Shinichiro Inaba
1-0718(本館7階)
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inaba@soc.meijigakuin.ac.jp
近年の研究テーマ
1 「公共性」概念の再検討
現在、日本並びに多くの先進諸国のリベラル・左派知識人の間では、「公共性」そして「市民社会」という言葉が、一世代ほど前までの「社会主義」に代わり、現代の資本主義の不正や国家の暴力性を批判する際の合い言葉、思想的よりどころとして広く流通しています。しかしそれは果たして、内実のある言葉なのでしょうか。
2 宇宙倫理学の研究
応用倫理学の一環としての宇宙開発・利用の倫理学について、特に有人宇宙ミッションと宇宙植民の惹起する困難な問題に焦点を当てて考察していく。
担当授業
主な学部担当授業
主な大学院担当授業
主な業績
単著
- 『ナウシカ解読 ユートピアの臨界』窓社(1996)
- 『リベラリズムの存在証明』紀伊國屋書店(1999)
- 『経済学という教養』東洋経済新報社(2004)
- 『オタクの遺伝子 長谷川裕一・SFまんがの世界』太田出版(2005)
- 『「資本」論――取引する身体/取引される身体』ちくま新書(2005)
- 『モダンのクールダウン 片隅の啓蒙』NTT出版(2006)
- 『「公共性」論』NTT出版(2008)
- 『社会学入門』NHKブックス(2009)
- 『不平等との闘い ルソーからピケティまで』(文春新書、2016)
- 『宇宙倫理学入門 人工知能はスペース・コロニーの夢を見るか?』ナカニシヤ出版、2016年
- 『政治の理論 リベラルな共和主義のために』中央公論新社、2017年
- 『「新自由主義」の妖怪』亜紀書房(2018)
- 『社会学入門・中級編』有斐閣(2019)
- 『AI時代の労働の哲学』講談社選書メチエ(2019)
- 『銀河帝国は必要か? ロボットと人類の未来』ちくまプリマー新書(2019)
- 『ナウシカ解読[増補版]』勁草書房(2019)
- 『社会倫理学講義』有斐閣(2021)
共著
- with松尾匡/吉原直毅『マルクスの使いみち』太田出版(2006)
- with立岩真也『所有と国家のゆくえ』NHKブックス(2006)
- 宮寺晃夫編『再検討 教育機会の平等』岩波書店、2011年
- with岸政彦・北田暁大・筒井淳也『社会学はどこから来てどこへ行くのか』有斐閣(2018)
- 伊勢田哲治・神崎宣次・呉羽真編『宇宙倫理学』昭和堂(2018)
- 稲葉振一郎・大屋雄裕・久木田水生・成原慧・福田雅樹・渡辺智暁(編)『人工知能と人間・社会』勁草書房(2020)
- Konrad Szocik(ed.) "Human Enhancements for Space Missions." Splinger Verlag.(2020)
論文
- 「アダム・スミスと「労働問題」のパラダイム Ⅰ・Ⅱ」『経済評論』第38巻第6号、第7号 (1989)
- 「市民社会論・序説」『季刊窓』11号(1992)
- 「貧民問題をめぐるスミスとヘーゲル Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」『岡山大学経済学会雑誌』第25巻第3号、第4号、第26巻第1号(1994)
- 「宇宙倫理・ロボット倫理・ヒューマン・エンハンスメント倫理の交差点」『明治学院大学社会学・社会福祉学研究』 (143), 75-126, 2014-12
その他
書評、まんが評若干。
メッセージ
近代日本社会では長らく、学歴をめぐる熾烈な競争が展開してきました。そこでは「自分のやりたいことをやるにはまず出世してから」という常識が広くいきわたりました。私的に「やりたいこと」はもちろん、もっと大きく「世の中をよくしよう」と思えば偉くなるしかない、と。しかし高度成長が終わり、豊かな社会のなかで私的にはほどほどにみんな満足すると同時に「不平等化」の下で公的な「立身出世」の夢も覚めてきました。「偉くならなくたって幸せになれる」と。それはある意味正しい目覚めでしょう。しかしここで、何かが取りこぼされている。
果たして「偉くなる」以外の仕方で、「世の中をよくする」ことにコミットすることは可能でしょうか?