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清水 浩一 (担当科目:社会福祉学概論)

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専門領域あるいは担当科目の紹介

社会福祉学概論A・B

社会福祉学概論とは社会福祉の全体を網羅した、入門者向けの解説的な授業です。したがって入学してすぐ全ての学生が履修(必修)することになりますが、学生はつぎの二つの点をこの授業によって把握してほしいと思います。一つは社会福祉の思想、歴史、制度などの全体像をスケッチ程度でよいですから頭に焼き付けることです。たとえて言えば大きな世界地図を頭に焼き付けて、4年間の学習の道しるべにしてほしいということです。二つ目は、社会福祉の奥の深さと面白さを感じてもらうことです。たとえば社会福祉に関わる一つの事象を取り上げても、いろいろと多面的な見方があり得ること、場合によっては対立する価値・理念が含まれていること、そして人々のさまざまな思いや関わりがあり、新たな発見や感動があることなどです。

これら二つのうち、前者は主に社会福祉学概論A(2単位)、後者は社会福祉学概論B(2単位)で追求していきます。

こうした点に少し関連しますが、大学生になった皆さんに大学での授業とは何か、僕の考え方を提示しておきたいと思います。皆さんはこれまで受験戦争の中で、どちらかといえば知識を暗記することで試験に備えようとしてきたと思います。それはそうせざるを得なかったのでしょう。しかし大学での授業、特に僕の授業では、少し異なります。それは授業の中で覚えるべきことが半分で、残り半分はそれらの知識が持つ意味を考察することです。知識の集積だけでは社会福祉学の学習としては明らかに不十分だし、第一、勉強というものを自らつまらなくしています。単に知識を詰め込むだけなら定期試験の前に専門書を家で読んでいる方がはるかに効率的でしょう。

大学における限られた時間の中で、学生は知識の全体像とその意味連関の把握に努め、今後の自分の学習や、他の授業の理解に役立ててほしいと願っています。

こうした事柄をホームレス(路上生活者)問題の事例でみていきましょう。

ホームレスに陥ってしまうと人間の生存に必要不可欠な最低限の衣食住にも事欠き、社会関係も絶たれて、孤独のうちに路上でその人生を閉じていくケースが珍しくありません。

ホームレスの問題を授業で学習するときは、ホームレスという用語の定義、公表されている統計、ホームレスになった経緯、現在の仕事や生活の様子、ホームレス対策の現状など、知識としての側面を先ずは頭に入れることが必要でしょう。しかしここで終わってはいけないのです。皆さんは街で見かけるホームレスにどのような印象を持ったでしょうか?彼らは自業自得で、できれば関わりたくない人たち・・と考えた人も多いと思います。でもちょっと頭をひねって考えてみて下さい。ホームレスという極度に悲惨な状態は、今日のような経済的に豊かで、社会保障制度もそれなりに整っている国で、何故彼らは存在し続けているのだろうか?という疑問を抱いたことはありませんでしたか?

こうした非人間的な状態は決して許容されてはならないという人権感覚のような、人間としてのまっとうな感性がなかった自分に気づかされることがあります。これは基本的人権の歴史や悲惨な状態を克服してきた歴史を生々しいリアリテイを持ってイメージできない、現代人の気質もあるでしょう。でも社会福祉を勉強したいと思ったわれわれは、一歩踏み込んで考えることが必要です。ホームレスを生み出してしまう社会の歪みとは何か、日本の社会保障制度に一体何が欠けているのか、ホームレス対策として真に効果的かつ原則的な対策とはどのようなものであるべきかなど、です。

専門領域の理解を深めるための文献紹介

  1. 庄司洋子他編『貧困・不平等と社会福祉』有斐閣、1997年
    現代の貧困について、その概念と実情、国際的動向、現代の貧困対策の内容と課題等が網羅的に整理されています。
  2. 見田宗介著『現代社会の理論』岩波書店、1997年
    現代資本主義経済の特質から資源や環境、南北問題などの課題を乗り越える地平を示す社会学的解説書。社会福祉の前提となる社会それ自体の学習にとって非常に重要な文献。
  3. 横山和彦・田多英範編著『日本社会保障の歴史』学文社、1991年
    社会福祉を含む社会保障全体について、わが国の歴史(特に戦後)を網羅的に解説し、本質を追究した文献。
  4. 糸賀一雄著『この子らを世の光に』
    やや古典に属する文献だが、知的障害児施設の子供たちのドキュメント。書名に注意深く注目。与える者と与えられる者がわれわれの「常識」とは逆である。
  5. 暉峻淑子著『豊かさとは何か』岩波書店、1989年
    豊かさの前提となる物質的な価値基準を徹底して問い、国際比較も行いながら、われわれ「常識」の再考を促す啓蒙書。

その他

社会福祉を専攻した動機

当初、強い動機はありませんでした。若い頃、左翼思想に多少かぶれていたので、利潤追求を本質とする民間企業では働きたくないと思っていました。私の高校時代、近くの公民館に社会教育主事と呼ばれる人がいて、地域の子供たちを相手に絵や音楽などの行事を企画しているのを見て、私もそうした仕事につきたいと思っていました。そのためその資格が取れて、かつ授業料の極端に安かった日本社会事業大学に入学しました。しかし大学に入ったら資本主義の矛盾である貧困と生存権理念の熾烈な争いが本質的に内在する生活保護法というものに興味を持ちました。ある意味では学生運動の延長でした。幸運にも生活保護を勉強するゼミ(3年)を選んだら、学生同士の議論が毎回盛り上がり、それが楽しくて夢中で勉強しました。その勢いのまま大学院に進学し、結局、この職業に就いてしまったという訳です。