概況
実施: 2013年2月20日~27日
場所:フィンランドのヘルシンキ、ラウマ、トルク
今回も社会福祉、および、教育が世界中でも最も進んでいると言われているフィンランドを訪問した。参加者は男性8人、女性19人の合計学生27人であった。昨年までと変わり、学期中は控えるように指示があり、学期修了後の寒い2月後半の実施となったが、幸いに1週間ずっと天候に恵まれ、北欧では例外的な青空の下、雪景色の中で研修を行うことができた。とは言え、気温はマイナス7度からプラス3度くらいで、軒下には長いつららが伸びていた。
日程は別紙のとおりである。21日(木)には、午前中ヘルシンキ市内の学童保育施設を訪問した。ここは就学前の保育のほか、小学校の放課後、そして中高生も夕方から利用する多目的施設となっている。教育と福祉の連携が図られている。楽しそうな雰囲気を学生も感じ取って、子どもと一緒に遊ぶことができた。
21日の午後はNPOの精神保健全国連盟を訪ねた。ここは主にかつての精神障害を伴っていた人が障害を乗り換えて、現在同じ障害を持つ人やその家族のために多様なカウンセリングを行っている。医療出身の人から心理学の専門家、ソーシャルワーカー等専門的なカウンセラーの他に、実際の体験者であるピアカウンセラーが活躍している。3人の専門家が体験談を語ってくれたが、とても重い人生観の深い話で、学生も感動する話であった。特に、かつて会社の社長からアルコール中毒、そして、うつ病にかかり、自暴自棄の生活苦から立ち直り、現在カウンセリングを担当している高齢の人の波乱盤上の人生は忘れられないものであり、現在の仕事に遣り甲斐を見出している様子であった。
22日(金)は専用バスで約1時間半のカーリシルタ学園を訪ねた。午後は同学園の居住施設も見学した。この学園もNPOの施設で市の補助金と公営ギャンブルの寄付金で賄われている。障害者のためのスポーツや音楽、絵画、手芸や職業訓練を行う施設である。少人数で心温まる活動が展開されていた。ここで音楽交流をした。明学学生から準備してきた「ふるさと」と「世界に一つだけの花」の合唱があり、学園の皆さんは日本の曲をわざわざ準備して合唱してくれた。絵画もとても人間らしい良い絵であった。日本のアニメの絵を好きな人もいた。
25日(月)はヘルシンキ郊外の公立小学校(メイラハティー小学校)を訪ねた。午前中は教頭先生と特別支援教育担当の先生のお話を聞いた。何気ない御言葉の中に、感動するものが多かったと感じたのは学生も同じと思われる。少人数教育で、一人ひとりをたいせつにしている。特に、優秀なエリートを育てることよりも、落ちこぼれを出さないように皆で協力する姿勢が貫かれていた。特別支援学級と普通急級の選択にあたっては、法的には学校側に決定権があるとのことであったが、関係スタッフと両親と懇切丁寧に児童本人に何が良いかを徹底的に話し合うとのことであった。日本と逆で、最終的には親の方から特別支援クラスを希望する場合が多いとのことであった。教育の原点を考えさせられる御話であった。
お昼は小学生と一緒に給食をいただき、雪の校庭で一緒に遊ぶことができた。残念ながら現在校舎の改装中でスペースが十分なかったため、教室での交流はできなかった。先生と生徒、職員間でも温かい雰囲気が醸し出されていた。
25日の午後はヘルシンキ市内のターラ高齢者センターを訪ねた。公立の施設であるが、設備の整った美しい施設であった。6階と地下室のある建物で、ショートステイからグループホームまで揃っている施設で、トレーニングジムやサウナ、食堂、レクレーションルームまであった。どこでもそうであるが、フィンランドの福祉施設、教育施設はどこも温かく和やかな雰囲気がある。冬でも部屋は暖かく、ゆったりとしていて、居心地がよい。また、職員の皆さんも優しくお互いに仲良く、遣り甲斐に満ちた感じを受ける。
25日の研修後、最後の晩餐はミットネン家に招かれ手作りの家庭料理をごちそうになった。いつも落ち着くおいしいフィンランド料理の心温まるおもてなしである。今年は研修中に石坂さんと田口君の2人が誕生日を迎えた。この夕食会でミットネンさんは大きなケーキを2つ作ってくれた。お礼に学生全員で合唱、準備していた3曲に加えて、アンコールに応えて1曲プレゼントした。ホテルに帰って、打ち上げコンパをホテルのバーで開いた。皆でフィンランドビールを味わい、盛り上がった。
さて、土日の観光にも触れておこう。今回は23日(土)にヘルシンキから専用バスで3時間半のラウマまで足を伸ばした。中世木造建築で世界遺産に指定されている小さな町である。道中のフィンランドの森の雪気色も素晴らしかった。中世にタイムスリップしたようであった。昼食をとったレストランも古い家屋で趣があった。海に面しスウェーデンと向きあうフィンランドの古都である。午後は寒い2月に藻係らず、時間を忘れて町中を歩き回った。このラウマに1泊したが、ホテルの裏には凍った川があり、その先には自然のアイススケート場があり、子どもたちが遊んでいた。
翌23日(日)は朝からフィンランド第2の都市でやはり古い都であるトルクを訪ねた。有名なトルク大聖堂、トルク城、シベリウス博物館を見学した。トルク大聖堂の鐘はフィンランドの時報を告げる鐘で全国的に有名とのこと。大きな聖堂で、ステンドグラスも美しかった。日曜日のミサに来る信徒が集まってきておりゆっくりは見れなかったが、欧州の伝統を感じるのには十分であった。フィンランド3大城の一つとして有名なトルク城もすばらしかった。地下の牢屋や礼拝堂から最上階の王様の部屋まで一回りするだけで相当時間を要した。中世の絵画や装飾品の展示もあり、ここでも中世社会を垣間見た感じがした。
帰国する最終日の26日には、ホテルをチャックアウトしてヘルシンキ市内を観光した。市場、オリンピックスタジアム、シベリウス公園、ヘルシンキ大聖堂、そして、自由時間を挟んでテンペリアウキオ教会を訪ねた。歴史的遺産よりショッピングに興味のある学生もいたが、それぞれ楽しんでもらえたと思う。欧州の街並みを満喫下に違いない。
今回初めての試みは、学生の希望もあってアイスホッケーのナイトゲームの観戦であった。物静かで温厚なフィンランド人がこの時ばかりは熱狂した。世界でもトップクラスの本場のプロチームのゲームを体感した。学生も皆、その迫力に「カッコイイ―」と絶叫していた。時期的にシーズン終盤の盛り上がった白熱試合で地元ヘルシンキのジョーカーズチームがイルべスチームに2対1で逆転勝利した。
とにかく、楽しく、美しく、感動的なフィンランド研修が今年も無事に終えられた。これまでの経験でも、学生にとって終生忘れることのできない思い出になっている。欧州の価値観に触れた感動を持ちながら、今後の社会生活に生かしていってもらいたい。最後に、仲良くみんなで協力してくれたすべての学生に改めて感謝したい。ミットネンさんも「みんな良い人ばかりですね」としみじみ言っていた。
2013年3月7日 岡 伸一
プレイグラウンド(学童保育施設)
カーリシルタ障害者学園
アイスホッケーの観戦
トルク城
ヘルシンキの公立小学校
ミットネン家での晩餐
ヘルシンキ大聖堂
2012年度も開発コースの2年生14名とカンボジア(2012年9月14―21日)に行ってきました。このフィールドワークは、カンボジアの子どもたちのためのセラピューティック・プレイ(心のケアのための遊び)とカンボジアの児童福祉に関する質的調査を行うことを目的としています。春学期はカンボジアを訪問するための準備、アメリカの講師を招いてのセラピューティック・プレイ・ワークショップ、質的調査の学習と準備を行います。夏休みにカンボジアを訪れ、春学期に習得してきたことを実践します。秋学期は、社会学部の学内学会での発表に向けて、調査の解析を本格的に行います。
東京のフリーマーケットに参加し、カンボジアの子どもたちが必要とする物資を購入するための資金作りをしました。
フリーマーケットで得たお金は、現地のNGOと相談し、カンボジアの子どもたちが必要とする衣服とビーチサンダルを購入する資金となりました。
それぞれの学生が描いた絵をそえて・・・
いよいよ、日本で学習し、練習を重ねてきたセラピューティック・プレイを子どもたちのために。
ひとりひとりに焦点を当てていきます。
お揃いのTシャツを着て臨みました。 子どもたちだけでなく、みんなの表情にもディシェンヌスマイル(眼輪筋が収縮して眼も笑う)が出ています。 楽しかったのですね。
○フィールドワークとは、テーマに基づいて現地を訪問し、直接観察あるいは参加して「現実」を捉えてみる活動の場です。ただし、自分の思い込みや個人の感想で終わることなく、何らかの客観的成果が求められる活動でもあります。
○そこで、今年葉、「子どもの地域でのくらし」を身近な地域に探ってみました。子どもたちは学校や塾以外で「居場所」をどこに持っているのだろうかという関心から、地域の社会資源探索から始めました。子どもたちの遊んでいる様子の観察、そして、スタッフのみなさんへのインタビューなど、まさに、「現実」へ飛び込んでいく体験です。
○後半は、障害のある子どもたちに提供されている「余暇支援活動」に参加(8月12月)、子どもたちとの活動を通し多くの発見と課題を手にすることができました。福祉サービスのあり方、子どもにとっての余暇とは、それぞれの研究関心を深める機会になりました。とくに、チームでの計画・活動参加・振り返りという一連の[work]は「他者を知り」「自らを知る」場でもあります。
○フィールドワークでは「現実」を知る方法として、参与観察と記録、インタビュー、アンケート調査などにも取り組みます。成果は学内学会で発表し、社会学科と社会福祉学科の両学生、卒業生へのプレゼンテーションと客観的な評価を受けるという体験は大きなステップアップのチャンスです。
○海外との交流も大事にしています。英国で生まれた「グラウンドワーク(GROUND WORK)」の実践報告を通して、市民レベルの「開発」の意義について学びました。
○中野担当フィールドワークでは、NPO法人放課後NPOアフタースクールさんと連携して冬期重度障がい児日中一時支援事業に参加しました。3/27(水)は子どもたちと一緒に葛西臨海公園に行ってきます!ご興味のある学生はぜひ下記のアドレスへご連絡ください。
※ご参加を希望される方は、放課後NPOアフタースクールまでご連絡ください。その後のご案内をします。
担当:上原 uehara@npoafterschool.org
<秋学期> 10月~1月
<2012年度の報告>
おおむね計画通りに実施してきた。学生は暑い夏に作業所や学童のプール、寒い冬に夜間パトロールや年末年始の炊き出しなど、何度も横浜寿町に足を運んだ。朝早く集合の場合もあれば、夜間パトロールなど終電ぎりぎりの現地解散などもあった。学生なりに大変だったと思うが、さまざまな思い出に残る体験もできたと思う。
河合担当の福祉開発フィールドワークは、今年度、研究テーマとして「宮古島市における住民生活の実態と住民活動について」を設定し、2012年9月11日から14日まで、沖縄県宮古島市で調査を実施しました。主な訪問先は宮古島市役所、宮古島市民生委員児童委員協議会、宮古島市社会福祉協議会そして福祉関係施設です。
2013年に実施予定の高齢者調査の予備調査ということで、地域特性、住民生活の実態、福祉施設、住民福祉活動、関係機関・団体での聞き取りを行いました。今年の履修学生は以下の通りですが、先輩、卒業生も参加して賑やかな調査団となりました。
履修学生
11sw1151 高橋 直道
11sw1123 坂内 恵
11sw1136 椎葉 大地
11sw1114 近藤 拓弥
11sw1170 冨松 侑真
研究テーマ:宮古島市における住民生活の実態と住民活動について
「東平安名崎」岬で記念撮影
宮古島市長と(市長室にて)宮古島市民生委員定例会
2012年度のフィールドワークは、春学期に児童福祉施設の主催する野外キャンプに、全員キャンプリーダーとして参加しました。東京都墨田区にある「興望館」が企画している軽井沢における4泊5日の、小学生を対象とするものです。事前に数ヵ月かけて準備し、研修も行い、総勢100名を超える大掛かりなものでした。卒業生、先輩の参加もあり、最終日に行われたフェスティバルは、全員の練習成果が発揮されて、まさに涙ありの"感動モノ"でした。つぎに秋には東京都清瀬市にある「国立ハンセン病史料館」に出かけました。ここは全生園という歴史のあるハンセン病療養施設のあるところ。あらかじめ、ハンセン病に関する歴史を学習し、ビデオも見て出かけていきました。史料館のとなりには病舎、記念物等が今も保存されていて、それらも歩いて見学、大変勉強になったようです。さて、その後、みんなで話し合った結果、東日本大震災の震災ボランティアに行こうということになり、明治学院大学ボランティアセンターの紹介で、宮城県気仙沼・大島にある被災地の農家を訪れて「援農」をすることになりました。そこは周囲が津波ですべて流され、ようやく残った農家ですが、ようやく修復が半分くらい済んだところでした。ここを訪れて「ゆず」の収穫期だったので、もぎ取り、選定を2日間にわたって行いました。みんな、がんばったおかげで大変感謝されましたね。
全体として履修生は少ないものの、中身の濃いフィールドワークができたと思っています。学生諸君も積極的に参加し、充実した時間を過ごせたのではないでしょうか。
なお、私事にわたりますが、わたしにとっては本学における最後の年度になります。そこでフィールドワークについて感想をひとこと。社会福祉は机上で学ぶことも大切ですが、いろいろな現場に出て行って、さまざまな経験を積むことによって分かることが多い分野です。どうか、後輩諸君、君たちも身体で感じ、心で感動する学びを大切にしてください。