2022 年 4 月、成人年齢が 18 歳に引き下げられた。一方で飲酒や喫煙など、20 歳にならないとできないことも依然として残っている。
― ― いつまでが子どもで、いつからが大人なんだろう? そう疑問に思った人は多いのではないだろうか。
「子ども」や「大人」、さらにはその間に位置しそうな「青年」「若者」といった社会的カテゴリーは、おそらく、生物学的な事実だけで決まってはいない。かつてフィリップ・アリエス( 1980)は、「子ども」を可愛がったり、しつけや教育をしっかりしようとしたりする感覚は、近代になって中上流階級から現れたと論じた。そのような意識は、今やより広範に社会に広がっているといえるだろう。そして、この広がりを支えるのに、法律や制度が一役買っている。様々な法や制度が、ときに矛盾しながら複雑に絡み合い、「一人前」と「それ以前」の境を定め、「子ども」「若者」を定義し、彼/ 彼女たちのために「大人」や「社会」が何をすべきかを定めて、私たちの思考や行動を導いている。
皆さんが、「子ども」「若者」として、はたまた彼/ 彼女たちと向き合う大人として、何が問題か、どうするのが望ましいかを考える前に、このような社会意識や制度のからくりを見抜けるようになる必要がある。現代の子ども・若者を取り巻く社会環境や法制度は、少子化、自立の「遅れ」、成人年齢の引き下げといった矛盾すらする動向のなかで、複雑化している。その複雑さを、法や制度も含めて考えてみたい。加えて、法制度を決める広義の政治( 様々なアクターの権力関係) や、法制度を運用する国と地方自治体の行政といった観点も組み込んでいけたらよい。
つまり、本ゼミでは、子ども・若者に関する歴史社会学的視座と、現代を中心とする諸制度や行政の取り組みを、文献講読やワークを通して学び、子ども・若者を取り巻く社会のからくりを読み解く力をつけることを目的とする。特に秋学期には、各自のテーマを定めて、具体的な制度を調べ、可能性や問題点を論じてもらいたい。折しも、2023 年 4 月、こども家庭庁が、各省庁にまたがっていた少子化対策や児童福祉、子ども・若者育成支援などを統合する形で発足し、「こども基本法」が施行された。この子ども観の分析を手分けしてやってみるのもいいかもしれない。機会があれば、自治体や支援現場へのフィールドワークも検討する。
・春学期: 基本文献講読、こども家庭庁「こども家庭庁」「こども基本法」の分析ワーク
・秋学期: 追加文献講読、各自のテーマに沿ったリサーチまたはグループワーク
⇒自分なりのテーマを決めて調べたことをまとめるゼミ論を仕上げる
(テーマ例) 教育格差、学力格差、いじめ、不登校、ジェンダー( 格) 差、外国につながる子ども、 性的マイノリティの子ども 、「 スクールカースト 」、 生徒文化、 学校文化、「 ブラック校則 」、「 子どもの貧困 」、「 ヤングケアラー 」、 若者の参画、 就労支援、 キャリア教育