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実習(社会調査士資格)

社会調査実習

社会学科では、毎年度、社会調査関連科目の総仕上げとして、1年間の「社会調査実習」が開講されています

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「社会調査実習」とは,社会調査の企画から,実査,データ分析,報告書の執筆までを,10~15名ほどの少人数で1年間かけて行う科目です。専門の教員の指導のもとに,学生自身がフィールドに出てデータを集め,さまざまな方法で分析を加え,得た知見に基づいて年度末に報告書を作成します.自らの手で「社会学」を実践することができる,貴重な機会です。社会学科の学生は3年次にこの「社会調査実習」を履修することができます。また,2年次には「社会調査実習」の準備ともいえる「データ分析入門」という科目も置かれています。これらの科目は、社会調査士資格に必要となる科目で、とくに「社会調査実習」は仕上げとなる重要な科目です。

社会調査実習:これぞ社会学の醍醐味

石原英樹(社会学科教員)

言葉があまり通じない国に観光にいって、どきどきしながら道を尋ねたり、読めないメニュー片手に食事を注文したことがありますか? 社会調査とはそんな観光に似ています。

〇いよいよ実習
社会調査の方法として主に使われるのが、①エスノグラフィーと②統計的調査です。エスノグラフィーとは、フィールドワークつまり参与観察やインタヴューを用いて人びとに接する調査法です。統計的調査は質問紙を配布したり、既存データを二次分析することで、人々の行動や意識を明らかにする方法です。どちらも1~2年生のときに学習してきはたず。学習してきたことで現実がスパッと切れる。これは大きな喜びです。

〇調査は迷惑にも公害にもなる
ただし、社会調査は、人間関係そのものであることに注意してください。インタヴューをしたい方に突然どこの大学かの名乗りもしないメールを出してしまう、相手の仕事の迷惑になる時間に訪問をしてしまう、質問項目も決めずに録音機材を真ん中において相手任せでインタヴューをする、「匿名希望」のはずの方の実名を報告書に載せてしまう・・・どれも実際に学生さんがしでかしてしまったことです。 私も失敗したことがあります。性的マイノリティへのインタビューで、「性的マイノリティに対する調査をしたい」という私の言い方に、「調査」という言葉はやめてほしい、といわれました。上から目線の冷たい言葉に聞こえたのです。失敗した場合にはきちんと謝罪して修正していきます。まさに人間関係です。 しかしうまくいけば、調査相手との関係が長く続くこともあります(私は熊本県のある町とは学生のときから20年のおつきあいです)。

〇最後に
こうした(ちょっとした)苦労のあとで、報告書をまとめることも大きな挑戦です。そしてその報告書を、お世話になった対象の方にお渡しすることで、実習は終わります。相手の人の反応は心配かもしれませんが、あなたが誠実に調査をしたのなら、きっと対象の方にも、なんらかの発見があるでしょう。

社会調査実習:見えない社会を捉えるトレーニング

浅川達人(社会学科教員)

社会学は,社会に生起しているさまざまな事象について研究する学問です。そのためには,「社会」をなんとかして把握しなければなりません。ところが,「社会」は目で見ることも,手で掴むこともできないため,実際に「社会」を研究するとなると,我々は途方に暮れることになります。

目には見えないのですが,「社会」が我々の前に姿を現すときがあります。たとえば,エレベーターに乗ったときに「社会」が姿を現します。日本国内でエレベーターに乗った場合,互いに注視することなく,なんとなく視線を避けて,初めて空間を共有する他の乗客に対して無関心を装うことにより,他者を気遣います。ところが,欧米諸国でエレベーターに乗った場合は,にっこり笑顔で挨拶を交わすことによって,初対面の他者に気を遣います。その場において,どのように振る舞うべきかという指示が明示されていなくても,その場の定義を読み取り,適切に振る舞うことを我々は要請されます。それができる人が「社会」人であり,そのような振る舞いを身につけることは「社会」化と呼ばれます。このようにして「社会」が我々の前に立ち現れるのです。

 このように,我々の行為を水路づけるかのように働く「社会」を把握するための試みが社会調査です。こう書くと「社会」が私たちの外に在って,私たちは常に「社会」によって操られているように感じますが,実際はそうではありません。私たちが「社会」に形を与えているという側面もまたあるのです。「◯◯ヤバ!」といったつぶやきがtwitter上をにぎわせると,「◯◯のよさ,すごさ」の形が「社会」のなかに,徐々に形成されていくといったことだってあるのです。となると,社会調査は,そのような「社会」の変化をも把握しなければならないことになります。

そのために,社会調査という試みは,極めて創造性が高い試みとならざるを得ないのです。ひとつのきまった型があって,その通りに遂行すれば,たちどころに解が得られるという類いのものではない。掴みたい「社会」に即して,手を替え,品を替えアプローチしなければならないのです。そのためにはトレーニングが必要であり,それは実習という授業形態において,教員と学生の協働作業が必要となるのです。見えない「社会」を捉えるトレーニングに,積極的にチャレンジしてくださることを願っています。