キーワード:仕事,働き方,社会階層,格差・不平等,社会調査
このゼミでは,「働くこと」をめぐる個人と社会の関係が,どのように変化してきたのか/変化していくのかを,各自の問題関心と社会調査に基づいて考察することを目指します.私たちの生活は,何らかの仕事に従事することによって得られる収入を基盤として成り立っています.生命を維持するために食事をすること,眠るための住まいを確保すること,学校に通うことなどの日常的な暮らしには,大なり小なりのお金が必要となります.そう考えると,多くの人にとって,「働くこと」と無縁で人生を送ることは難しいと思います.
では,「働く」という行為は人々にとっていかなるものなのでしょうか.それは衣食の資を得るためだけの継続的な活動でしょうか.決してそうではないはずです.働くことを通して自分の能力を発揮することもあれば,社会の中で何らかの役割を果たしうることもあります.しかしながら,誰がどの職業に就くのか(機会の問題),就いた職業によって得られる収入はどのくらいか(結果の問題)は,人々の間で異なります.例えば,親の収入や財産の状況によって,子どもの進路は影響を少なからず受けます.もし大学に進学するか否かによって,生涯で得られる収入に大きな差が生じているとすれば,それは人々の間に何らかの格差や不平等をもたらすことになります.
学歴・収入・財産などの社会的資源やその獲得機会が社会成員間に不平等に配分されてい る社会の状態を「社会階層」といいます.本ゼミでは,社会階層に関わる研究を土台にして,「働くこと」を複眼的に捉え直していきます.働くことの原理を探求することは,個人と社会の関わりを問い直す社会学の醍醐味の一つだと考えています.感染症の世界的な蔓延によって人々の働き方が大きく変貌を遂げる現代社会において, 人間にとって働くという活動がいかなる意味を持ちうるのかを,より確かな資料やデータに基づいて考察します.
その際,各自の問題設定によって分析の方法は異なりますが,量的な情報(数値で表されるもの)と質的な情報(文字や記号などの数値以外で表されるもの)を組み合わせて,自らが立てた問いに対する答えを導きだすことを試みます.膨大なデータを収集・分析し,社会的な問題にアプローチする学問(データサイエンス)は,今後ますます重要になると思います.量的・質的な方法論に基づいて社会学的な課題を考える/話し合うことを通して,卒業後も必要となる力を涵養していきます.
(1) 前半は,社会階層に関わる基本的な文献(日本語・英語)を輪読します.輪読を踏まえて問題関心の近いメンバーでグループにわかれて発表をします.
(2) 後半は,グループにもとづいて質問紙調査や聞き取り調査(フィールドワーク)を実施します.年度末にはその成果をまとめて発表・ゼミ論文の執筆をします.
(3) 1年を通じて,量的/質的調査に必要な知識を学びます.
*輪読では新書や学術書を軸にして,ゼミ生が分担して読み進めていきます.読んだ内容を踏まえて話し合います.