明治学院大学社会学部付属研究所主催
講師 大正大学 教授 橋本泰子
今日、福祉サービスの利用が措置から契約に移行しつつあるなか、事業者は利用者に対して契約に基づくサービスを適切に提供することが強く求められています。
とくに福祉サービスは、サービス利用者の特性を踏まえ、利用者の個別性、自立性に主眼をおき、日常生活全般に対するサービス内容をもつという特徴があります。
したがって事業者が「適切なサービスを提供する」には、「利用者の安心と安全を確保する」ことが大前提となり、そのための事故防止対策を中心とする福祉サービスの危機管理(リスクマネジメント)の確立が急務の課題です。
2001(平成13)年度、厚生労働省・社会援護局福祉基盤課内に「福祉サービスにおける危機管理に関する検討会」が設置され、上記検討会より、2002年3月に「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み指針~利用者の笑顔と満足を求めて~」が出されました。
本研修会では、上記検討会において座長を務められた橋本泰子先生をお招きし、福祉サービスに危機管理(リスクマネジメント)が導入された社会的背景と現状での意義について、また危機管理(リスクマネジメント)の取り組みを有効に推進するためのサービス提供事業者の役割等について、ご講演をお願いしています。
講師 特別養護老人ホーム敬愛の園 主任生活相談員 岡田和裕
コーディネーター 明治学院大学 久保美紀
介護保険制度となり事業所と入居者が契約を結ぶ関係の中で、利用中の事故については、事業所側の対応如何によって苦情から賠償責任までにいたってしまうのが現状です。事業所では身体拘束防止を進めていく一方、事故防止の両立が求められ、殆どの事業所では身体拘束を減らしてく過程で事故防止の課題にぶつかったかと思います。今回の研修では、平成11(1999)年より敬愛の園で発足した委員会活動の経過と、実際に検討された具体的な事故事例や分析とその対応についてご報告させていただきたいと思います。そして、これらの事例を通して、リスクマネジメントの実践について皆様とともに考えていきたいと思います。
講師 DPI権利擁護センター(障害者インターナショナル)
所長 金政玉(きむぢょんおく)
コーディネーター 明治学院大学 茨木尚子
2003年4月から障害者福祉は、措置から利用契約を基盤とする支援費制度へと大きな変化が予定されています。また高齢者分野では、すでに介護保険が導入され、契約型サービスが実施されています。利用契約に基づく福祉サービスでは、利用者の権利をどう守るか-すなわち「権利擁護」システムとその活用が重要な鍵となっています。しかし実際の場ではどうでしょうか?DPI権利擁護センターが実施したアンケートによれば、全国の障害者の7割が日常生活になんらかの不満をもっており、そのうち4割はだれにも相談しなかったと答えています。そこには「言っても改善されるとは思えなかった」と相談する前にあきらめている当事者の姿があります。今回のワークショップでは、当事者組織であるDPI権利擁護センター所長の金さんを迎えて、実際の相談事例をもとに、当事者の思いやニーズのありのままの実態を理解することからはじめて、当事者の視点に立った生活の場での権利擁護活動のあり方について、参加型グループワークを中心にみなさんと考えていきたいと思っています。
*このグループでは、DPIブックレット『権利をまもるって何?』(1,000円)を参加者に購入していただき、このテキストをもとに研修をすすめます。
講師 児童養護施設鎌倉児童ホーム 児童指導員 川島稔
コーディネーター 明治学院大学 北川清一
一般的に福祉施設における「リスクマネジメント」とは、危険や事故に対して可能な限り事前に予測し、適切に予防し、可能な限り結果発生を回避し、迅速に対応し、また処理して被害や損害を最小限に押さえることとされています。そこで、人間はエラーを起こすものという前提に立ち、個人の事故防止努力からも、組織的な事故防止対策の考え方を組織内でシステム化することが求められています。しかし、そのノウハウを確立する作業は、必ずしも易しいことではありません。利用者の安心と安全を確保することが、サービス提供の実践の現場における職員に課せられていると思いながらも、まだ改革期にある鎌倉児童ホームの現場では、理想と現実、自由と平等、集団と個別、トップダウンとボトムアップなどの様々な二項対立を止揚しようと、試行錯誤の日々が続いています。そのような取り組みの事例を通じて、子どもの権利擁護、その環境としての職員のあり方などを、リスクマネジメントの視点から、皆さんと一緒に考えられればと思います。