明治学院大学

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社会学部

社会福祉学科

社会福祉学科

金子 充

Ju Kaneko
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本館7階 707号室
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専門領域およびその概要

貧困研究、福祉政策の理論と歴史、制度分析

 低所得、不安定就労、住居喪失、借金、意欲喪失といった(誰もが直面し得る)状態や状況によって、社会的に抑圧され排除される人々がいます。そのような人々を生み出しやすい時代・社会であることを構造的に明らかにし、また彼らの人生や経験を尊重する社会福祉の政策や実践をいかにしてつくりあげることができるかについて研究しています。あたりまえのようですが、意外にもいまの社会福祉はそれができていないと思っています。

近年の研究テーマ

多様化する人々の生き方を尊重した社会福祉のあり方を考えるという大きな研究テーマを掲げています。こんにち、グローバル市場経済や権力的な政治によって、社会的に抑圧され排除される人々が増えています。それは特定の「マイノリティ」の問題というよりも、地域や年齢や性別にかかわらず誰もが経験する問題としてとらえることができます。孤立化し貧困化する人々の声に耳を傾け、彼らがどのようにしてコミュニティから排除され、またそれでもなぜどのようにして誇りやこだわりを持って生きようとしているのかを知りたいと考えています。あわせて貧困や排除を引き起こす社会の構造をとらえ、そのような(結果的にマイノリティとなった)人々の人生や経験に配慮した社会福祉の政策・実践のあり方を探究したいと考えています。

この研究の一環として、福祉政策・福祉国家の批判的検討をおこなっています。社会福祉は、貧困や社会的排除をなくし、人々の暮らしを豊かにする営みでありながら、同時に人々を選別したり、抑圧・管理したりする側面をもっています。たとえば生活保護という制度は、貧困を解消して生存を保障するための制度ですが、それを利用することで差別を受けたり、家計や家族の事情をさらされ管理されたりします。社会福祉のそのような二面性を再確認し、でき得るかぎり人間を抑圧・管理しない社会福祉を実現するために何が必要なのか、どのような議論を進めるべきか等について考えています。

さらに、公的部門(政府・国家)の役割・意義を再確認する議論に関心をもっています。市民活動や当事者によるセルフヘルプ、あるいは民間営利企業による社会福祉が拡大する現代において、それらの意義は十分にあると考えられるものの、あらためて所得再分配や公共サービスの整備、最低生活保障など、政府・国家がやるべきことの重要性を確認する研究をおこなっています。

担当授業

学部担当授業

  • 社会福祉学概論A
  • 社会福祉学概論B
  • アカデミックリテラシー
  • 福祉開発フィールドワーク
  • 演習1
  • 演習2

大学院担当授業

  • 社会福祉原論研究A
  • 社会福祉原論研究B
  • 研究指導1
  • 研究指導2
  • 研究指導(社会福祉原論研究)

※詳細はシラバスをご覧ください

研究実績

著書

  • 金子充 (2017) 『入門 貧困論 ―ささえあう/たすけあう社会をつくるために』 明石書店.
  • 圷洋一・金子充・室田信一著 (2016) 『問いからはじめる社会福祉学』 有斐閣.

論文等

  • 金子充 (2023) 「カリフォルニア州における保証所得(Guaranteed Income)プログラムの制度分析」『明治学院大学社会学・社会福祉学研究』161号.
  • 金子充 (2022) 「行財政改革と日本型福祉社会」古川孝順編著『現代社会福祉分析の再構築』中央法規.
  • 金子充 (2022) 「資産ベース福祉による貧困対策のパラドクス ―イギリス児童信託基金の検討から」『明治学院大学社会学・社会福祉学研究』158号.
  • 金子充 (2021) 「ベーシックインカムに組み込まれる福祉契約主義に関する考察 --スチュアート・ホワイトの『市民的ミニマム』論から」『明治学院大学社会学・社会福祉学研究』157号、23〜43頁.
  • 金子充 (2020) 「貧困、チャヴ、負債について(研究ノート)」『明治学院大学社会学・社会福祉学研究』155号、93~104頁.
  • 金子充 (2019) 「ワークフェア化と合理化が進む対貧困政策 ―緊縮財政下の税・社会保障改革のリスク」金子光一・小舘尚文編著『新・世界の社会福祉1:イギリス・アイルランド』旬報社、173~199頁.
  • Ju Kaneko (2019), Is Social Security Reform Really Willing to Deal with Poverty?, The Rissho International Journal of Academic Research in Culture and Society, 2, Rissho University, March 2019, pp.223-241.
  • 金子充 (2019) 「社会保障とアセット・ベース型福祉 ―イギリスの住宅支援とソーシャルケアに着目して」『立正大学社会福祉研究所年報』第21号、51~71頁、2019年(共著).
  • 金子充 (2018) 「貧困を見えなくする社会保障改革」 『住民と自治』(自治体問題研究所)2018年12月号、8~12頁.
  • 金子充 (2018) 「貧困・生活困窮者に向きあう実践に求められるケアの倫理」 『ソーシャルワーク研究』第44-3号、16-22頁.
  • 金子充 (2017) 「費用対効果を重視する社会保障政策の陥穽 ―『低コスト化』と管理統制の現実」 『社会福祉研究』(鉄道弘済会)第128号、84~88頁.
  • 金子充 (2016) 「社会福祉が見落としてきた『労働』の現在 ―多様化する『労働』の支援に向けた論点整理」 『社会福祉研究』(鉄道弘済会)第126号、26~33頁.
  • 金子充 (2016) 「社会保障制度改革は貧困問題にこたえるのか」 『社会福祉研究』(鉄道弘済会)第125号、110~114頁.
  • 金子充 (2016) 「イギリスの社会扶助の再編 ―貧困の実態とユニバーサル・クレジットの展望」『立正社会福祉研究』第17巻1・2号、21~28頁.
  • 金子充 (2016) 「社会福祉における『普遍主義』概念の諸問題」 『人間の福祉』(立正大学社会福祉学部)30号、55~65頁.

社会的活動

  • 鉄道弘済会『社会福祉研究』編集委員(2022年~現在)
  • 社会福祉士国家試験委員(2020年~現在)
  • 日本社会福祉学会機関誌編集委員(2018年~2022年)
  • ソーシャルワーク研究誌(相川書房) 編集委員(2018年~2022年)
  • 国分寺市地域包括支援センター運営協議会 委員長(2018年~現在)
  • 特定非営利活動法人 ほっとポット 監事(2006年~現在)

プロフィール

1971年、東京都生まれ。
1994年、明治学院大学社会学部社会福祉学科卒業
1996年、明治学院大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士前期課程修了
2000年、明治学院大学大学院社会学研究科社会学・社会福祉学専攻博士後期課程単位取得。

日本社会事業大学・立教大学等の非常勤講師を経て、2003年から立正大学社会福祉学部専任講師。同准教授、教授として、貧困・公的扶助研究を進めながらソーシャルワーカーの育成教育に携わる。

2019年から本学社会学部社会福祉学科教授。

社会学部生のための手引き集

日々の社会福祉学科

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