研究者代表 | 遠藤興一 |
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キリスト教社会福祉に関する歴史的な研究を基本的なスタンスとして、我が国の実状を調べてみた。古来、キリスト教は社会福祉と深いつながりをもってきたことはよく知られている。それは日本の場合も例外ではない。そこで、明治期以後の社会福祉施設を中心とした活動の歴史をたどることにした。
研究体制は、とくに共同研究者を求めることなく、遠藤が従来取り組んできたテーマとつなげながら、プロテスタントにおける教派別社会福祉の特徴を明らかにすることに留意した。施設としては「東京育成園」(児童養護施設)を対象にして、定期的に訪問、同施設が所有する歴史的資料を閲覧・コピーしながらテーマに沿った分類、整理を行い、最終的には論文にまとめるための前提の作業を重ねたことになる。
同施設は、明治29年の三陸大津波によって生じた多数の孤児・貧児を収容し、生活の世話をすることから始まり、戦前・戦後の代表的な児童福祉施設として多くの実績を挙げてきたものであり、とりわけ第二代園長松島正儀の活躍は重要であり、本研究においてもここに焦点を絞ってまとめている。彼は戦前の軍国主義の時代において、子供の人権を護ることに努力し、戦後においてはホスピタリズム論争、全国養護施設協議会の結成、いのちの電話運動など、様々な社会福祉活動にその足跡を残している。
本年度は特に「戦後」の活動に限定しつつ、資料の収集、分析に努めた。その成果は「社会学部付属研究所年報」に掲載する予定である。写真・図表なども多く集めたものなので、それらの発表についても今後考えていきたい。