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河合 克義 (担当科目:地域福祉論)

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専門領域あるいは担当科目の紹介

地域福祉論A・B

地域福祉はイギリスの17世紀後半に生まれた慈善事業団体の連絡調整のための組織化活動、また同時期のイギリス大学生によるスラム(低所得・貧困世帯が住む地域、例えばロンドン市の東部地域)での住み込みによる地域活動(セツルメント)に起源があります。2つの活動はアメリカに影響を与え、そこから地域組織化(コミュニティ・オーガニゼーション)という社会福祉の独自の領域が生まれます。

日本でも戦前から慈善事業、学生セツルメントの活動はありましたが、地域福祉として本格的に展開するのは第2次世界大戦後のことです。具体的には戦後生まれた社会福祉協議会を中心に地域を扱う社会福祉の1領域が確立しました。

1970年代後半以降、行政の制度として在宅・地域に向けた制度が生まれて、地域福祉は内容として行政サービスと民間団体の活動、住民の主体的活動などに広がって今日に至っています。

住民が望む地域に住み続けられる条件は、国によって違います。残念ながら日本は、地域関係、親族関係の日本的状態に規定されて住みたいと思う地域を選ぶことがとても困難です。地域格差ということとも関係があります。都市部に住んでいるとなかなか見えない事ですが、日本全体を見ると一方では都市の過密問題があり、他方、農山村・漁村地域では過疎問題があります。地域の不均等発展、地域格差は、日本では深刻です。こうした現実、その結果生まれている地域の問題に目を向けたいものです。

生活上の問題が深刻化すると、その影響は精神的領域にまで及びます。生きる意欲を失い、生活内容が貧しくなり、親族・地域から孤立する人々が、残念ながら一定数存在します。私が行った東京都港区のひとり暮らし高齢者調査(2004-2005年)では、孤立している一人暮らし高齢者の量と質を測定しています。例えば病気など緊急時に誰も来てくれる人がいない高齢者が16%、正月三が日を一人きりで過ごした高齢者が35%もいます。こうした孤立している人々の問題=潜在化している問題にこだわりを持ちたいものです。

さらに授業では、制度や住民活動は地域にある社会福祉問題の総量をカバーしているわけでない事実から、カバーできていない問題をどのように考えるか、対応するのかについて考えます。この問題は社会保障・社会福祉の制度や地域福祉活動の現状と課題を検討することにもつながります。

事実から地域福祉を学ぶ姿勢、制度・専門家としての仕事・住民活動それぞれのあり方を授業のなかで習得していただきたいと思います。

専門領域の理解を深めるための文献紹介

1年生・2年生

地域福祉は問題を未然に防ぐこと「予防」という概念を重視しています。日本でも予防活動の優れた地域事例がたくさんあります。とにかく岩手県と長野県の2つの取り組みに関する文献を読んでみてください。ロマンがありますよ。

  1. 太田・増田・田中・上坪『沢内村奮戦記-住民の生命を守る村』あけび書房、1983年
  2. 及川和男『村長ありき-沢内村 深沢晟雄の生涯』新潮社、1984年
  3. 菊池武雄『自分たちで生命を守った村』岩波新書、1968年
  4. 南木佳士『信州に上医あり-若月俊一と佐久病院-』岩波新書、1994年
  5. 若月俊一『信州の風の色-地域農民とともに50年-』労働旬報社、1994年
  6. 若月俊一『村で病気とたたかう』岩波新書、1971年

3年生・4年生

地域の生活実態をきちんと把握すること、制度・活動をめぐる問題の整理、専門家としての仕事のあり方の手がかりを次の文献から読み取ってほしいものです。

  1. 右田紀久恵・井岡勉編著『地域福祉-いま問われているもの』ミネルヴァ書房、1984年
  2. 真田 是『地域福祉の原動力-住民主体論争の30年』かもがわ出版、1992年
  3. 河合克義編著『ホームヘルプの公的責任を考える』あけび書房、1998年
  4. 江口英一『現代の「低所得層」』(上・中・下) 未来社、1979-1980年
  5. 江口英一編著『生活分析から福祉へ : 社会福祉の生活理論』改訂新版、光生館、1998年
  6. 『図説 日本の社会福祉』改訂版(共編)法律文化社、2006年
  7. 『港区におけるひとり暮らし高齢者の生活と意識に関する調査報告書』港区政策創造研究所、2012年
  8. 『港区における75歳以上高齢者を含む2人世帯の生活に関する調査報告書』港区政策創造研究所、2013年5月
  9. 河合克義著『大都市のひとり暮らし高齢者と社会的孤立』法律文化社、2009年
  10. 河合克義著『老人に冷たい国・日本-「貧困と社会的孤立」の現実』光文社新書、2015年

その他

父は電電公社(現NTT)に勤務。戦後の地域労働運動の草分け。地区労の委員長から地方自治体の議員も務める。母も地域の婦人活動のリーダーでした。地域住民の自由な主体的活動・運動にこだわる自分は、こうした家庭環境が影響しているかなとも思う。学生時代の恩師・白沢久一教授に貧困研究の視角と制度がカバーしていない問題の存在、主体形成の課題を教えられ、それらに今日までこだわり、またそれらを大切にしています。フランスに留学していたことで、少しフランスかぶれ。