講師の北田暁大氏は、現在、東京大学社会情報研究所の助教授です。日本のメディア史を歴史社会学的に追うという仕事と、人間の行為のあり方を原理的に考察するという仕事を両輪にして、現代日本社会の諸現象についての鋭い分析も展開されています。2000 年に公刊された『広告の誕生』(岩波書店)では、W. ベンヤミンの洞察をN. ルーマンの理論装置を用いて洗練しながら、日本の広告史を独自のやり方で書き上げられました。最近、雑誌『世界』(2003年11月号)に発表された論考では、日本最大のインターネット掲示板「2ちゃんねる」への書き込みを、きわめて統制のとれた手法により、現代社会の社会空間(もしくはメディア空間)の独特な布置関係のなかに位置付け分析されています。それは、単に「2ちゃんねる」の書き込みの研究にとどまらない、すぐれた現代日本社会の研究になっていると思います。
今回の講演では、とくに現代日本社会に北田氏の社会学的立場からどう切り込めるかをデモンストレートしていただこうと思っています。限られた時間ですが、多くの方々にご参加いただき、有意義な議論ができますことを期待しております。