このゼミでは、都市型コミュニティにおける生涯学習の可能性をテーマに取り上げます。現在では、社会教育や生涯学習のための施設やプログラムが整備されているのは当たり前のように思えるかもしれません。しかし、アメリカの理論から多くを学んできた戦後日本の都市社会学の発展過程をみると、都市型コミュニティは作為的に形成され、理念と現実の違いをめぐって多くの議論が重ねられてきたことがわかります。他方で、2000 年代以降、都市間競争を背景にコミュニティデザインといったアプローチが注目され、まちづくりと生涯学習実践が同一視されるようになっていますが、その背景についての理解はけっして深まっていません。このゼミでは、文献講読をとおし、初期の都市社会学が農村と都市の相違、行政や中間集団の役割、( 地域)住民という概念の発達などをどのように論じてきたのかを確認したのち、社会教育や生涯学習実践にとって新たに考えるべき都市の問題は何かという点を一緒に考えます。
毎年、履修者と相談しながら異なる文献を読んでいます。参考までにこのような論文を読むかもしれません。
このゼミは、社会教育主事関連科目のひとつで、演習と実習を兼ねた授業です。
このゼミでの 1 年間は、三期で構成されています。まず、春学期前半を中心にテキスト講読を行います。取り上げる文献は、コミュニティ論に関連する論文です。毎回 1 本のペースで読み進めます。予習は必須です。次に、春学期後半から秋学期前半を中心にフィールドワークを実施します。取り上げるテーマは生涯学習の新たな現代的課題とし、グループに分かれて調査をしてもらいます。こちらも先行研究を見つけてくる、調査を設計する、調査する、分析する、報告するという一連の作業を実施するので、かなりハイペースで進むことになると思います。学内学会での発表も予定しています( 12 月)。最後に、秋学期後半以降は各自が作成するゼミ論文( 8000 字以上)を執筆してもらいます。文献講読を通 して知識を獲得し、調査実習を通して仮説を立て分析する経験をし、論文を執筆することで各自がそれまで培ってきた知的能力を伸ばしてほしいと思っています。
これとは別に、1 単位分の実習として、東京都港区教育委員会が主催する事業に参加します。例年、港区生涯学習センター「ばるーん」での、合計 6 回程度の連続講座(「まなマルシェ」)に参加しています。希望者は、インターンとして深く関わることも可能です。授業開始前に、正式にご案内いたします。