研究者代表 | 八木原律子 |
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研究者 | 久保美紀 |
本プロジェクトに取り組む時点で、われわれは、犯罪者の社会的自立に向けた再チャレンジを支援するためには、刑事施設の処遇を含め、社会復帰に至るプロセスが有機的に連結していくことが不可欠であり、社会福祉専門職の継続的な技術提供が行なわれるように、更生保護施設と社会福祉の連携が必要であるという調査結果を得ていた。
こうした結果をふまえ、本プロジェクトでは、犯罪者の社会的自立に大きな意味を持つ就労支援に焦点をあて、再犯等の悪循環を断ち切るために、先駆的に取り組んでいる協力雇用主への聞き取り調査を行なった。この結果、協力雇用主が社会福祉専門職的役割を担い、犯罪者の更生に寄与するとともに、地元の地場産業家でもあり、地域との有機的なつながりが、地域の社会的活動に犯罪者も参加しやすくさせ、地域住民とのふれあいが街おこしと地域活性化への一翼を担っていることが明らかとなった。しかしながら、関係者・住民が一体となって更生保護に努めている地域がある反面、犯罪者の再犯を防止し、社会参加と自立を目的に、保護観察所内に設置されている自立更生促進センターの運営では、住民理解や啓発活動が進んでおらず、犯罪者の更生への道が難航し、関係者が苦慮していることもわかってきた。
こうしたことから、犯罪者の存在を排除することなく、地域が一丸となった教育的・福祉的配慮の必要性も明らかとなっており、市民レベルの活動を活かして社会福祉専門職がいかにかかわっていくか、社会福祉専門職領域の包括的支援の展開が、ますます重要であるということを再確認することができた。