明治学院大学

明治学院大学

社会学部

付属研究所

付属研究所

付属研究所 相談・研究部門公式SNS

  1. Facebook
  2. Instagram
  3. X
  4. LINE

La Città del Sorrisoの実態調査と日本での展開可能性

 

研究者代表 村上雅昭
研究者 水野雅文、藤井千代、高橋佳代、稲井友理子、Antonio Mastroeni

“微笑みの都市”は北イタリアのTrento市で始まった。イタリアでは1978年に成立した法律を元に精神科病院廃止運動が始まり、病院中心の精神医療から地域精神医療へと大きく転換した。この地方の市民は“非社交的で無愛想”というステレオタイプが国内で存在していた。この払拭と一般住民が精神障害者とスティグマを乗り越えて地域で暮らすことを目指し、市民が自らの人間関係と社会の質の重要性に注意を喚起する“対人関係の質-QRI”の指標が考案された。これは“新しい公衆衛生”を意識して作られた。以前の公衆衛生施策は個人レベルに焦点を当てた治療的介入が主であったが、個人レベルに留まらず行政と連携しつつ、コミュニティに住む住人全体を巻き込みながら都市そのものを介入対象にする具体策として考案された。今回の調査から“微笑みの都市”の運動を下地にして“前向きに生きよう”と“みんなで一緒に”という運動が新たに展開されていた。これは、エンパワーメントの発想を元に利用者・家族、専門家、市民の相互性と平等性に基づき、精神疾患を通して利用者・家族のそれぞれが得た個人の経験を尊重するアプローチである。利用者とその家族を単なるセルフヘルプグループに留めることなく“利用者と家族の専門家―UFE”が組織されていた。UFEは市の精神保健行政の中に位置付けられており、元“患者”は普通の“市民”になり、精神保健サービスの“利用者”となり、さらには精神保健の“社会資源”として生まれ変わっていた。我が国は現在ノーマライゼーションの一環としてバリアフリー政策を実行しているが特に遅れているのが“心のバリアフリー”である。一連の運動は“心のバリアフリーな街”を日本でも実現する上でも大きな示唆があった。

社会学科・社会福祉学科の情報を発信しています。