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石原(俊)ゼミ

石原 俊(専攻領域:歴史社会学・島嶼社会論・植民地主義論・日本社会論)

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広義の「日本」をめぐる歴史社会学

テーマの説明

広い意味での「日本」をめぐるグローバリゼーションとコロニアリズム(植民地主義)の歴史的な展開やその現状を、「日本人」「日本国民」「国益」「日米関係」「日本経済」といったナショナルな枠組みや経済主義的な観点に同一化せず、批判的意識をもって理論的かつ経験的に考えていくことが、このゼミの目的です。

こうした作業は、いっけん簡単なようでいて、実は意外に難しい課題です。たしかに近年の日本社会では、雇用の不安定化、社会保障・福祉の削減、地方都市や農山漁村の経済的停滞などが進んだ結果、「格差」「貧困」という言葉が定着した感があります。2011年3月の大震災にともなう原発のメルトダウンは、原発をその一部に組み込んだ「戦後」日本の社会経済体制が、経済的基盤が弱い地域を補助金で骨がらみにしながら、貧困層による日常的な被爆労働に支えられるという、「差別」の体制そのものであったことを、完膚なきまでに可視化しました。また、「戦後」日本の「平和主義」体制の裏側で米軍基地を押しつけられてきた沖縄からは、本土に対して「差別」という言葉がつきつけられています。だが東京の大手メディアは、これらの問題について、やや批判的姿勢をもった報道の場合でも、昨今突然現れたかのような「時事問題」として扱うのが一般的です。しかし、これらの「問題」の背後には、幾重にも複雑に折り重なる歴史性が横たわっているのです。

そもそも、この世界の非対称性や暴力は、狭義の「経済」的要因だけでなく、世界市場や資本主義の歴史的・地域的展開や、主権国家・国民国家・帝国・レイシズム(人種主義)・セクシズム(性差別主義)といった政治的・文化的諸力の植民地主義的輻輳を、慎重にみつめることなしに、思考できるものではありません。たとえば、わたしたちは沖縄をめぐる歴史性/現在性を、帝国やレイシズムといった視点を抜きに考えることなどできません。

そしてわたしたちは、人びとがこうした諸力の輻輳にさらされながらなんとか生き抜こうとしたり抵抗したりするいとなみ(日常的実践から社会運動/思想にいたるまで)を、ナショナルな枠組みや経済主義的な観点によって単純化することなく、一種の<居心地の悪さ>とともに思考しなくてはなりません。

したがって、このゼミでは第一に、グローバリゼーションとコロニアリズムの歴史性/現在性を捉えるための社会(科)学的な方法論を、文献の精読によって学習していきます。第二に、ゼミ生個々人が関心を持つ経験的事例を、そうした方法論ともリンクさせながら考察していくことが目指されます。

使用予定テキスト・主要な参考文献

次のような文献を候補に考えています。輪読に使用するテキストおよび「準教科書」指定の文献は、ゼミ生全員に自腹で購入してもらいます。

  1. 上野成利『思考のフロンティア 暴力』(岩波書店、2006)
  2. ベネディクト・アンダーソン『定本 想像の共同体――ナショナリズムの起源と流行』(書籍工房早山、訳[1987]2007)
  3. 杉原 達『越境する民――近代大阪の朝鮮人史研究』(新幹社、1999)
  4. デヴィッド・ハーヴェイ『新自由主義――その歴史的展開と現在』(作品社、訳2007)
  5. 石原 俊『近代日本と小笠原諸島――移動民の島々と帝国』(平凡社、2007)
  6. 福間良明/野上 元/蘭 信三/石原 俊 編『戦争社会学の構想――制度・体験・メディア』(勉誠出版、2013)
  7. 石原 俊『<群島>の歴史社会学――小笠原諸島・硫黄島、日本・アメリカ、そして太平洋世界』(弘文堂、2013)【→石原の講義科目「グローバリゼーション論/ポストコロニアル論」のテキストとして使用。】
  8. 石原 俊『殺すこと/殺されることへの感度――2009年からみる日本社会のゆくえ』(東信堂、2010)【→準教科書として必携。初回の授業時までに必ず購入しておくこと。】
  9. そのほか、近刊予定の石原の評論集
ゼミの進め方

  1. まずみなさんに<社会(科)学的なリクツをこねる力>を養ってもらうために、春学期は理論的なテキストを輪読します。秋学期の進め方は、みなさんの学習状況や希望も勘案しながら、輪読・個人研究報告・グループ研究報告のいずれかに決めたいと思います。
  2. 報告の担当以外に、年度末にはレポートを提出してもらう予定です。年度末のレポートは、みなさんの学習状況に応じて、他ゼミと同様のいわゆるゼミ論にする場合もあれば、(他ゼミでは次年度初回の授業で提出する)卒論計画書のフォーマットを字数・内容ともに大幅に拡充した体裁のレポートを課すことで、ゼミ論に代える場合もあります。
  3. 予定していた輪読や研究報告を一通り終えて、まだスケジュールに余裕があれば、屋外研修(資料館・施設訪問など)に出る場合もあります。ただし、このゼミはあくまでも輪読や研究報告がメインだと考えておいてください(石原も年度によってはフィールドワーク系の調査実習を担当しているが、調査実習とゼミは全く別枠と考えている)。
  4. ゼミ合宿を行うかどうかは未定です。実施する場合、日程は春学期終了直後か秋学期開始直前になる予定です。
  5. ゼミの運営にかかわる事務・補助業務は、ゼミ生のみなさんで分担してもらいます。初回の授業時に、合宿係、コンパ係、メーリス管理係などを決めたいと思います。
  6. 成績評価は、出席状況、平常点(報告・発言等)、年度末のレポートを総合的に判断して行います。とりわけ、毎回の発言状況・発言内容を重視します