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2019年度卒業生の皆さんへ(社会学部長祝辞)

ご卒業おめでとうございます。皆さんの門出を心からお祝いします。

本日、2020年3月17日は、卒業式の予定でしたが、新型コロナウィルス感染拡大の防止のため、止む無く卒業式を中止致しました。ごめんなさい。

例年、チャペルでの厳粛な卒業式では、卒業生の清々しい顔を眺め、総代や卒論学部長賞受賞者、大学院の修了者の晴れ晴れしい姿を見守ることは、教員としての喜びです。その後の学科ごとの卒業証書授与式では、卒業証書を受け取った一人ひとりの学生が、教員や友人と別れを惜しみ、そこかしこで笑顔での握手や記念撮影をしています。それができないのは、教員の私たちも本当に残念ですが、卒業生の皆さんはもっと残念だと思います。落ち着いたら、ぜひ大学を訪れて近況報告をしてください。

現在、新型コロナウィルスCovid-19による感染がパンデミックにあります。この新型コロナウィルスにはほとんどの人の免疫がなく、ワクチンも特効薬も未だありません。現在、感染で苦しまれている方には、お見舞いを申し上げます。亡くなられた方のご遺族には心よりお悔やみを申し上げます。

社会学部を卒業するみなさんには、それぞれが修得してきた知識や技能などから今回の状況をどのように受け止めているのかを聞いてみたいです。私の授業では、病気がもたらす問題は、個人の身体的・精神的な苦痛にはとどまらず、家族や近しい人、学校や職場、地域において生じる困難やそれに基づく苦悩、国やグローバルな社会の政治や経済において生じる課題などと密接にかかわっていること、さらに、それぞれの文化によってその課題は異なることを伝えました。この状況で思い出してくれた人がいればうれしいです。

今回のCovid-19感染の拡大から私たちが学び、記憶しておくことがいくつかあると思います。というのは、人や動物がグローバルに移動する社会であり、今後も、治療や予防が確立しておらず人々に免疫のない感染症は、繰り返し生じうるからです。さらに、長距離を短時間で移動できるために、感染の拡大に検査や治療方法の開発が追い付かない状況も想定されます。脅すつもりはありませんが、これからも「想定外」の災害や感染症がグローバル化、気候変動によってもたらされると構えておいた方がいいでしょう。

そこで大学で学んだ知識や技能がいかに使えるか、使えば良いか、使うべきかを考えてみてください。社会現象をじっくりと眺め、データを収集して判断し、何が必要なのか、いかに行動すべきか判断してください。この問いに正解はないと思います。だからこそ、相談したり議論したり、考える機会をつくってください。感染症をめぐる歴史に関する本を読んだり、映画を観たりしてください。

社会学部の卒業生なら、感染拡大とその防止のための施策によって生活が困窮する人がいることを知り、どんな施策や支援が必要なのかを考える人がいるでしょうか。デマとパニックによってマスク、トイレットペーパーが瞬く間に入手できなくなるような現象をについて考えるかもしれません。感染者やその家族への偏見や差別、感染症が拡がった国の人を対象とするエスニシティやナショナリティによる差別や偏見について考える人がいるかもしれません。保健、衛生、栄養、医療などに脆弱な国での感染拡大を心配する人もいるでしょう。感染症対策における国家による強い管理が国民への統制へとつながるという危惧を抱く人もいるかもしれません。授業やゼミで学んだハンセン病者・回復者への差別と国の間違った政策、HIV感染者への差別とそれを煽る初期の週刊誌報道について思い浮かべる人もいるでしょう。生きる力を存分に発揮するために、今回の状況についてぜひ考えてください。

今年は桜も早く開花し、皆さんの門出を祝福してくれています。困難は数多あると思いますが、希望、信頼、愛、誇りなど良いことも沢山あります。人生を謳歌できるよう、皆さんのご多幸を切に願っています。

最後に、ここまで皆さんを育て見守ってきた保証人の方々にも、心よりのお祝いの気持ちをお伝えします。おめでとうございます。

2020年3月17日
明治学院大学社会学部長
柘植(つげ)あづみ