明治学院大学

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社会学部

社会福祉学科

社会福祉学科

新保 美香 (担当科目:公的扶助論)

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専門領域あるいは担当科目の紹介

「貧困」という言葉を聞いたとき、あなたはどんなことをイメージするでしょうか?何気なく平穏な暮らしを送っている誰もが、生活上に起こる様々な出来事、たとえば、病気、事故などで受ける障害、失業、などをきっかけとして、収入を得ることが困難となったり、家族の支えが得られなくなったりする可能性を持っています。「貧困」な状態となることは、決して特別なことではありません。

このような状況で、日々の生活を営むことが困難となったとき、国がその責任において、生活を保障するしくみが、公的扶助です。日本では、生活保護法が、憲法25条にもとづき、「健康で文化的な最低限度の生活」を具体的に保障する制度としての役割を担っています。日本に限らず、世界各国で、社会福祉は「貧困」と向きあいながら、展開してきました。「貧困は個人の責任」という考えが主流であった時代には、「貧困」であることを、良くない事としてとらえがちでした。貧困であることの烙印を押したり、刑罰を与えたりしていた時代もありました。また、施設の中での労働を提供することを救済の手段としていた時もありました。日本においては時代の流れとともに、金銭による援助を行うようになっていきましたが、対象を、障害を持つ人や、高齢者などに、かなり限定していた時もありました。現在のように、生活に困った時に、誰でも、無差別平等に、生きていくための権利として生活保護を利用できるという考え方を基礎に制度が整備されるまでには、長い歴史を経ているのです。

しかし、生存権を支える大切な生活保護制度も、その本来のあり方は、一般にあまり知られていない現状があります。また、生活保護制度があっても、孤立しており助けが求められない方々や、生活保護制度が利用できず生活がたちゆかない方々など、生活保護制度では支えられない生活困窮状態にある方々が少なくない状況があることも認識されるようになりました。こうした中で、2015年の生活困窮者自立支援制度が施行により、経済的側面のみならず、社会的孤立状態にあり生活に困難を抱えている方々を包括的に受けとめる相談支援の取り組みが全国で始まっています。

公的扶助論では、これからの生活保護制度、生活困窮者自立支援制度をはじめとする貧困、低所得世帯に対する制度がどのように在ることが望まれるか検討していきたいと思います。また、演習、実習では、実際に貧困な状態にある人々に対し、社会福祉の専門職として活動するソーシャルワーカーが、どのような支援をしていくことができるのか、その可能性を、みなさんとともに、模索していくことができれば幸いです。

専門領域の理解を深めるための文献紹介

以下は、貧困、生活保護、生活困窮をめぐる状況について知ることのできる文献です。
これらの本を入り口として、この領域に関心を持っていただければ幸いです。

  1. 金子充『入門貧困論―ささえあう/たすけあう社会をつくるために』明石書店、2017年。
  2. 役所てつや原案 先崎綜一著『フクシノヒト』1・2 文芸社文庫、2017年・2018年。
  3. 柏木ハルコ『健康で文化的な最低限度の生活』(1)~(8)小学館、2014年~2019年。
  4. 稲葉剛『閉ざされた扉をこじ開ける―排除と貧困に抗うソーシャルアクション』朝日新聞出版、2020年。
  5. 駒村康平編著『社会のしんがり』新泉社、2020年。

その他

福祉を志す高校生・大学生へのメッセージ

明学の3年生だったとき、配属された実習先「福祉事務所」での経験が、私を「現在」にいざなってきたように思います。そのとき出会った、生活保護を受けながら生活している方々の生きざまと、そうした人々と業務を越えて向き合うワーカーの姿に、どうしようもなく、ひきつけられてしまいました。

実際に生活保護の仕事に就くことができたのは、それから10数年経ってからでした。あこがれの職業だったにもかかわらず、実際に携わってみると、「想い」や「理想」と、現実に「自分ができること」とのあまりのキャップに、悩むこととなりました。社会福祉はもちろんのこと、広く物事の考え方を学び、自分のものにしておく必要性を痛感しました。

現場での私の支えは、仕事を通じて出会うことのできた、「生きていくことの素晴らしさ」を、自らの生きる姿をもって教えてくださった方々の存在。そして、よき先輩や同僚、関係機関の仲間たちの、バックアップでした。この、大学という場においても、人と関わる中で生まれ、もたらされるものを大切にしながら、「想い」を失わず「理想」を追いかけつづけていきたいと願うこのごろです。

社会学部生のための手引き集

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