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e-democracyのための基礎的研究

 

研究者代表 宮田加久子
研究者 池田謙一、小林哲郎

民主主義は何によって維持・発展しうるか。この問いには何世紀にもわたる議論がある。にもかかわらず、民主主義はいまでも機能不全を起こし、民意は反映されず、不寛容な人々は後を絶たない。そこで、今までの利益集団間の妥協や多数派の支配による利益調整・集計型の民主主義に対して、最近では熟議民主主義(deliberation democracy)の重要性が叫ばれている。本研究では、熟議民主主義にインターネットがどのような役割を果たすことができるのかを明らかにする。具体的には、インターネットには、熟議民主主義のために、①社会的争点や政治問題に関する情報提供、②熟議の場、③政治参加への動員という3つの機能が期待されているが、これらの機能が既存のマスメディアや対人コミュニケーションを含めた情報環境の中でどのように果たされるのか、さらにオンラインでの熟議に参加した結果として政治参加が促進されるのかを検討した。1000人を対象に行ったオンライン調査の結果をSEM分析したところ、インターネットでの政治情報にアクセスするほど政治参加に積極的であるという直接効果と、情報アクセスがオンラインとオフラインのそれぞれの政治的コミュニケーションを促進し、それを媒介して政治参加を促進する間接効果が認められた。また、インターネットはテレビニュースや新聞と補完的に影響していた。ただし、政治的関心が低い群では直接効果が認められたが、インターネットの政治情報へのアクセスが他者との政治的コミュニケーションを促進しても、それらのコミュニケーションが政治参加と関連しておらず、間接的効果は有意でなかった。したがって、政治的関心の高低の間にある政治参加の格差はインターネットの利用によっても減少する可能性は低いと考えられる。この研究結果は、情報通信学会誌28巻3号Pp.43-52に掲載されている。

 

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