2010年度も、福祉開発コースの2年生11人とカンボジアを訪れ、フィールドワーク研修を行ってきました。今年度のテーマは、「子どものためのプレイセラピーと児童・家族福祉」。国際福祉の実践と調査を目的に、2010年9月10-17日の約1週間をカンボジアで過ごしました。
春学期の学習
春学期は、9月のカンボジアでのフィールドワークに向けた準備期間です。授業で質的調査法やプレイセラピーの理論と基本を学び、アメリカとイギリスの先生を招いてプレイセラピーのワークショップを開催しました(写真2)。ワークショップでの使用言語は英語のみです。
カンボジアで、保護されているストリートチルドレンを対象にプレイセラピーを行います。
「皆が会う子どもたちはどんな状況?」
「保護されて安全」
「それだけかな?家庭で養育してもらえない子どもたちですよね・・・」
私たちは、子どもたちに不足しているスキンシップ、自己の存在意識、施設という新たな環境での生活不安をキーワードに、セラピーを組み立てました。
カンボジアでのフィールドワーク
学生たちは、カンボジアでも毎日、全員でプレイセラピーの練習をして臨みました。後日、「孤立していた子どもが、セラピーの翌日から皆の仲間に入ることができました。来てくれてありがとう。」と、施設の方からお礼状をいただきました。
秋学期の学習
帰国後の秋学期は、学会発表に向けて、カンボジアで行った家族福祉、児童福祉の調査の解析に集中しました(写真5)。学内では英語で研究発表を行い、この春休みには学会で報告する予定です。
カンボジアでのプレイセラピーは、セラピスト一人で効果を上げられるものではありません。若い大学生だからこそ、そしてチームで取り組んだからこそ、力を発揮することできました。質的調査の研究も、皆のディスカッションによって進めてきました。このフィールドワークでは、社会に出てからも重要となるチームワークの育成も目標としました。参加した学生たちには、頼もしいチームワークが生まれています。
フィールドワークでは、今後も、国境を超えた支援を実践していきたいと考えています。
2010年度は、社会福祉を実践の現場に立って考えてみようという視点で、大きく二つのプランをたて、実施した。
そのひとつは、夏期休暇中、5日間泊り込みで長野県の軽井沢にある児童養護施設のキャンプに参加したこと。これは5月からキャンプ直前まで準備のためのミーティング、学習を兼ねながら実施、キャンプの終りにその成果を発表するスタンツでは全員、感激と涙のフィナーレを迎えた。
もうひとつは毎月一回、社会福祉施設を訪問、直接に現地を見学、職員からの丁寧な説明をうけながら数種類の施設を廻った。そのための事前学習は毎週授業として調べたことを発表し、討論した。こうした研究成果の一部は学内学会の研究報告会で披露し、フロアーからの質問に応えるなど、学生自身にとって貴重な勉強の機会となった。あくまでも学生の主体的な参加と意欲によって成り立つ授業として、このフィールドワークは存在すると考えている。
本「福祉開発フィールドワーク」(火曜日4時限・白金開講)は、わたしたちの日々の暮らしを規定する法と政策の形成過程を学ぶことを目標としている。通常の座学では、中島誠『立法学』(法律文化社)をテキストに演習形式で学んでいる。
今回は「新議会」(手島孝)とも揶揄され、新たな実質的「立法」機関である「審議会」を傍聴した( 2010年5月27日(木))。
社会保障の法や政策の基礎を議論し提言する「社会保障審議会」の「児童部会」(社会保障制度の中でも児童福祉について論議する)に設置された「児童部会社会的養護専門委員会」である。
膨大な資料を駆使する厚生労働省の官僚の情報量と力量を見せつけられ、専門委員に「神託」をたれる巫女、あるいは日本を支配する「神」を見た気がした。
私のフイールドワークは横浜の貧困地帯と言われる日雇い労働者の街・寿町(日本三大寄せ場の一つ)を訪問し、さまざまな支援組織に参加させて頂きます。そしてそこで暮らす人々との触れ合いを通じて貧困や社会的排除の現実を考え、自分の中に存在していた偏見などを克服し、目の前の現象を科学的に考察する機会を追求します。
まずは学内で貧困理論や社会的排除論、戦後日本の貧困や貧困対策の歴史など、予備的な最低限の知識を学びます。その上で以下の内容の体験をします。
1.横浜市健康福祉局生活福祉部の出先機関である「寿福祉プラザ」を訪問し、寿町の全容の説明を受け、合わせて隣接するホームレスの自立支援センターを見学します。
2.ことぶき学童保育で子供たちと一緒に土曜日の午後、夕方まで一緒に遊びます。また夏休みの各種行事に各自1日参加します。
3.ことぶき福祉作業所で利用者さん(軽度の身体障害者が中心)と一緒に作業し、利用者さんと交流します。
4.路上生活者(ホームレス)に対する桜木町駅や横浜駅周辺で夜間パトロールに付随し、支援の状況を見学します(2回程度)。
5.年末年始の寿町内での炊き出しにボランティア(各自1日)として参加します。
6.寿町内のホームヘルプサービスに同行し、お手伝いをします。
世界で最も教育水準が高く、世界でも最も社会福祉の進んでいると言われるフィンランドを実際に訪問し、現場から学ぶフィールドワークは今回2度目になります。学生の皆さんが「楽しかった」「帰りたくない」「先生、ありがとう」と言ってくれると、企画した労が報われます。多くの学生が、欧州はおろか、海外旅行が初めてという状況で、見るもの、聞くもの、触るもの、すべてが新鮮で驚きの連続だったようです。とにかく26人の学生からたくさん質問を受けました。ヘルシンキに限らず、欧州の街並みは美しく、福祉以前に欧州社会そのものとその価値観を感じてもらうことがフィールドワークの重要な要素です。
今年は、11月6日(日)から13日(日)までの日程で、ヘルシンキと少し内陸に入ったタンペレとハーメリンナという地方を回りました。森と湖の美しい秋を満喫しました。まだ、雪はなくクリスマスの準備中でした。タンペレの町ではきれいなイルミネーションが町を飾っていましたが、ムーミンの町らしくムーミンやアニメの装飾も多かったです。
訪問した施設は、ヘルシンキでは子育て支援、学童保育施設, 精神障碍者のピアカウンセリング等を行うNPOの全国組織、タンペレでは障害時の統合教育を進めているバティアラ小学校、ヤルマリンコト高齢者居住施設、カンガスハラのシニヴィラ知的障碍者デイケアサービスセンター、ハメーリンナのサンポラ視覚・聴覚障碍者就労施設でした。
さらに、研修の合間に、ムーミン博物館、シベリウスの生誕の家、ハミ城、オリンピックスタジアム、テンペリアウオキ教会、魚市場、元老院広場、シベリウス公園、大聖堂等を見学した。特にお城は国内3番目の大きなもので、2時間かかっても半分くらいしか見れませんでした。また、日程的に厳しかったのですが、小雨の夕刻男子学生と私は世界遺産であるスオメンリンナ要塞をフェリーで訪ねました。やっと大砲にたどり着き帰った時は真っ暗でした。それぞれ紹介するととてもホームページには収まらないと思いますが、いくつか心に残ったことのみ紹介します。
フィンランドの教育・医療・福祉はすべて原則無料です。学校はすべて公立学校です。幼稚園からいじめ等暴力の排除は厳しく教えられます。育児休業中は80%の所得保障、自分で育児する際は手当が支給され、さらにご近所の子供も一緒に世話すると一人当たり定額の手当てが上乗せされる。保育施設に預けると保育費は無料、しかも待機児童はなし。
特別支援教育の先生は教員資格と特別支援教育の資格も必要で、賃金も一般教員より高い。学校は優秀な学生より学習が遅れていたり問題のある児童を優先的に手厚くケアする価値観が共有されている。
福祉施設で学生も私も一番感動したのは、ハメーリンナのサンポラ視覚・聴覚障碍者就労施設でした。ここは横に長い3階建て施設で、中央が食堂とリビング、管理部門で、左が居住施設、右が就労施設となっています。ここは視覚障碍者と聴覚障碍者が居住し就労する施設です。手話だけでなく、"sign language"と言っていましたが、時間をかけて一人一人と触れ合いながらコミュニケーションをとっています。全盲の人も耳のまったく聞こえない人もいますし、その他の複合的な障害を伴っている人もいます。
もともと障碍者家族が立ち上げたNPO法人なですが、視覚・聴覚障害の専門の施設はフィンランドでここ一か所ということです。職員と「クライアント」がとても仲良く楽しそうで、心温まる施設でした。障害の程度も違い、労働の質と量も人によって異なるなか、全体としてコーディネートすることはかなりの労力を要すると思います。アンチーク家具の修繕・補修、印刷・広告業務の委託、繊維製品の製造、家庭雑貨製造等、いろいろな就労が行われていました。日本のように障碍者を職場に適合するように訓練させるというより、障碍者に合わせて職場を設計している感じでした。見ていてとても素晴らしく感動しました。食堂のおばさんも障碍者で、楽しそうに働いていました。「クライアント」は障害年金を受けつつ、ここでの就労でいくらかの収入も得るのです。このNPO施設自体は、自治体の補助金が大きく、そのほかにカジノやスロットマシーン等の収益が配分されているとのことでした。
学生もみんな楽しんでいたようです。学校や福祉施設で日本の音楽を披露しようと、事前からグリークラブの野村君中心に準備していたのですが、なかなかうまくいきませんでした。ところが、清水君のギターの伴奏もあり実践で次第にうまくなっていき、最後にはなかなかすばらしい合唱となっていました。また、清水君は写真部でもあり、一眼レフでたくさん写真をとってくれて、すばらしいDVDにまとめてくれました。
幼稚園児からおじいちゃん、おばあちゃんまで職員や教員、フィンランドで会ったすべての人がとても親切で優しく、穏やかな人でした。教育や福祉関係施設はプラバシーの観点から写真が撮れず、紹介できないのが残念ですが、どの施設も明るく、オシャレで、綺麗でした。何もしなくても心が癒される感じでした。岡ゼミ生は全員福祉業界には進まない人たちですが、「こんな所なら働きたい」と言う学生も少なからずいました。
帰りの飛行機に乗る直前に、学生から"I love Helsinki !"の白いTシャツに26人の寄せ書きしてくれたプレゼントをいただきました。みんな、ありがとう。学生もいい意味でショックを受けたようです。フィンランドの教育と福祉、あれを目の当たりにしたら、多くの日本人は衝撃だと思います。きっと一生忘れられない美しい思い出になったはずです。キートス !!