社会学科のカリキュラム

顔の見えるクラスで生きた社会学を学ぶ

明治学院大学社会学部社会学科の学びのキーワードは、「社会学をつかう」「フィールドワーク主義」「顔の見える少人数クラス」です。4年間切れ目ない少人数の演習科目を通して、知識をツールとしてつかいながら身につけます。教員と学生や学生同士の顔が見える関係の中で、課題や報告を繰り返しながら、学生一人ひとりがオリジナルな問題を見つけ、調べ、考える力を伸ばします。

学びの見取り図

学びの見取り図

1年次・2年次で基本を学び、3つのコースへ

1年次は社会学の基礎を身につけます。春は演習科目「アカデミックリテラシー」と講義科目「社会学1」、秋は演習科目「社会学基礎演習」と講義科目「社会学2」「社会調査の基礎」を学びます。2年次は3コースに分かれ、春に「コース演習」を履修し、秋は「表現法演習」と「質的データ分析」のいずれかを履修しながら、表現力や分析力など自分に合ったスキルを伸ばしていきます。

3つのコースでテーマを探求

2年次以降の専門科目では、学生一人ひとりの興味・関心や目標にあわせて選べる3つのコースを設置。「文化とメディアコース」「生命とアイデンティティコース」「環境とコミュニティコース」の中から所属コースを選び、コース科目をガイドに、自分の関心を見極めていきます。コース科目以外の科目も自由に選択できるので、途中からコースにこだわらず、自分の関心に沿った科目を履修することも可能です。

社会調査の手法を学ぶ

少人数の基本科目や講義科目のほかにも、社会調査の専門的知識を身につける社会調査関連科目を用意しています。段階を追って社会調査の知識だけでなく、技と心を身につけ、最後は「社会調査実習」を通して報告書を作成します。必要な科目をすべて履修すると、社会調査士資格を取得できます。

3年次・4年次はゼミを選び、専門を深める

1、2年次に養った力を糧にして、3、4年次では「演習1」「演習2」といった専門的なゼミを選択し、それぞれの関心にしたがって専門的に問題を追及していくことができます。また、社会調査の企画から、調査の実査、報告書の作成まで行う「社会調査実習」も選択が可能です。そして、大学生活の締めくくりとして、ゼミや実習で培った経験と実績を卒業論文として完成させます。

アカデミックリテラシー

学ぶための基本を学ぶ

「アカデミックリテラシー」とは、直訳すると「学問的な読み書き能力」を意味します。社会学科に入学したら、まず、社会学の教科書と『社会学科生のための学びのガイド』をじっくり使いながら、社会学を学ぶための基本的な「読む」「聴く」「議論する」「書く」スキルを身につけます。

大学生に必要なスキルとは何か
~「アカリテ」で学ぶこと~

大学での学び、特に社会学の学びは、一般的な高校までの学びとはかなり異なります。基礎ができないまま進級しても、課題をうまくこなせなかったり、ルール違反を犯してしまったりします。「アカデミックリテラシー」では、4年間の学びの基礎となり、卒業後も役に立つ、学び方、表現の仕方の基礎をしっかり身につけます。

文献の探し方・引用の仕方

大学生としてレポートを書くのに必要なのは、適切な文献を探すスキルです。データベースと検索技術が発達している現在とはいえ、コツを知らずに探しても、大量の情報から学問的に意味のある文献は見つけ出せません。また、文献を参照したら引用の手続きを踏むのも、基本中の基本です。このルールを無視したら、大学では処罰の対象となりますし、社会ではそれ以上の責任を問われることにもつながります。図書館やWeb上での文献の探し方と、引用の際の手続きを、みっちり学びます。

文献の読み方・レジュメの書き方

文献を読むときに大切なのは、論理を追うことです。高校まででしばしば求められるように、作者の心情を探ったり、共感を示したりする必要はありません。文献のポイントと論理を明確にし、疑問点や議論したい点を書き添えた「レジュメ」にまとめて報告する技法を身につけます。実際に発表して議論をする際も、論理的に反論を述べたり、答えを導いたりできるよう、教員が指導していきます。

レポートの書き方

社会学科で要求されるレポートは、「作文」や「小論文」とは根本的に違います。作者に共感したり、身近な事例を語ったり、末尾に決意表明をしたりする必要はありません。学問的に意味のある問いを立て、必要な資料を集めて論理的に結論に導く、数学の証明のような作業こそが要求されます。テーマの見つけ方や問いの立て方、論理的な文章を書くパラグラフライティングの技法や全体の構成の仕方を学び、実践します。

「アカデミックリテラシー」では、平均15名の少人数クラスで、このような考え方の基本を手厚く指導します。生涯にわたって議論できる友人をつくりながら、生涯にわたって使えるスキルを身につけましょう。

入学前講座

社会学科の学びは入学を決めたときからスタートします。入学を決めた方から順に、無料の「明治学院大学社会学部 レポート添削講座」が始まります。通信講座で、大学生の必須のスキルであるレポートを作成するための基本を学習します。学術的な文章の読み方、書き方を学び、入学後の「アカデミックリテラシー」へとつなげていきます。

社会学基礎演習

知識とつかい方をともに身につける

「アカデミックリテラシー」で基本的な学び方のスキルを身につけたら、「社会学基礎演習」で社会学の基本的な考え方を身につけます。ポイントは多彩なワーク。教科書で学んだ社会学の概念を、実際に現代社会の分析に活用してみます。

社会学を身につけるとはどういうことか
~「社会学基礎演習」のねらい~

社会学の基本はものの見方にあります。教科書の言葉をただ暗記するのではなく、その言葉をつかうとどのように社会が見えるかを体感し、社会学的感性を身につけてはじめて、社会学科での学びは生涯つかえる知になります。「社会学基礎演習」は、ワークを通じて、現代日本の諸問題に目を向け、それらを社会学の知をつかって考えるという感覚を体感してもらうためのクラスです。

教科書の知の切れ味を実際に試す

社会学的思考において重要なのは、自分なりの対象を見つけ、問いを立て、先人が考えた理論や概念をときに修正を加えたりしながら利用し、論理的に分析していくことです。しかし、いきなり必要な理論を見つけたり、理論を修正したりすることは難しいので、まずはクラスみんなで同じ問題を同じ資料を用いて、教科書に出てくる概念で分析してみたり、文献を批判的に読み解いてみる練習から始めます。ただ暗記するのでもなく、ひとりよがりな分析をするのでもなく、「知を身につける」とはどういうことか、1年生のうちに体感します。

テーマは幅広い社会問題

ワークの内容は、たとえば「ファッション雑誌のジェンダー分析」「現代日本の在留外国人の現状レポート」「福祉制度についての論文を批判的に読む」など、身体、家族、ジェンダー、労働から、福祉、政治、地域、外国人まで、幅広いテーマを含みます。身近な問題から、国家レベル、グローバルレベルの問題まで、幅広い社会の見方を体感します。

グループワークで意見を交換する

学問的思考は、孤独に考える作業と、他者と意見を交換することを往復して磨かれます。「社会学基礎演習」では、グループワークで、意見を戦わせながら分析をしたり、簡単なフィールドワークをしたりします。また、書評や批評をプレゼンに仕上げて、よい発表を競い合ったりディスカッションを深めたりもします。しかし、提出するレポートは個人単位。グループワークと個人の作業を繰り返すことで、仲間のよいところを学んだり、批判に応答したりしながら、自分の思考やプレゼン能力を磨きあげる経験を積みます。

「社会学基礎演習」では、5〜6名のグループに分かれ、先生の指導のもとにワークとディスカッションを繰り返します。多様な考え方を互いに学びながら、つかえる知識を身につけると同時に、自分の関心を見極め、2年次以降の専門的な学びの基礎をつくります。

講義科目履修のすすめ
~「社会学1」「社会学2」「社会調査の基礎」~

「社会学基礎演習」を中心とする少人数科目の学びをより深いものにするため、1年次春に「社会学1」、秋に「社会学2」「社会調査の基礎」といった社会学の講義科目の履修をすすめます。講義で理論や概念の背景、詳細な注意事項などを丁寧に学ぶことと、少人数クラスで実践していくことを、往復していくことこそ大切です。「社会学基礎演習」でつかう概念は、「社会学1」で学びます。さらに、「社会学2」「社会調査の基礎」を並行して履修することで、ワークの理解がより深まるほか、2年次以降の学びの確固たる基礎を築くことができます。

コース演習

コースに分かれて学術的な思考を身につける
~コース制の意義と可能性~

2年次からは、「文化とメディア」「生命とアイデンティティ」「環境とコミュニティ」の3つのコースを基本とした専門的な学びが始まります。各コースでは、2年次春に「コース演習」があり、2年次から3年次にかけてコース科目の講義を履修します。「コース演習」でより専門的な論文に触れながら、自分自身のオリジナルの研究を開始する準備を行います。

コース制とは

明治学院大学社会学部社会学科のコース制には、3つの大きな特徴があります。第一に、どのコースにするかは、1年次の終わりに自分で決めることができます。コースに人数制限はありません。第二に、どのコースでも他コースのすべての講義科目を履修できることです。コース科目を履修しつつ、コース科目以外の講義科目も自由に履修できます。第三は、同じくどのコースからでも、すべてのゼミ(演習)を履修できることです。コースの選択は、他の可能性を捨てることではありません。

自分のテーマ探しのガイドとしてのコース制

では、なぜコースに分かれるのでしょうか。初めての地を訪れたとき、多くの人は地図で自分の位置を確認するでしょう。今の自分の立ち位置を確認すると、現在とりうる選択肢が明確になり、これからどこへ進めばよいかを判断することができるようになります。社会学においても同様です。自分がゼミや卒論でとりくみたいテーマが社会学のなかでどういう位置にあるのか、また、どうすれば独自性を示すことができるのか、近い領域の先行研究に触れながら確かめることが、コース制のねらいです。また、自分がやりたいテーマがぼんやりとしか見えていない人には、似た関心の友人と議論する中で、自分の方向性を選ぶ機会になります。

【関連リンク】 コース制

より専門的な社会学の基礎へ
~コース制のガイドとしての「コース演習」~

「コース演習」は、コース別の少人数クラスです。関心が近い仲間とコースごとに少しずつ異なった論文を何本も読み、より専門的な文献やデータの調べ方を学び、1年次に身につけた「読む」「聴く」「議論する」「書く」スキルや社会学のつかい方を、3,4年のより専門的な学習に向けて、バージョンアップしていきます。

専門的な論文から「社会学的な思考」の方法を学ぶ

テキストは、いわゆる教科書ではなく、社会学の各領域の入門的な論文を集めたリーディングスを用います。先人が、社会のどこに問いを見つけ、どういう理論をどう修正して用いたか、どういう先行研究やデータを用いたかから、学問的なスキルを学びます。

専門的な論点と議論の仕方を学ぶ

それぞれの論文は、各領域で考えるべき諸問題に挑んでいます。テキストは全コースのコース演習共通で、クラスによって取り上げる論文は多様ですが、もちろん、重なる場合もあります。ゼミでは、ただ論文を理解するだけでなく、それをもとにディスカッションをすることで、社会学的な議論の切り口を学んでいきます。その際、同じ論文でもコースによって議論の切り口が変わることもしばしばです。たとえば、いじめ報道を扱った論文は、教育の問題として議論することも、差別の問題として議論することも、メディアの問題として議論することも可能です。他クラスの学生と情報交換すると、学びはさらに深まります。

より専門的なデータの調べ方や思考を学ぶ

「コース演習」では、「アカデミックリテラシー」より一歩進んだ、より専門的な文献やデータの検索ガイダンスを行います。怪しげな情報に惑わされず、適切な根拠となる資料を見つける方法を、コースごとにガイドします。また、多角的な視点を身につけるためのディベート大会なども行います。説得力のある議論、考え方、論文とはどのようなものか、社会学的な思考を本格的に身につけていきます。

社会学科教授陣によるオリジナルテキスト

「コース演習」で使用するテキストは、明治学院大学社会学部社会学科の教員が執筆したオリジナルリーディングスです。「大学の先生」は、第一線で活躍する研究者でもあります。「勉強」ではなく「研究」するというのはどういうことなのか、実際の論文から学べます。疑問に思ったら、著者にすぐ質問できるという贅沢な環境をフルに活用して、関心を深めていきましょう。

表現法演習

社会学的な視点から世の中を切りとる手法を学ぶ
~「表現法演習」と「質的データ分析」~

社会学が対象とする「社会」なるものは手で触れることはできないし、どんな形をしているのか見ることもできません。そんな「社会」を分析・表現し、社会学をよりつかえるようにするには、専門的な知識と技術が必要不可欠です。2年次以降に「表現法演習」と「質的データ分析」の中から興味のあるクラスを選んで履修し、自分で情報を集め、社会を分析・表現する方法を身につけます。

多様なクラスから選んで専門的な技法を身につける

「表現法演習」「質的データ分析」は、最高20人程度の少人数の選択必修です。クラスによって学習内容が異なります。多彩なクラスの中から、希望したクラスで、自分の問題関心を形にする力を身につけ、3,4年次の専門的なゼミに備えます。(希望者が多いクラスは抽選になります。)学術的な調査方法をさらに学びたい人は、多彩な「社会調査関連科目」を自由に履修できます。 ※一部、春学期開講科目があります。また、3年次以降に履修してもかまいません。

専門的なメディア表現とは
~「表現法演習」で「社会」の表現を学ぶ~

「表現法演習」は、メディア表現を学びたい人や、メディアの仕組みをより深く理解したい人に向けた演習方式の授業です。実際にメディア表現を実践してみる過程を通して、メディアリテラシーを高めていきます。毎日わたしたちが浴びるように接触している新聞や雑誌、テレビやインターネットからの情報は、いったい誰がどのような意図で伝えようとしているものなのでしょうか。実際に映像作品を制作したり、批評文や論文を書いたりする作業を通して、演習方式で表現技法を身につけます。同じ「表現法演習」でも、映像表現のクラスもあれば、文章表現のクラスもあります。テレビや雑誌の現場で活躍している方を講師にお迎えしているクラスもあります。

映像表現を学ぶ

映像表現の授業では、グループに分かれ、実際に映像作品を制作します。シナリオの作成から撮影データの編集まで一から学び経験し、ビデオや映像編集ソフトを用いた作業を通し、映像がどのように構成されているのかを体験します。一度このプロセスを体験すれば、テレビやインターネット上の映像を見る目は変わるに違いありません。

文章表現を学ぶ

文章表現の授業では、ノンフィクション、ジャーナリズム、パブリックリレーション、批評、論文といった文章を、批判的に読解する能力と質の高い文章を執筆する能力を身につけます。同じドキュメンタリーベースの文章でも、目的や掲載されるメディアが異なれば、文章の書き方は変わってきます。授業では、広報文、広告文、社説、論文等の文章例を集め、メディア特性を読み解く訓練を実施します。そして何度か短めの文章を書く練習を重ね、書く力を身につけます。

質的データ分析

専門的なデータの収集・分析手法を身につける ~「質的データ分析」で社会の分析を学ぶ~

「質的データ分析」は、インタビューや参与観察、資料分析など、「質的」な社会調査法を学ぶ授業です。専門的なデータの収集・分析の仕方を、どういった注意や倫理的な配慮が必要かを含めて、実践的に学びます。3年次以降ゼミに入って、ゼミ論や卒論を書くのに、専門的な分析方法をひとつも身につけていないというのは困ります。本科目は、「社会調査士」取得のための科目のひとつでもありますが、この資格を目指さない学生にも重要な分析手法を学びます。

社会学的に分析するとは

たとえば、薬害被害者の手記の分析例を取り上げてみましょう。大変な苦労をされたんだなあと、感情移入して読むことが分析ではありません。著者が、初期の段階で自分自身を「病者」として記述していたのに、それが「障害者」、「被害者」と変化し、最後には「告発者」として記述しているというように、著者自身の社会における立ち位置/役割が変化して行ったことを発見する。それが分析するということです。(関心のある方は、栗岡幹英『役割行為の社会学』世界思想社(1993)をご覧ください。)このような、ときに当事者が意識していないことも含めて、社会のメカニズムや人と社会の関係を見つける視角と具体的な調査方法を身につけると、社会学はさらに自由につかえるようになります。

専門的な質的調査法とは

ポストイットの分類中の写真「質的データ分析」では、インタビューや参与観察、資料分析などの手法を用いて、社会の動向や人間の思考や行動を検討します。同じ「質的データ分析」でも、インタビュー調査や参与観察、雑誌や新聞といった文字や図像資料の分析など、クラスによって学ぶ手法や力点に違いがあります。

インタビュー調査とは

インタビューの写真インタビューと一口に言っても、雑誌記事を書くためのインタビューと、社会調査のためのインタビューでは、注意しなくてはいけない点が異なります。たとえば、「働くとは」というインタビューで、人生の諸先輩の経験とメッセージを聞き、検討するとしましょう。その一部を目立たせて報道するのではなく、学術的な客観性を保った分析にするには、誰に聞いたらいいのか、何人に聞いたらいいのか、どうやってその人たちに協力をお願いすればいいのか、何に注意して聞いたらいいのか、聞いたデータのどこをつかうのか、データから何が言えるのか等々、考えなくてはいけない点はたくさんあります。また、たくさんの人に質問できるアンケートではなく、少数ながら深く聞けるインタビューの強みを生かした調査設計のツボを学ぶ必要もあります。録音、記録作成上のマナーや公表の際の倫理的配慮なども学びます。

参与観察・観察とは

ポストイットの分類中の写真参与観察とは、現場にメンバーとして長期間参加して観察した記録をフィールドノーツにまとめる調査手法です。当事者が「当たり前」だと思っている生活世界を知り、分析するのに力を発揮します。優れた古典として、B.K.マリノウスキーがオーストラリアのアボリジニと生活を共にして描いた『西太平洋の遠洋航海者』やW.F.ホワイトがボストンのイタリア移民コミュニティを描いた『ストリート・コーナー・ソサエティ』があげられます。授業では短時間の観察をし、記録を書き分析する練習をします。たとえば、交差点での人々の行動を観察してみましょう。「横断歩道で信号待ちをしている際に、近くに幼い子どもがいるときには大学生は模範的に行動する」といった発見があるかもしれません。自分がその場に参加しながら客観性を保つにはどうしたらよいのか、膨大な情報の中から必要な情報を書きとめるにはどうするかなど、社会学的な「勘」を研いでいくトレーニングにもなります。

ここにあげた以外にも、クラスによって多彩なメニューをそろえていますので、自分が専門的に学びたい手法をしっかり見極め、履修クラスを選びましょう。なお、いわゆるアンケートを学びたい人は、「社会調査の技法」「フィールドワーク演習」「社会統計学」「数量データ分析」を履修することをおすすめします。また、資格の取得希望に関わらず、1年次の「社会調査の基礎」を学んでおくと、広く社会調査とは何か、どういう手法があるのかがわかります。

社会調査実習

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フィールドワーク主義
~社会調査関連科目履修のすすめ~

明治学院大学社会学部社会学科では、「フィールドワーク主義」として、実際の現場に足を運ぶことを推奨しています。つかえる知識を身につけ、実際の社会に出て行って、考察を深めましょう。より専門的な知識を身につけるには、「質的データ分析」「表現法演習」のみならず、社会調査関連科目を履修するとよいでしょう。集大成が3年次の「社会調査実習」です。

調査の「いろは」から実習・報告まで

社会調査関連科目は、社会調査のいろはを学ぶ1年次の「社会調査の基礎」から始まります。次に、2年次に具体的な調査手法の入り口となる「社会調査の技法」と、社会調査実習の準備編ともいえる「フィールドワーク演習」を履修します。さらに数量データ分析の理論を学ぶ「社会統計学」と、その専門的なデータの収集・分析方法を学ぶ「数量データ分析」や、2年次の選択必修にもなっている「質的データ分析」へと進み、3年次には「社会調査実習」で実際の調査を経験します。これらを履修すると社会調査士資格の取得が可能になりますが、資格の取得を希望しない人も科目ごとの履修が可能です。自分の関心を深めるのに必要な手法を身につけられます。 ※履修条件がある科目もあります。詳しくは、「実習(社会調査士資格)」を参照してください)

数量データ分析のすすめ

「質的データ分析」は2年次に選択必修になっていますが、「社会」を表現・分析するには、統計やアンケートといった数のデータが必要になることも少なくありません。数量データの分析手法もぜひ身につけましょう。「数量データ」とか「統計学」などというと、Σとかμとか意味不明の記号が出てきて身体が拒否反応を起こす人も少なくないでしょう。そうならないためには、記号に脅されるのではなく、本質をつかむことです。たとえば、20%という数値を高いと思いますか、低いと思いますか? 降水確率20%だったらそれほど高くないと感じるでしょうが、事故を起こす確率だとしたらぞっとするほど高いと感じるでしょう。つまり、数値そのものに意味があるのではなく、数値を評価する基準が必要なのです。それらについて学ぶのが、「社会統計学」や「数量データ分析」なのです。

社会調査の1から10までを体験する
~「社会調査実習」の意義~

3年次に1年かけて行う「社会調査実習」は、社会調査の企画から、実査、データ分析、報告書の執筆までを、10~15名ほどの少人数で行う科目です。専門の教員の指導のもとに、学生自身がフィールドに出てデータを集め、様々な方法で分析を加え、得た知見に基づいて年度末に報告書を作成します。自らの手で社会学を実践することができる、貴重な機会です。

現代社会に切り込む多様な実習クラス

「社会調査実習」は、クラスごとに異なったテーマと手法で実習を行います。どのようなクラスが開講されるかは、2年次の秋に発表されます。興味のあるテーマや実践したい手法を考慮して自分でクラスを選び、抽選を経て、希望するクラスに所属します。

試行錯誤を経験する

社会調査実習では、先生がすべてお膳立てしてくれているわけではありません。調査地や調査対象者を探すところから始まるクラスもあります。予定した対象者から調査を断られることもあれば、気分を害されてしまうことだってないとは限りません。思うようにデータが集まらないことや、調査してみたら仮説が完全に裏切られて途方に暮れることもあります。しかし、それこそが、社会調査の、社会学の、醍醐味なのです。教科書とおりの結論が導かれるなら、わざわざフィールドを探して調査に行く必要はありません。失敗や挫折を繰り返し、調査対象と良好な関係を築き、分析を練り上げていく過程で、自分なりの視点や方法を磨き上げていく経験こそが、かけがえのない財産となるのです。

集大成としての社会調査実習報告書

クラスによっては、泊まり込みの調査をしたり、分析合宿をしたりするクラスもあります。1年間、先生や仲間と苦楽を共にし、報告書を仕上げていきます。問いを立て、データを集め、意味のある分析をするのは困難ですが、教室で議論をしながら報告書の論文を練り上げていきます。また、報告書作成は、調査協力者にチェックしてもらったり、仮名を用いたりするなど、これまで学んできた倫理的配慮を実践する機会でもあります。このような苦労を経て執筆された報告は、年度末に「社会調査実習報告書」として形になります。

【関連リンク】 社会調査実習

ゼミ(演習)

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ゼミを選んで専門を深める

3年次には、各自が選んだ「演習1」での専門的な学びが始まります。この「演習1」が、世の中で「ゼミ」と呼ばれているものです。最大15名程度の少人数のゼミで先生や先輩とも継続的な関係性を築きながら、ゼミごとに専門的な知識やスキルを身につけていきます。学びのスタイルはゼミによって様々ですが、2年次までの少人数クラスで身につけたスキルをブラッシュアップしながら、プレゼンやレポート、ゼミ論の執筆を行っていきます。

大学生活の中心、「ゼミ」
~明治学院大学社会学部社会学科のゼミの特長~

卒業論文の執筆を希望する人は、そのまま4年次の「演習2」「卒業論文」へと進みます。自分なりの問いを立て、「演習1」で身につけた知識とスキルを生かしながら、1年かけて卒業論文を執筆します。2年間の専門的な学びによって、「4年間でこれを学んだ」と誇れる思考力や手法が身についていることでしょう。

多様な選択肢から、自分の専門を深める

明治学院大学社会学部社会学科には20名近いスタッフがいます。社会学の諸領域をカバーするように集められた教員が、学生の広い関心を支えています。2年次のコース演習や各コースの講義を参照にしながら、どのゼミで、どのような勉強をするか、具体的に考えていけます。

【関連リンク】 教員紹介演習(ゼミ)

丁寧なガイダンス

所属するゼミは、自ら希望したゼミに応募して、教員とのレポートと面接を経て決定します。多様なゼミの中からどのゼミを選ぶか、迷う人もいるでしょう。そこで、社会学科では、2年次の秋学期に3か月かけてゼミ選考を行います。最初のガイダンスで選考の流れと各ゼミの内容を冊子で紹介した後、上級生や教員に相談する機会を設け、納得のいくゼミ選びを支えます。

社会調査実習との並行履修が可能

社会学科では、3年次に「演習1(ゼミ)」と「社会調査実習」を並行履修することが可能です。ゼミでも多くのフィールドワークが行われますが、社会調査実習はゼミとは異なります。ゼミでは理論的なことを学び、社会調査実習で実証の方法を学ぶというように、自分のテーマにあわせて組み合わせることができます。また、「社会調査実習」のみの履修でも、「演習2」に所属して卒業論文を書くことも可能です。

大学生活におけるゼミとは何か

社会学的想像力のアリーナ

「ゼミ」とはどんな授業でしょうか。「少人数クラスで議論を行う」という説明をよく目にしますが、「議論を行う」とは、単に自分とは違う意見を論破することではありません。「議論」は頷くことからスタートするのです。一般に、虚空に向かって楽しそうに話しかける人はいません。話すためには、聞き手が必要だからです。頷いてもらえることで、安心して語ることができる。そのことによって多彩な語りが生まれ、考え方の類似点や相違点が明瞭になってくる。同じ事象を目の前にしているのに、なぜ異なった語りが生まれるのか。それを「社会学」をつかって分析し考察する。継続的に頷き合える仲間を見つけ、「社会学的想像力」を競うアリーナが「ゼミ」なのです。

書物と現場(フィールド)をつなぐ議論の場

「ゼミ」では、たくさんの専門的な理論や概念を勉強します。それを手に実際の現場に足を運び、社会現象を表現・分析する方法を模索します。たとえば、社会老年学のテキストには、様々な理論について解説されています。いよいよ現場に出ると、被災地の仮設住宅で暮らす高齢者から、被災前のようないきいきとした生活を送ることができていない、といった悩みを耳にします。では、いきいきとした生活を取り戻すために何が必要か。書物から学んだ「活動理論」を活かすチャンスです。さらに、自分たちに何ができるか、実行してみたらどのような反応があったか、次に何をなすべきか、現場での経験を踏まえて教室でさらに議論していきます。「ゼミ」とは、書物と現場をつなぐ議論の場なのです。

大学生活の集大成としての卒業論文

卒業論文の執筆を希望する人は、4年次の「演習2」「卒業論文」へと進みます。自分なりの問いを立て、「演習1」で身につけた知識とスキルを生かしながら、1年かけて卒業論文を執筆します。1,2年次に身につけた基礎に、ゼミでの2年間の専門的な学びが加わり、「4年間でこれを学んだ」と誇れる思考力や手法が身についていることでしょう。卒業論文は、ただのレポートではありません。4年間の自分独自の学びの軌跡を凝縮したものです。自分でテーマを決め、ふさわしい表現・分析の手法を選び、ゼミの仲間と議論しながら書き上げます。卒業論文を手に、胸を張って明治学院大学社会学部社会学科を卒業します。

学年を超えた学びの場

様々に用意された少人数の学びの場

社会学科では、ここにあげた基本となる少人数クラスのほかにも、学期ごとに履修可能な少人数クラスをたくさん用意しています。社会学の専門書を読む「専門書講読」や、「留学生のための日本語」、社会調査関連科目の「フィールドワーク演習」などを希望に応じて履修して、講義形式とは異なった少人数の学びの醍醐味を味わえます。毎年1回、社会学部学内学会が企画する研究発表の場も準備しています。

学年を超えて専門的な文献を講読する
~「専門書講読」~

「専門書講読」では、社会学の専門書を専門家である先生と一緒に輪読していきます。なぜ先生と一緒に読む、先生の解説を交えて読む必要があるのでしょうか。たとえば『社会学小辞典』で「現象学的還元」を調べてみます。すると「自然的態度の本質に属する一般定立にエポケーという操作を加えることによって達成される」(p.158)という記述があります。読めない漢字はないはずですが、ほとんどの人にとって意味不明でしょう。専門の先生の解説があれば、このような文献も読みこなせるようになります。また、外国語の専門文献を読むクラスもあります。2年生から4年生まで学年を超えた履修者が集まる貴重な場です。関心の近い学生同士で交流しながら、あふれる学究心を満たすことができます。

留学生のための交流と学習の場
~「留学生のための日本語」~

「社会学のための日本語」は、社会学科に所属する2年生から4年生までの正規留学生が履修できる少人数科目です。話題の本や新書をテキストに社会学的思考をみがき、社会学を学ぶための日本語力(「読む」「聴く」「議論する」「書く」)のレベルアップをはかります。学年を超えて同じ関心をもつ留学生が集まる場所にもなっています。

少人数科目と講義科目を自由に組み合わせて、自分だけの4年間をアレンジしてください。明治学院大学社会学部社会学科の教員・スタッフ一同、学生のみなさんの学びをサポートします。