明治学院大学

明治学院大学

社会学部

付属研究所

付属研究所

付属研究所 相談・研究部門公式SNS

  1. Facebook
  2. Instagram
  3. X
  4. LINE

宮城 隆尋

プロフィール

宮城 隆尋(みやぎ たかひろ)

 

1980年(昭55) 那覇市首里に生まれる。
1998年 県立首里高校在学中に首里高校文芸部を創部し、部誌を発行。
1999年 沖縄国際大学在学時に沖縄国際大学文芸部を創部。
2000年 部誌「沖国大文学」を発行。
2003年 沖縄国際大学文学部卒業。
2005年8月 詩誌「1999」を立ち上げる。
現在 新聞記者
ホームページ http://plaza.rakuten.co.jp/mogegegege/

詩集
『自画像』(1997、自家製版)
『盲目』(1998、私家版、第22回山之口貘賞受賞)
『idol』(2002、孤松庵)

 

「自我」

張り裂けた私の皮膚から
緑色をした血液が溢れ出す
禁断症状で自分を見る
血流の止まった脳が腐ってゆく
抜け落ちた髪の毛を集め
ちぎれた左腕を見詰める
足はもう動かない

鼓動に耐え切れなくなった心臓が破裂して
どす黒い液体を垂れ流す
幽体離脱を繰り返す
腐っていく私の体とは裏腹に
鮮明になってゆく意識
眼球の飛び出した顔と
動かない右腕

動くことの許されない私に残された道は
己の歩んできた道を悔いることか
なぜ死さえも許されないのか
この醜い化け物は私の姿か
ボロボロになった可哀想な私か
なぜ私がこのような仕打ちを受けねばならぬのか
己の道を信じて歩み続けた私の姿か
私はこの罰に見合う罪を犯したのか
割れた頭で考えても答えは見つからないのか

                          詩集『自画像』『盲目』より

 

「会えないお前に」

俺はお前のいる場所には
逆立ちしたって辿り着けないんだ
お前が他人を簡単に近付けないのは
傷付け合うことの無意味さを知っているからだ
お前が昔に受けた傷は
俺にはどんなものか知る由もないが
やはりお前は俺が
お前を簡単な枠にはめて自滅する姿など
見たくないだろう
しかし何より
俺は自分が傷付くことを恐れていて
そのためにお前を傷付けてしまうんだ
お前は地平線に立ち向こうを向いていて
俺は死んだってそこに辿り着けない

俺はお前のことなんか何一つわかっちゃいないんだ
だから俺は遠回りをして
お前の居る場所を目指すんだ
地平線に立つお前は見える
お前は近付いては来ないし遠ざかりもしない
お前の居る場所までの道のりは
想像することは出来る
ただ一つ確実にわかっていることは
いくら歩いたって走ったって飛んだって
俺はお前に辿り着けない
俺はこの先も俺で居られるかはわからないが
千年ぐらい歩けばお前がもっとよく見えるだろう
地平線だって少しは近付くだろう
死んだって叶いはしない気休めを武器に
俺は死ぬまで遠回りし続けるんだ

空回りする抜け殻の言葉を背負って
死んだって辿り着けないお前を目指して
死ぬまで回り道し続けるんだ
死んだって辿り着けないなら
辿り着けないことに命を燃やすんだ
そうすればいつかきっとお前の居る場所に辿り着ける
風穴の開いた気休めの言葉を
0%の可能性を無理矢理信じて
俺は歩き続けるんだ
100%辿り着けないお前を目指して

                          詩集『idol』より

 

「座るな」

座るほど暇なら立ち上がれ
和むほど暇なら歩き出せ
癒されるほど暇なら拳を振り上げろ
疲れるほど暇なら雄叫びをあげろ
嘲るほど暇ならつっ走れ

少年の頃ついえた夢は
翼をもがれた鳥のように
地面の上をのたうち回っている
しかしいつまでも
のたうつままでは死ぬしかない
今こそ立ち上がり 飛び立つために
もう一度走り出せ
もう一度戦え

いつまでものさばっている禿親爺共は高級料亭で
酒とフルコースと札束ぶちまけて高笑いだ
いつまでも不貞腐れた若者たちはやる事もなくやる気もなく
口を半開きにしてそこら中に座り込むだけ
「大人になったってたかが知れてる」なんて言い訳
だから「近頃の若者は」などと言われる
『安定』というトリカゴの中で落ち着くだけのくだらぬ禿共の
すねをいつまでもかじっているわけにはいかない
いくら大人を嘲笑っても汚い現実を見たとしても
いつまでも座っている限り単なる負け犬
今こそ立ち上がり走り出さなければ
いつのまにか年をとってしまう手遅れになってしまう
がむしゃらにでたらめにつっ走って
行き止まりなら別の道を走ればいい
たかが知れてる人間などこの世に一人もいない
生きる道を定めそこに全ての自分をぶつける
『不可能』など存在しない 何でもできるなんて当たり前だ
泥まみれで汗まみれで血まみれで反吐まみれでつまずいて転んでも
何度でも立ち上がり走り出す
飛び立つ時が来るのは必然
目の前に定めた希望は永遠不滅
ついえた夢も甦る 破壊の先に創造を生む
時代は老いぼれ共のものじゃない
権利も義務も自由も責任も この世の全ては
もう一度飛び立つ希望のためにある

                          詩集『idol』より

社会学科・社会福祉学科の情報を発信しています。