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フィールドワーク2015年度

福祉開発フィールドワーク(清水クラス)の授業報告(担当教員:清水浩一)

福祉開発フィールドワーク(清水クラス)の授業報告

1.テーマ
   横浜寿町にみる社会的排除の現実と社会統合の試み
2.授業のねらい
   貧困と社会的排除および各種の支援を実地に学ぶことにより、応用的な手法を学ぶ。
3.フィールドワークの内容
   寿町における各種支援団体や施設等を訪問し、支援活動に参加すると同時に利用者と触れ合う。
4.授業内容
   以下のような授業の柱を立てて毎年実施。
 <春学期>
 1 貧困や格差社会、社会的排除についての基本を知る。
 2 貧困の基礎(マルクス経済学の資本、賃労働、剰余価値、搾取等)を学ぶ。
 3 日本三大寄せ場、山谷・釜が崎・横浜寿町の歴史と現在について学ぶ。
 4 世界の貧困(現代資本主義とグローバリズム展開)の現実を学ぶ。
 5 実地体験①(クラス全員で横浜寿町訪問、現地スタッフの講義を受講)
 6 実地体験②(寿町内学童保育で子供たちと遊ぶ)
<夏季休暇期間> 8月~9月
  実地体験③(福祉作業所での作業体験、利用者との交流)
  実地体験④(ことぶき学童保育の夏季行事<プール等>に参加)
<秋学期> 10月~1月
  実地体験⑤(横浜駅・桜木町駅周辺の夜間パトロールへの参加)
  実地体験⑥(寿デイ・サービスの一日体験と利用者との交流)
  実地体験⑦(年末年始の炊き出し行事に参加)

個人研究発表(テーマは貧困に少しでも関連していれば基本的に自由。1人20分程度で模擬授業風の研究発表を行い、その後質疑応答を行う。)

5.2015年度の総括
2015年度も上記の授業内容を予定通り実施できた。学生は現地集合の時間等をきちんと守り、また個人発表の出来具合も中々よかった。教室授業も毎回欠席者が極めて少なく、充実した授業であったと思う。今後の課題は、前期の教室授業で貧困に関する予備的学習にもう少し工夫が必要かもしれない。また個人研究発表後の質疑応答も活発にしたい。

6.教室授業の様子
   <グループ発表の準備>

   <個人研究発表の様子>

7.現地実習の様子
   <年末年始の炊き出し>

   <ことぶき福祉作業所での昼食>

   <ことぶき学童保育の子どもたちと遊ぶ>

小諸市における地域福祉と住民活動の実態(担当教員:河合克義)

 河合克義担当の「福祉開発フィールドワーク」は、今年度、小諸市を訪問して、市の福祉施策、社会福祉協議会の活動、そして自治会活動の実際を調査しました。事前学習として、大都市と地方都市や農村地域の基本的条件の違い、その中での住民の生活の実態を比較検討しました。
 まず、東京都港区という大都市の住民の生活状況、特に高齢者に対する港区の諸施策について、港区役所に訪問して、聞き取り調査をしました。次に、港区社会福祉協議会を訪問し、港区の地域福祉活動の実態を学びました。さらに、小諸市の地域特性と施策、社会福祉協議会の活動実態について学習しました。
 以上の事前学習を終えて、8月末に、長野県小諸市を訪問し、市役所、社会福祉協議会そして行政区の一つ東小諸区で聞き取り調査を行いました。
調査期間は、2015年8月25日(火)~27日(木)です。調査の日程は次の通りです。

8月25日(火) 11時ごろ軽井沢到着、小諸へ、昼食後、「懐古園」を見学
15時30分~17時30分 小諸市役所で市の地域特性と全体政策、
高齢者介護・福祉について聞き取り
8月26日 (水) 10時から12時 小諸市社会福祉協議会への訪問調査
14時から16時 東小諸区の支え合いネットワーク活動、
小諸市自治基本条例についての聞き取り
18時から   社協職員等との懇親会
8月27日(木) 午前 調査のまとめ

市職員、社協職員、そして東小諸区の役員との懇親の場もあり、学びの多い、そして楽しいフィールドワークとなりました。最後の日は、軽井沢での散策の時間もあり、良い思い出となりました。


東小諸区での聞き取りの様子 (甘いトウモロコシと美味しい桃をご馳走になりました)


東小諸区での聞き取りを終えての記念撮影


小諸市社会福祉協議会前にて


小諸駅ホームにて

フィールドワーク(NPOインターンシップ)概要(担当教員:米澤旦)

フィールドワーク(NPOインターンシップ)概要
担当:米澤旦

○フィールドワークの意図と目的
本フィールドワークは、NPOへのインターンシップを通じて、地域社会でのNPO(非営利組織)・社会的企業の活動について理解を深めることを目的としています。NPOインターンシップとは、NPOの中間支援団体であるアクションポート横浜が企画・運営しているプログラムです。NPOの活動の意義や難しさを理解することを狙いとしています。

○概要
今年は18名の学生が福祉開発コースからインターンに参加しました。結果的に、学生の振り返りレポートに見られるように、①NPOや地域の社会問題の理解、②個人のスキルの向上が図れたと考えています。

〇スケジュール
(1)春学期(文献講読/インターンシップの準備)
春学期には、①文献の輪読と、②新聞記事ワークシートの作成を通じて、NPOの活動の基本的理解を図ることを試みました。同時にインターンシップに臨むため、研修会やマッチング会に出席し、インターンシップの準備を進めました。

(2)夏休み NPOインターンシップ
夏休みには、各学生がNPOの活動にインターンとして参加しました。本年の学生のインターン先は、子育て支援NPOや環境保護活動、障害当事者団体、NPOの中間支援団体、プレイパーク、まちづくりNPOなど多岐にわたるものでした。参加者は、イベント企画や日常的な作業などを通して、多くの体験を積むことができたと考えています。

(3)インターンの振り返り
秋学期には、インターンでの経験をもとに、振り返りを行いました。まず、異なる団体にインターンした学生間でサブグループを作り、体験を話し合いました。団体ごとに活動分野や活動の規模などで仕事内容が大きく異なり、それぞれ驚きがあったようです。その上で個人報告を行い、インターンで得た経験を共有しました。

事前研修への参加

NPOお見合い会への参加

ニューヨークで学ぶ!福祉開発フィールドワーク(担当教員:明石留美子)

2015年8月29日から9月4日まで、福祉開発コースの2年生9名とニューヨークに行ってきました。このフィールドワークでは、多様な社会福祉機関、国連、コロンビア大学大学院スクール・オブ・ソーシャルワークなどを訪問し、ニューヨークで実践されているソーシャルワークを包括的に学ぶと共に、子どもや高齢者への支援を計画・実践することを目的としました。

児童福祉機関で、子どもたちと一緒に日本のソーラン節を踊ります。日本から持参したおそろいの青いはっぴを着て子どもたちと踊ることは、その場の雰囲気を和ませるアイスブレーキングになります。その後は、子どもたちやスタッフの良いところを見いだしていくゲームなどを実践しました。

大学で学んだ傾聴やアクティブ・リスニングのスキルを基本に、日系高齢者の方々と面会しました。異国の地で日本文化を大切にされている方々に出会ったことは、多文化共生のあり方を考える機会となりました。

国連本部で。選挙支援部政務官に、開発途上国の再建における社会福祉の役割などについてインタビューしました。

コロンビア大学大学院スクール・オブ・ソーシャルワークの大学院生と共に。フィールドワークに参加した学生のほとんどが、将来は企業に就職し、福祉マインドをもって仕事に取り組んでいくことを希望しています。
コロンビア大学での「Stay with Why(なぜ、私たちはここに居るのだろう)」という最初の問いかけは、これから社会福祉をどのように学び、どのように活かしていくかを考えるきっかけとなりました。


スクール・ソーシャルワーカーのご自宅にお招きいただきインタビューを終えて。

今回のフィールドワークでは、多様な分野で活躍する10名のソーシャルワーカーに加え、チャイルド・セラピスト、精神科医、看護師、アート・セラピストに、ニューヨークのソーシャルワークについてインタビューしてきました。

帰国後の秋学期には、ニューヨークでのフィールドワークを分析し、結果を社会学部学内学会で発表しました。この発表を通して、社会福祉の学びのあり方、福祉マインドやグローバル・マインドの社会での活かし方について、参加者9名がそれぞれの答えを見いだしました。

(文章:明石留美子)

北欧社会福祉フィールドワーク:デンマーク編(担当教員:岡伸一)

[概要]
期日:2016年2月18日から25日
参加者:2年生岡ゼミ28人と引率の岡、旅行社添乗員の上杉さんの総勢30人
    現地のコーディネーター、ニールセン北村朋子さん他
訪問先:デンマークのコペンハーゲン、オダー、オーデンセ、マリボ
2015年度のテーマ: デンマークの福祉・教育・環境

2015年度の岡ゼミのフィールドワークは、2016年2月18日(木)から25日(木)までの7泊8日で、デンマークのオダー、オーデンセ、コペンハーゲン、マリボをめぐる研修となった。教育と福祉が例年のテーマであったが、今回は環境も加わった充実した学びとなった。
2月の北欧は例年、寒さとの戦いであったが、今年も暖冬で雪もなく、比較的穏やかな生活が過ごせた。前半は雨がちらつく日々であったが、後半は北欧では珍しいほどの太陽が見られ、連日、海と湖に反映した夕焼けが美しかった。以下、概略を日程に従って示そう。
2016年2月18日(木)、10時に成田第1ターミナルに集合。スカンジナビア航空SK-984便で出発、ほぼ予定とおり8時間の時差で現地時間の16時5分にコペンハーゲンに到着。フライト時間は11時間35分。到着後、専用バスに乗り込み、約2時間でオーデンセに到着して、夕食をとる。全員、健康で食欲も旺盛で、北欧の食事を堪能した。夕食後、再度、バスに乗って約1時間半、小さな田舎町、オダーのホテルに到着。22時ちょっと前であった。この日は、旅の疲れと時差ですぐに就寝。
翌2月19日(金)、地方の8時30分にオダーのホテルを出て、9時に障害者の統合教育で世界的に有名なエグモントホイスコーレンに到着。日本の福祉施設から同じ日に研修にやってきた人が3人いた。一緒にガイダンスを受ける。数少ない民間の学校で、ユニークな運営には明学の学生も大きなショックを受けていたようだ。多くの障害学生のために、多くの介助者が雇用されている。介助者には、専門の正規職員としての介助者の他に、学生をやりながら介助者も行う学生も多数いた。仲間の介助で給料をもらい、学費と生活費に当てて生活している。介助は授業時だけでなく、24時間の生活で必要になる。
北欧では、教育は基本的に無料であるが、寮費と食費は本人負担となる。介助者は労働をしながら学業が続けられることになる。そのあと、大学や高等職業学校に進学する学生も多い。因みに、高等教育に進学する場合、教育手当が支給され、学校までの交通費も支給されるとのこと。教育手当の支給額は、各自の状況に応じて変わるようである。
19日はエグモントホイスコーレンで昼食(給食)を食べた。とてもおいしかった。ゆったりした時間内であれば、いつでも、自由に、ビュッフェ形式で好きなだけ食べられる。食事に限らず、自由な雰囲気がキャンパスのいたるところで感じられる。スポーツ施設や音楽施設等が充実していた。障害者対応の大きなプールもすばらしかった。大きな体育館の壁面は、ロッククライミングの練習場となっていた。筋トレ施設も、障害者対応であった。噂を聞きつけて、日本も含め世界中の障害者教育の担当者が留学、研修に来ているとのことであった。日本人も毎年何人か在学している。


エグモントホイスコーレン(障害児統合教育学校)

同日午後はオーデンセに入り、デューロップフース認知症高齢者のためのデイサービスセンターを訪ねた。高齢者の皆さんと交流し、歌のプレゼントもした。その後、高齢者の皆さんの帰宅後、職員の方たちとゆっくり話す時間を得られた。明学の学生からたくさん質問が出されました。
学生が言うのには、痴呆症の高齢者とは思えないというのです。自由で、楽しそうに、幸せそうだった。「幸福度世界1」を実感した。学生が日本の認知症の施設では鍵がかかって外に出られないようになっていると言ったところ、デンマークでは鍵をかけることは法律で禁止されているとのことであった。
認知症施設ということで、職員の苦労、離職率等に学生の質問が集中すると、「我々は辞めようと思ったことは一度もない。遣り甲斐がある。離職者も少ない。高齢者の皆さんが楽しそうに過ごしてもらえたら、私たちも嬉しい。むしろ、他の仕事から異動してくる人が多い。」等のように、自然に出てくることばが、一つ一つ衝撃的であった。仕事で注意していることは?との質問に対して、「やりすぎないようにすることだ。本人が自分でできる喜びを奪ってはいけない。時間はかかっても、自力でできる方を優先させるようにこころがけている」と。まさに、レベルの高さを感じた。
2月20日(土)、午前中はオーデンセの市内研修となった。アンデルセンの生誕の地である。オーデンセのアンデルセン博物館で、アンデルセンの生い立ちから生涯の業績まで学ぶ機会となった。生憎の雨の中だったが、生家、洗礼を受けたクヌート教会、町中にある童話のモニュメント、アンデルセンのオブジェ、市庁舎、母親が入院していた病院等々、小さいが美しい町である。信号機の青信号まで、アンデルセンの像の影が組み込まれていた。
午後はオーデンセを出て約2時間でコペンハーゲンに行き、人魚姫の像、アマリエンボー宮殿、シトロエン通り等を見学し、コペンハーゲン市内のホテルに宿泊。買い物時間もとる。この時は小雨模様で、落ち着かない時であった。一度ホテルに入りチェックインして、再度、自由行動となった。


コペンハーゲン人形姫像を背景に

21日(日)はホテルを11時に出発して、約1時間半バスに揺られてマリボのクヌンセン農園に到着した。早速、農場のレストランで、地元で収穫された高級食材をいただいた。この農園は親から農場を相続した一人の女性が、自分の子供に食べさせたい食材を生産したいと、安全な自然食品を手がけた有名な農場であった。基本政策を学ぶにつけ、関心すること多かった。
まず、食肉の部位が大きくなる牛や豚や鳥等の家畜に関して、経済効率は二の次として、もともと昔からこの地域にいた家畜を再興しようと考えた。もはや絶滅危惧種となりつつある昔ながらの家畜を、もう一度育てていくものである。これが一番安全で、一番美味であるという考えであった。この方法がデンマークに限らず世界的な評価を得て、高級食材として認められた。
興味深かったのは、「動物の福祉」である。肉やミルク等を提供してくれる家畜が、生涯に渡り健康で幸福に生活を送ることが、人間にとっても重要なことである。病気や不健康な動物は、人間にも害を与える可能性がある。まずは、「動物の福祉」として、動物にとって快適な生活環境を整えることから始めるべきであるとの考え方である。農場の中は藁がたくさん引きつめてあり、清潔であった。福祉先進国は、全てにおいて先進であった。


クヌセンルン農場

このロラン島では、風力発電を中心に、藁を燃やす火力発電が主流で、100%自然エネルギーで賄っている。原子力は早くから廃止している。農村部でも、いたるところに、白い風力発電のプロペラが回っていた。
22日(月)は朝から、グルボースン市の市庁舎でレクチャーを受けた。レクの場所は、市議会が開かれる会議場であった。議員さんが座る椅子に学生が着席して、レクを受けた。最初のレクは、市の職員で国際交流を担当するフレッド・ダンボルグ氏から、グルボースン市の概況について説明があった。わざわざ英語で作成してくれたパワーポイント資料を基にしたものであった。デンマーク南端のロラン島では、ドイツのハンブルクとの間の海底トンネル構想があるらしく、期待されているとのことであった。続いて、福祉担当職員2人が登場し、一人は医療、介護を中心に、もうひとりは障害者福祉を中心に報告してくれた。日本とは大きく異なる行政と財政の構造であった。高福祉・高負担の典型であり、地方自治においても福祉予算は最大で、職員数も最大規模が福祉関係に従事していた。


グルボースン市庁舎でのレク

おおよその概況を理解して午後は、実際に同市の福祉施設を訪問した。まず、介護福祉士の養成機関を訪問した。研修内容や実習方法を教員から紹介され、学生代表数人とも交流できた。最も驚いたことが、この施設で研修を受けている期間中ずっと給料が出ていることであった。給与も一般の賃金よりちょっと低い程度の十分な賃金であった。授業料は無料の上、かなりの給料がもらえるのは、羨ましい限りである。日本の専門学校か短大に相当するかと思われるが、学生にとってはありがたいことであろう。面白かったのは、学校に時報を知らせるチャイムやベル等が一切なかったことである。時間に追われず、ゆったり生活していることがわかった。
続いて、高齢者の介護施設を訪問した。公立の大きな施設であったが、なにより湖に沿って作られたとても美しいロケーションであった。体育施設や趣味の施設等が充実していた。仲良しサークルも多数あるようで、チェスやカードをやっている高齢者も楽しそうであった。ここは訪問看護ステーションともなっており、医療・福祉サービスの拠点となっている。
23日(火)には午前中、フォルケスコーレ(小中一貫公立学校)を訪ね、学生と交流した。2クラスに分かれて、学校内の案内の後、教室で学生との質疑、交流が行われた。折り紙を教えたり、日本の紹介、デンマークの紹介が行われた。最後は音楽交流となった。デンマークの学生から心こもった歌のプレゼントに続いて、明学も練習していった3曲(旅たちの時、世界に一つだけの花、Country Roadを2人のギター演奏に合わせて合唱した。最後の本番が一番集中して演奏できた。素晴らしい出来であった。何人が泣いている学生もいて、私も目が潤んでしまった。福祉を学びにデンマークまで来て、スマップの「世界にひとつだけの花」はみんな平等だよねというメッセージであり、福祉に通じる曲であると改めて実感した。


フォルケスコーレ(公立中高一貫校)


同校で音楽交流

お昼は、再度、市庁舎で食事をとり、午後は障害者保護作業所と障害者住宅を訪問した。障害者保護作業所は、工芸品、美術品、装飾品等を製造する施設であった。全体として、商業ベースではなく、あくまで障害者にとってやりがいのある活動を展開しようという雰囲気を感じた。これで利益をあげて、儲けようといった考えでなく、一般の人たちに障害者の作った作品を見てもらい、理解してもらうことが重要と考えているようだ。多様な障害を持つ人が、自分の能力を発揮して、活動の場を持つことが重要である。この施設はその場を提供するものである。職員さんも優しく、暖かい雰囲気であった。
その後、この施設で働いている障害者の住宅施設を訪ねた。一階建てのユニットごとに居住者と職員がまとまっている。利用者である障害者に対する職員の比率が高いことがまず驚きであった。4人~6人の利用者に職員が2~3人いた。障害の程度もいろいろであった。とにかく明るく暖かい雰囲気であった。職員同士もゆったりして、余裕を感じた。
24日(水)は最終日、森の幼稚園を訪問した。可愛い妖精のような園児が森の中で我々を迎えてくれた。寒い北欧にあって、雨でも雪でも毎日、森の中で遊んで過ごす幼稚園である。森から学ぶことは多い。また、森はとても創造性を掻き立てる。ナイフやノコギリを持った工作も外で行うことで、明学の学生から危険はないか質問があった。切り傷、擦り傷は日常茶飯事であるが、救急車を呼ぶような事故は一度もない。親もこうした状況を理解した上で、ここに希望して子供をあずけているとの説明があった。待機児童はほとんどない様子であったが、デンマークでは人気のある幼稚園である。今年は晴れた良い日出会ったが、昨年は雨の中泥だらけで遊んでいた園児を思い出した。手作りの遊具、建物、全てがとても楽しそうで、遊び心を掻き立てる。明学の学生も、「もう一度人生をここからはじめたいな~」とぼやいていた。


森の幼稚園

同日午後15:45発のSASの便で帰国。約11時間のフライトで、翌日25日10:40に成田着。帰りの便の方がかなり短く感じる。最後の点呼を終えて解散となった。28人全員無事に感動の1週間が終焉した。
最後に、いくつか印象に残っている論点を整理してみたい。第1に、中等教育から高等教育にかけての政府の支援が手厚いことである。高校を出て大学に入ると、普段の生活費の保障として教育給付が支給される。大学への交通費も支給されるとのこと。基本的に教育は幼稚園から生涯学習まですべて無料であり、寮に入る場合も低額の負担となり、加えて寮費に関しても家庭の事情に応じて減額措置がある。専門学校等の職業教育に関しては、賃金が払われる。しかも、研修とはいえかなり高額で支給されている。障害者教育を行う学校では、学生も介助者となり、雇用契約を結び給料を受けている。学業と労働を同じ学校で実行することができる。すべての人の教育を受ける権利を保障するということは、こういうことなのだ。家庭の事情で進学できない子がいる日本とは違う。
第2に、農場での学びであったが、徹底した環境教育である。デンマークはかなり早くから脱原発路線を取り、原子力発電は廃止し、風力発電を中心に農村では石油に代わって藁を燃やして火力発電を展開している。訪問したロラン島では、100%再生可能な自然エネルギーを利用している。食の安全も徹底している。経済合理性よりも、健康で安全な生活を重視している。地元の動物や植物も幸せでなければ、人間も幸せにはならないとの主張であった。日本では理想だと言われてしまいそうだが、デンマークは実践している。
第3に、認知症通所施設は明学の学生にとっても衝撃的であったようだ。鍵のかけられた日本の施設を思い出してしまうのだろう。おとなしいあの学生たちがたくさん質問を職員の人に投げかけていた。「デンマークでは施設で鍵をかけることは法律で禁止されている」との最初のお話から、興味は深まるばかりであった。燃え尽き症候群は?離職率は?若者の職員は?職員の答えは、すべて意外であったようだ。離職率は低く、「私たちもやめようとおもったことはない。」「この仕事にやりがいを持ってやっている。」・・・
長時間で過酷な3Kの労働ではないか?の質問に、適切な時間と量をこころがけており、必要ならば、人員増を要求する。組合は強力で信頼できる。労働環境が良くなければ、良い福祉サービスは提供できない。ある学生が日本で福祉関連のボランティアをしているが、ここでもボランティアはいるか?との質問に、「我々はプロフェッショナルであり、この職場でボランティアに任せられるような仕事はほとんどない」との回答。プライドの高さを垣間見た。
第4に、広く言えば、成熟した民主主義。若者の政治への関心も高く、選挙には多くが投票するデンマーク。社会福祉や環境、教育等、どれもすべての人にとって重要なテーマであり、自己主張する。高い福祉、医療、教育、環境等のためなら、多額の負担も応じるという意思を感じた。治安がよく、国民の基本的なマナー水準も高い。労働組合に限らず、フェミニズム、消費者運動、宗教運動、共同組合運動、環境保護運動、開発途上国支援運動等、多様な社会運動が活発なのは、この国民性に基づくものといえよう。
およそ20歳の社会福祉学科2年生にとっては、デンマークの社会は衝撃的であったに違いない。「日本ってなんてダメな国なんだろう」と言っていた学生もいた。外国を見ることは、改めて、日本の良いところ悪いところを認識できる貴重な機会となる。北欧で行われていることが、少しでも多くの日本人に学ばれることを希望している。
成田空港に到着し、最後の点呼をとり「解散」を言っても、いつになっても場所を去らない学生がいた。「どうしたの?」と尋ねると、「この旅は衝撃的でした。終わってほしくないので、余韻を楽しんでいます。」と言う。「また、いつでも行けるよ」と笑ってみたが、確かに、20歳の学生が感じた衝撃は、次の旅では味わえないだろう。こんな体験ができて本当に良かった。お世話になった多くの人に感謝したい。
岡ゼミは、4月から訪問国デンマークの学習を始める。地理、歴史、文化、民族、政治、経済から、学生の興味に応じて、スポーツ、グルメ、世界遺産、観光、ファッション等まで、後半はデンマークの社会福祉、医療、教育等に至るまで、1年かけてじっくり学ぶ。その間、日本紹介のプレゼンや歌の練習、折り紙まで、交流の準備も行った。1週間のために1年かけて下準備である。読んで学ぶことと、実際に見ることは格段に違う。28人の学生が生涯の宝物となるように、この思い出を大切にしてもらいたい。世界で一番幸福度の高いデンマークを経験して、みんなも幸せになってもらいたい。


マリボのホテル裏庭で湖を背景に

(岡)