情報社会と言われる今日、異なる文化・世界に触れることは難しくありません。しかし、ネットなどを通しての異文化は一面的になりがちです。他国の文化に関するメディアに毎日触れている人でも、気が付くと送られてくる情報が音楽などの一分野に偏り、極端な場合にはいつのまにか数組のアーティストだけを追っているかのようになってくることもあるのではないでしょうか。特定の関心から始めていく姿勢にはもちろん何の問題もないのですが、情報が多すぎる結果なのか、一つを深めていけば自然と世界が広がっていく、とは限らなくなっているようです。身近なところから少しずつ視野を広げる意識が重要性を増しています。
その重要性を高める一因として〈「フェイク」のリアリティ〉があります。奇妙な表現になってしまいましたが、国内外における紛争を見ていると、発言力のある人が対立相手の主張内容を「フェイク」と否定し続け、さらに多くの支持者がそれを真実として受け止めることで現実的な影響力を得ていく、というシーンが見られます。もちろん私たち自身についても、事実とは異なるものを真実だと信じ込んでいる可能性を否定できません。VRゴーグルをつけて現実の足下が見えないまま歩くような感覚が、日常にも入り込んできています。その中で縮こまらずに歩くためには、五感を活用するとともに、ゴーグルを外して遠くを見る意識も求められます。
大学生活は、そうした世界を広げやすい場です。社会との接触も増え、人との出会いの他、本や知識などを通してもそれまで知らなかった世界に触れることができます。利害や必要性を離れて新たな出会いに向きあいやすい時期でもあります。
社会学・社会福祉学会(学内学会)も、両学科の学生間はもとより、教員・卒業生・大学院生との交流や、各種の活動を通して多様な学びを深めることを目的に掲げています。設立から30年を迎えて、その意義を高めるための組織や活動内容の見直しが議論されるようになってきました。そのための話し合いも貴重な機会です。多くの皆さんが関わることによって、実り豊かな交流をもたらす活動ができることを願っております。