いま取り組んでいる研究テーマは三つあります。一つめは、生涯学習の公共性についてです。学校教育以外の領域における様々な形態の学習機会を、なぜ社会が支える必要があるのかという問題です。答えを見つけるとまたすぐにそれが次の問いへとつながるので、なかなか終わりが見えません。二つめは、コミュニタリアニズムの教育論です。人間が孤立した原子ではなく共同性に根ざした存在だと前提すると、どのような社会が可能になるのかを考えています。関連して連帯と共同性の違いについても考えています。三つめは、ボランティア活動と市民社会の関係です。ボランティア活動やNPOといった活動は社会のなかでどのような位置を占めているのか、それがどのような意味をもつのかという点に関心があります。番外として、ワークライフバランスについての勉強も始めました。研究テーマというよりも、今のところ当事者として悩んでいるというほうが正しいかもしれません。個人的な悩みがどこまで普遍的な問題につながるのか慎重に調べながら、国内外の議論をチェックしています。
学生のときに聴いた音楽、読んだ本、見た映画、心を動かした出来事によって、現在の私の大部分ができあがっているように思います。思いこみで出かけたデンマーク留学も、いつかポール・ウェラーに会った時に困らないようにと始めた英語の勉強も、なりゆきで関わった第三世界ショップでのボランティア活動も、その後の世界をぐんと広げてくれました。みなさんが学生時代に糧となる出会いをたくさん経験できますように。
ゼミでは、都市型コミュニティにおける生涯学習の可能性をテーマに取り上げます。学術論⽂を読み、議論し、調べに出かけ、考えるというゼミを運営したいといつも願っています。2019年度は、まずは文献講読をとおし、初期の都市社会学が農村と都市の相違、行政や中間集団の役割、(地域)住民という概念の発達などをどのように論じてきたのかを確認します。そして現在、巷にあふれる数多のまちづくり関連本を読解し、社会教育や生涯学習実践にとって新たにどのような課題が出現したのかを共に考えようと考えています。
ゼミ合宿@神戸(2019年9月)
2019年9月には1泊2日で神戸でゼミ合宿を実施しました。ソーシャル系市民大学とまちづくりの関係を学ぶために、神戸市役所内2カ所でのヒアリングのあと、神戸モトマチ大学学長の村上豪英さんに、社会実験に関する貴重なお話をうかがいました。また、2020年は港区教育委員会みなと学びの循環事業「まなマルシェ」に参加しています。オンラインでの開催を基本とする港区在住・在学・在勤者のための講座の企画運営にメンバーとして関わっています。