研究者代表 | 水谷史男 |
---|---|
研究者 | 石川雅典、小野澤章子 |
沖縄は戦前から海外への移民を多く出している地域である。かつて1960年代以降の高度経済成長期に、今回の研究メンバーを含む研究グループが日本国内への出稼ぎ労働を調査研究した中で、沖縄についても実証的にその実態を明らかにしてきた。本研究プロジェクトでは、これをさらに国外への労働移動に拡大し、戦前前後を通じて海外、とくに南米への移民を焦点として調査研究を計画し、まずその第一歩として沖縄本島の移民のデータ・資料を集め、現地への予備的な調査を行って移動の実態を探った。同時にアルゼンチンなど南米の沖縄系日系社会の現状、交流の状況も把握することに努めた。
この結果、海外への移民や出稼ぎは、沖縄本島各地から個々の親族的、集団的ネットワークを通じた集団移民、呼び寄せ移民などの形で、昭和戦前期と60年代までの戦後期に多くの移民を輩出していることがわかった。また、移民の送出は、他県の場合とは著しく異なった戦争をはさむ沖縄の歴史と深く関わっていることも明らかになってきた。ただ、それが沖縄の地域社会にとっていかなる意味をもったか、についてはまだ不明な点も多い。われわれは今後も継続して、社会学的な視点から村落レベルの実態調査を行うべく準備を進めている。昨年度までの研究成果の一部は、『研究所年報』39号の論文「南米への日本移民の定着過程-沖縄からのアルゼンチン移民に関する覚書」(水谷史男)をみてほしい。