明治学院大学

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社会学部

社会学科

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加藤 秀一

Shuichi Kato
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1-0719(本館7階)
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近年の研究テーマ

運動/思想としてのフェミニズムやフランスの思想家M・フーコーが提起した問題のいくつかを自分なりに考えつづけてきました。性差別・性役割の現状分析、性の商品化、身体論、フェミニズムの状況・運動論などについて書きましたが、いま特に興味をもっているテーマは大きく分けて二つあります。一つは、「性別とはそもそも何か?」という問いにかかわる、いわば性現象の原理論。もう一つは、「生殖」をめぐる問題系、具体的には生殖における女性の自己決定権をめぐる倫理学的な考察や、性道徳と優生思想との絡み合いについての歴史的探究。もちろんこれらは別個のテーマではありません。人間が〈性別を持つ〉という事態は、究極的には有性生殖という生物学的条件の上に成り立っているのですから。

そうした観点から、進化生物学や脳・神経科学の動向にもシロウトなりに深い関心をもっています。当面は、生殖技術と遺伝子技術の交わる地点に注目し、〈生命〉をめぐる権力関係の分析に集中していくつもりです。

担当授業

主な学部担当授業

  • 性現象論
  • 生命の社会学

主な大学院担当授業

  • 性現象論研究

主な業績

著書・編著

  1. 『はじめてのジェンダー論』(有斐閣、2017年)
  2. 『生――生存・生き方・生命 〔自由への問い 第8巻〕』(岩波書店、2010年)
  3. 『〈個〉からはじめる生命論』(NHKブックス、2007年)
  4. 『ジェンダー入門』(朝日新聞社、2006年)
  5. 『「ジェンダー」の危機を超える! ――徹底討論!バックラッシュ』 (若桑みどり・皆川満寿美・赤石千衣子との共編著、青弓社ライブラリー、2006年)
  6. 『図解雑学 ジェンダー』(石田仁・海老原暁子との共著、ナツメ社、2005年)
  7. 『〈恋愛結婚〉は何をもたらしたか--性道徳と優生思想の百年間』(ちくま新書、2004年)
  8. 『性現象論--差異とセクシュアリティの社会学』(勁草書房、1998年)
  9. 『フェミニズム・コレクション〔全3巻〕』(坂本佳鶴恵, 瀬地山角との共編著、勁草書房、1993年)

論文

  1. 「〈誤った生命〉とは誰の生命か――ロングフル・ライフ訴訟の定義から見えるもの」(酒井・浦野・前田・中村・小宮編『概念分析の社会学2』ナカニシヤ出版、2016年、第7章)
  2. 「〈自分の存在を否定する〉ということについて」(『明治学院大学社会学・社会福祉学研究』144、2015年)
  3. 「生む/生まない自由と生まれる/生まれない自由――新(リベラル)優生学をめぐって」(加藤秀一責任編集『生―生存・生き方・生命〔自由への問い8〕』所収)
  4. 「概念と方法 性/愛、セックス/ジェンダー」(飯田隆ほか[編]『岩波講座哲学 12 性/愛の哲学』岩波書店、2009年)
  5. 「遺伝子決定論、あるいは〈運命愛〉の両義性について――言説としての遺伝子/DNA』(柘植あづみ・加藤秀一[編著]『遺伝子技術の社会学――テクノソサエティの現在Ⅰ』文化書房博文社、2007年、第一章)
  6. 「性的身体ノート――〈男語り〉の不可能性から〈新しい人〉の可能性へ」(荻野美穂ほか[編]『資源としての身体--身体をめぐるレッスン2』岩波書店、2006年)
  7. 「ジェンダーの二〇世紀」(『岩波講座 二〇世紀の定義 8 〈マイナー〉の声』岩波書店、2002年)
  8. 「身体を所有しない奴隷--自己決定権の擁護」(『思想』No.922、2001年)
  9. 「女性の自己決定権の擁護」(江原由美子編『生殖技術とジェンダー』勁草書房、1996年)
  10. 「『風の谷のナウシカ』試論--〈追憶〉と死者たち」(『季刊 窓』第22号、窓社、1994年)

メッセージ

受験生諸君へ。人生のなかで、大学生として読書や議論にあけくれる日々ほど素晴らしいものはありません。それは、いかなる恋愛や仕事や旅にも優るとも劣らない貴重な時間です。ひとにお金を出してもらって勉強できるということが、この世界のなかで、どれほど恵まれた身分であるか。ほんの少しばかりの想像力を働かせてみればわかるでしょう。けれども、正直なところ、こんなハナシには「はぁ?」と言う人の方が多数派かもしれない、とも思います。それでも、上に書いたことが「もしかしたら本当かもしれない、本当だったらいいなあ」と感じられる人にこそ、ぼくらと共に学んでほしいと願っています。

在校生諸君へ。上に書いたことはそのまま君たちへのメッセージでもあります。「いまやりたいこと」が企業のインターンだったりする学生たちを見ていて、それ自体が悪いということではないけれども、「浮世を離れて勉強さえしていれば許される」という学生ならではのかけがえのない贅沢をもっと思いっきり享受すればいいのに、とときどき思います。

卒業生諸君へ。ぼくの好きな歌詞の一節を。「勇気なんていらないぜ/僕には旅に出る理由なんて何一つない/手を離してみようぜ」(くるり「ハイウェイ」)

ゼミ紹介

ゼミの紹介へ

女であること、男であること。あるいは、そのどちらにも当てはまらないこと。そのことは、かけがえのない個――とさえ言えないような、唯一の誰か――である私たちの一人ひとりにとって、どんな意味をもっているでしょうか。こうした問いに行き着くジェンダー論の視点は、恋愛、メディア、結婚、家族、セックス、教育、労働、政治、世界経済......どんなテーマを研究する上でも不可欠です。 このゼミでは、まず3年次に「これまで、ジェンダーやセクシュアリティという概念をめぐって何が言われてきたのか」を概観し、その基礎の上にたって、4年次ではメンバーそれぞれの「実存」により深く関わるテーマについて卒論を執筆します。

ちなみに最近数年間の卒論テーマは、「人はなぜコスプレをするのか」「宝塚ファンは何を求めているのか」「男性の育児参加の現状と問題点」「女性雑誌にみる姫系と小悪魔系」「女性難民問題」「ジェンダーと格差社会」「売買春の歴史」......などなど。他に、表面的にはジェンダーや性とかかわらないように見える「日本の学生運動」や、「意識と肉体」といった哲学的な考察もありました(加藤がアドバイスできる範囲の、社会学、社会思想、哲学といったテーマの卒論なら、自由にテーマを選ぶことができます)。

自分自身の切実な問題意識とあくなき知的好奇心をもって世界に立ち向かっていきたい!というみなさん(そして、勉強は苦しいこともあるけど愉しい、と素直に思えるみなさん)と一緒に、これからも学んでいきたい、と思っています。

(文責:加藤秀一)

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