めるひとがいたとしたら,多くの人はそのこと理不尽だと思うでしょう.

社会政策は,人々が必要とする資源(モノやサービス)を,市場の価格メカニズムとは異なる方法で,それを必要とする人々に提供するための仕組みです.価格メカニズムに代わる方法を「配給」(rationing)(割当や配分と呼ばれることもあります)と言いますが,どのような配給の仕方が合理的であるかを考えていくことも社会政策の重要な課題の一つです.

社会政策の学修を通じて,社会福祉に共通の考え方を身につけてください.

専門領域の理解を深めるための文献紹介

  1. 吉野源三郎『君たちはどう生きるか』岩波文庫. 社会政策と直接関連する本ではありませんが,社会科学的な考え方を学ぶうえで良い本です.主人公コペル君が,いまここにある自分にとっての身近な問題が地球の裏側までつながっていることを発見する思考の過程は「社会学的想像力」の好例です.
  2. 河上肇『貧乏物語』岩波文庫 大正時代に書かれた本で,現代の貧困を扱った本ではありません.また現在の貧困研究の水準はこの時代の水準を超えています.しかしいま読んでも啓発されるところの大きい本です.時代を超えた普遍的な言葉が鏤(ちりば)められているからでしょう.
  3. 武川正吾『福祉社会学の想像力』弘文堂. 科学政策に関しては専門家の意見が尊重されますが,社会政策の場合は必ずしもそうとは言えない現状があります.社会政策の前提として一般に自明だと信じられていることが必ずしも自明ではないことを,この本を通じて考えていただければ著者としては望外の喜びです.

その他

経済学に「収穫逓減(ていげん)の法則」というものがあります.例えば小麦を栽培するとき,耕作地を日当たりの良い場所に変えたり,耕作時間を増やしたり,肥料を増やしたりすると小麦の収穫量が増えます.ただ最初は大きく増えますが,努力を続けていっても,次第に増え方が小さくなってしまいます.人間の成長にもこの法則が成り立つ面があります(すべてではありません).つまり学生の時代は,自分の費やした努力が自分の能力開発に最も効率よくつながる時代だということです.就職して社会に出るとなかなか自分に投資する時間をもつことが難しくなります.みずからの人的資本を蓄積するために,学生時代は,どうか有効な時間の使い方をしてください.