今回の企画は2023年度版の学科パンフレットの表紙写真を担当した佐藤博久さんにインタビューをした内容になっております。
学内外での活動
──本日はよろしくお願いします。佐藤さんの自己紹介をお願いします。
今回、皆さんに配布された学科のパンフレット、こちらの2023年度版の表紙を担当した人でございます。
社会学科の3年で澤野ゼミに入っております。犯罪社会学が表題になっていますけれども、ゼミでは『官僚制のユートピア』っていう本を読んでいます。世の中にどのようにしてクソ仕事(ブルシット・ジョブ)がはびこったのかという話ですね。非常に皮肉めいた表現がたくさんあって、読み物として純粋に面白いのでぜひ読んでみてください(笑)
学内での活動ではこれまでに上がっている記事に登場した佐藤さんと一緒にクリエイター集団みたいなことをさせてもらっていて、その技術側を担当しております。映像などを担当している方になります。両方佐藤なんですけど、血縁関係は一切ないです。その点はどうかご承知おきください。
──学外ではどのような活動をしていますか?
学外で行っている活動としては、学生起業をした会社で、配信と映像の制作をやっていて、そこでカメラマンをやったりとか、制作側でプロジェクトを進めたりとか、そういうことをやっています。
これで面白いのが学生起業した会社っていうところでスタッフの皆さん若いんです。皆さん、若いおかげでこんな大学3年生がプロデューサーとか、そういったお仕事を任せてもらっていて、本当に幅広い経験ができているなと感じております。その分責任とかもものすごく大きいんです。それでも学びとか達成感とかがたくさんあって、やりがいのある仕事だと感じています。
映像制作の世界に入ったきっかけ
──映像のお仕事をされているとのことですが、どうして映像の世界に興味を持ったのでしょうか?
そもそも高校の頃に5つ部活に入っていました。全て明らかにするなら、まずは生徒会・文化祭実行委員会。ここではホームページを作ってました。次が定期戦実行委員会。これはEXCELで得点の集計をする仕事でした。そして写真部と放送メディア研究部っていう映像にかかわる部活に2つ入っていました。元々写真が好きで、高校生の頃にカメラに触ってからその魅力に一目惚れしてずっと写真を撮ってたんですね。受験期も、(※真似厳禁)
そして、大学に入ったタイミングで、アメリカンフットボール部の方から広報用の写真と映像両方できる人を必要としている、ということで呼んでもらって1年間取り組みました。大学1年の間ずっとこれをしていて、1年生が終わる頃にたくさん機材とかもう溜まってきていたので、これを仕事にしようと先に申し上げた制作会社に入りました。
部活を辞めると決めても、大学から離れるっていうのはやっぱり嫌だったんですよね。大学が好きで、大学の勉強も好きでコミュニティ的にもいい場所だなぁ、と思っていたので。いい方法はないのかなと考えて、その時に基礎演習(1年秋に全員が履修するゼミ形式の授業)の担当の先生が学内学会なんか入ったらどうっていう声を掛けてくださったのが決め手で社会学部学内学会に入りました。
そこで先輩の佐藤さんと出会いました。おかげさまで私の大学生活は、学業的にも課外活動的にも充実したのかなと思っています。
映像と社会学との関わり
──学外での映像制作などの活動に大学での学びは役にたっていますか?
学びが役に立っているか、難しい質問ですね。もちろん、こういった映像を志す人たちで同じくらいの年齢だと専門的なことを学べる学校に行く人がたくさんいますし、特に一緒に仕事してるとむしろ後者の方が圧倒的に多いです。
とはいえ、私はものすごく役に立っていると思っていて、今は名前が変わってパワーアップしたらしい表現法演習という授業で学ぶことが多かったです。そこではデザイン事務所を持っている方から授業を受ける機会がありました。その中で自分が事業主として会社を経営しながらクリエティブに取り組み、どう世の中を生きていくかという生き様のようなものを勉強することができました。この授業を通して「ああ、そういうやり方もあるんだ」っていうちょっと卒業したらそのまま就職してっていう型にはまった人生から外れていろんなチャレンジができるんだという勉強になりました。それをきっかけとしてより自分の事業の方会社の方にのめり込んでいくわけですけれども、(笑)
そういう色んなことをやっている人っていう実際にお仕事をされている方々、それも業界を引っ張っているような方々から直接授業を受ける機会があるというのは非常にいい経験になりました。
社会学部って面白いバイトをしてる人が多いんですよね。大学生のアルバイトと言ったらぱっと思いつくのが飲食業であったりとか、あと塾の先生であったりが思いつきますよね。このイメージを裏切られたんですよ。
雑誌の編集社でアルバイトをしていますとか、写真スタジオでアシスタントをやってますとか、そういう人が結構いて既にその業界に出てやって勉強させてもらっているとか、そういう人もいたんです。意外と先生の繋がりであったりとか、先ほど挙げた表現法演習とかで紹介してもらったりとかっていうのがあって人と繋がりあるんだな、その中で勉強する機会って作っていけるんだな、と思いました。
──大学の授業で勉強になったことを教えてください。
授業名出してしまうなら、3年生の春に取っていた石原英樹先生の相互行為論と大久保遼先生の文化社会学、この2つの授業が役に立っています。
もちろんゼミも非常に役に立っていて、仕事をしていく上で、どのようにチームビルディングをしていくかとか、これからどう世の中の働き方を変わるかといったことを学んでいます。
相互行為論では社会における言語コミュニケーションをはじめとした様々なコミュニケーションがあるなかで、そこで行われるプロトコル(コミュニケーションを行う上で無意識に守っている規則)や自分とは異なる立場にある人の感じ方などを知ることができました。
文化社会学は『これからのメディア論』というテキストを用いて行われていました。
メディアといえば、なんらかの画面とか、そのような話になるのかなと思いきや、結構音楽の話ががっつりあって興味深かったです。ラジオの登場・テレビの登場、さらに、コンピューターの登場とかでどう音楽業界が変わったか知りました。YMOの「Rydeen」やサカナクションの魅力と文化形成における立ち位置は非常に興味深いものです。また、「今ライブとかフェスってめっちゃやってるけど、それってどうしてなの?」、といった問いを考えていました。
また、都市の空間という話もありました。印象的だったのは渋谷の授業。渋谷ってめちゃくちゃディスプレイがたくさんありますよね。建物も最近、建て替えががんがん行われていますよね。これって実は文化とかメディアの力なんですよ、ということが勉強できました。技術の進歩や社会が目にみえる形で現れるという考え方、非常にワクワクしませんか?
現代は色々なところで映像の力が使われていて、これからどういうところが面白くなるだろうか、なんていう話がちょっと未来が見えたりするので、非常に文化社会学が好きですね。
ちなみに、このテキストを執筆された大久保先生は東京駅の100周年とかの動画の脚本をやってたらしくて、それは映像強いよなっていう話ですよね(笑)すごい勉強させてもらってます。
次回の学科パンフレット、もし自分がまた担当することができるとすれば、もう少しカメラでしかできない表現(Not AI)にチャレンジしたいですね。もうちょっと露出時間を伸ばしてみようっていう。時間を閉じ込めたような写真を撮りたいなんて、すでに構想があったりします。
この時間を写真に閉じ込めるという発想もその相互行為論の授業の中で勉強しました。後期近代と呼ばれる現在、情報はものすごい量が流れていくけれど、その中で何に注目するのかっていうのをある程度発信側が考えてあげなければならないなんていう話を聞いて、その流れていく情報とそこに留まり続けなきゃいけないものっていうのをその露出時間っていうので、時間を閉じ込める表現で表せるんじゃないかなというアイデアに至りました。
映像を志す学生の進路
──映像を志していた先輩方の進路ってご存知ですか?
一番多いのは、制作会社に入る人かなと思います。
「社会学科を出て何が役立つんだよ!」なんて思われるかもしれないですけれども、社会学って社会をありとあらゆる方面から切ってみてくっていう学問なんですね。なので、その分析枠組み、どう世の中切っていくかっていうのが本当に表現に生きてくる。
我々の視野、見てるものってものすごく社会に規定されているんです。映像を作るにあたって、我々の見方、考え方っていうのを勉強することは大切だと思います。そして社会の流れ、もちろんトレンドを押さえるっていうことにもつながります。
表現は人が作るものであって、人っていうのは社会を作っています。だからこそ、社会学を学ぶことが表現に活きてくる。まだ全然入ってすぐのペーペーですけれども、社会学の学びは本当に生きてます。