アメリカを中心に発展してきたボランタリーセクターに関する研究は、その存在意義を小さな政府の代替機能として説明してきた。このような見解を前提に、規模や組織形態の違いを検討し、効率的な運営方法を研究するのが、現在の主流となっている。けれども「アソシエーション」という扶助組織を発達させてきたヨーロッパの一部の国々では、必ずしも、ボランタリーセクターが政府の代替として機能しているわけではない。「アソシエーション」がどのように発展してきたのか、「福祉大国」におけるボランタリーセクターの役割は何かを明らかにするため、2009年9月、デンマークで4機関5名の研究者に対するインタビュー調査を行った。
その結果明らかになったのは、第一に、デンマーク社会では、アソシエーションへの参加が、デンマーク人の考える「民主主義」に欠かせないという点である。それは子ども時代を過ごすうちに経験し、また親になって再び経験する、共通体験となっている。この点は、移民背景をもつ人々にとって、デンマーク社会に溶け込むことを困難にさせていると同時に、政府にとっては、移民とネイティブの「統合」を実現させるための重要なステップとして認識されている。第二に、アソシエーションを通したボランティア活動への参加が、個人の「生活の質」に関わる問題だと受け止められている点である。福祉分野といっても、政府が担う役割とは厳密に区別され、個別の生活の質に関わることができるのはボランタリーセクターだ、という認識がある。
日本において問題になっているボランティアの「下請け化」については、そのような問題はない、との回答がすべてのインタビュイーから得られたものの、日本との相違を明らかにするには、法律や財政的支援制度について、今後もより詳細に検討する必要があることも明らかになった。