明治学院大学

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社会学部

社会福祉学科

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地域における「新しい公共」のあり方  (担当教員:室田信一)

今年度、初めて福祉開発フィールドワークを担当させていただくこととなり、「地域における『新しい公共』のあり方」というテーマのもと、8名の学生と共に1年間の授業を終えることができた。その学びの成果については、次に続く学生による報告を参考にしていただくとして、ここでは1年間のフィールドワークの概要を報告することにする。

 

本フィールドワークは大きく分けて3つのパートならなるものであった。

第一に、前期は学生が3つの班に分かれ、各班が東京都内で活動するNPO法人を1団体ずつ訪問し、その内容について報告する機会を設けた。学生が選んだNPO法人は、地元品川区で活動するNPO法人「ふれあいの家おばちゃんち」、町田市で金魚玉珈琲というカフェを運営するNPO法人「れんげ舎」、そして世田谷区で冒険遊び場パークを運営する「野沢三丁目遊び場づくりの会」である。どの活動も住民が主体となり、地域の中の「あったらいいな」を自分たちの手で実現している団体である。

クラスでの報告会ではフィールドワークの内容について活発な意見交換がなされた。NPO法人の活動をとおして「新しい公共」がどのように成立し、どのような人がそれを担っているのか、お金は誰が出しているのかなど、お互いの報告から東京における「新しい公共」のあり方について理解を深めた。

 

第二に、夏期休業期間中に、和歌山県白浜町にて2泊3日のサマーキャンプを実施した。白浜町は人口約2万3000人の小さな自治体であるが、その中では様々な住民活動が展開されている。代表的な取り組みは白浜レスキューネットワークという自殺予防の活動である。白浜には三段壁という断崖絶壁があり、そこは飛び込み自殺を企図して多くの人が集まる場所としても知られている。白浜レスキューネットワークは、そこに写真のような看板を設置し、自殺を思いとどまった人たちが、社会に復帰できるよう相談援助や生活支援、就労支援などを提供している。

白浜町では、その他にも住民主体のまちづくり活動や社会福祉協議会が取り組む地域の交流活動の話などを伺い、一方で、学生からは、東京で活動するNPO法人についての報告をおこなった。白浜と東京の活動の比較をとおして多様な主体が多様な方法で「新たな公共」の一面を担っているということについて学ぶ機会を得た。

 

最後に、後期は学生が選択したフィールドで実際にボランティア活動をすることを課題として設定し、新宿区で活動する「スープの会」というホームレス支援団体で各自がフィールドワークをおこなった。普段接することがないホームレスの人たちに直接触れることで、各自が抱いていた偏ったイメージを払拭することができたという声が多かった。当初は活動に参加することに対して消極的だった学生も、いざ参加してみることで、「新しい公共」の一端を担うということは決して難しいことではないということを感じていた。

私にとっては、初めてのフィールドワークということで、十分に全体をコーディネートできない部分もあり、学生に迷惑をかけたことも多々あったと思う。しかし、私を始め、学生のフィールドワーク先の各団体からは、学生の熱心な学ぶ姿勢からたくさんの刺激を受けたという報告を受けている。今年度の授業をとおして得た学びと経験を生かして、8名の学生たちがこれからの日本社会の「新しい公共」を担う人材として羽ばたいていってくれることを心から願う。

サマーキャンプの宿泊先で食事をしている様子

 

サマーキャンプ中のプレゼン大会

 

サマーキャンプの無事終了を記念して集合写真

社会学部生のための手引き集

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