大学院社会福祉学専攻(以下、本専攻)は、文学研究科社会福祉学専攻として発足してから60年を超える伝統を誇ります。本専攻が本学大学院に設置された当時、わが国の社会福祉学はまだ発展途上と言ってもよい時期で、学会等でも「社会福祉学」は本当に学問として成り立つのか、そして成り立つとすれば、それは果たしてどのような学問なのかというようなことが真剣に議論されていました。
そのような状況のなかで、本専攻は当時のアメリカの社会福祉大学院をモデルとした、ソーシャルワークの研究と教育を中心とした大学院として、全国ではじめて文部省(現在の文部科学省)の認可を受け、修士課程の設置が認められました。
その後、時代の変化のなかで、いくつかの変遷はあったものの、本専攻の基本的な考え方、すなわち社会福祉の方法・技術であるソーシャルワークの研究と教育を中心として、自立した研究者と、高度な実践力を兼ね備えた専門職の養成という方針は変わることなく、今日まで続いています。
しかしながら、21世紀に入り、わが国の社会福祉領域のニーズが高度化・多様化・複合化し、政策的にも、実践的にもそれらに応えることが難しくなってきた状況を受け、本専攻はカリキュラム改革を実施してきました。
具体的には博士前期課程ではさまざまな講義科目を配置して、学生の多様な要求に応え、現実の社会福祉領域のニーズに対応できる研究力の基礎を養うことを目標とし、また博士後期課程では自立した研究力と、高度な専門的実践力を養うことに重点が置かれ、博士論文の作成に向けた指導が行われています。
このように博士前期・後期課程において、社会福祉学の研究者を養成するだけでなく、社会福祉の現場におけるソーシャルワーク実践を視野に入れたリカレント教育の体制を整え、多様な実践者等を学生として受け入れて、研究と実践の創造的な発展を志向している点が、本専攻の大きな特徴となっています。