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久保 美紀 (担当科目:ソーシャルワーク1)

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専門領域あるいは担当科目の紹介

ソーシャルワーク1A・B

世間ではよく、小さな親切、大きなお世話といいます。放っておいてほしいということもあります。また、相手のためによかれと思ってしたことが相手にとっては迷惑であることもあります。私たちは時として「何のための援助か?」という援助の本質を見失うことがあります。この科目では、他者を援助するとはどういうことなのか、他者の人生の決定に加担することの意味と、そうすることの根拠、さらには社会的責任は何なのか、社会福祉の立場から考えていきます。多様な形態の援助活動がありますが、ソーシャルワークとは、わかりやすくいうと、専門的な対人援助実践です。その担い手であるソーシャルワーカーが他の援助専門職と区別されるのは、構造的に不利な状況におかれている人びとに目を向け、その立場に立って援助実践を展開するところにあります。ソーシャルワークは価値の実践と言われることがあります。それは、ソーシャルワークが知識やたんなる技術だけではなく、ソーシャルワーク実践を方向づける価値を含んでいるということを意味しています。このソーシャルワークの根源について探求していきます。

ソーシャルワークが誕生した、今からおよそ1世紀前には、貧困問題を中心とした社会的問題の解決が中心課題でした。これに加えて、現代社会では、児童・高齢者虐待、さまざまな差別など、社会的問題が複雑化・多様化しています。そして、そうした問題に適切に対応するために、ソーシャルワーカーが他の専門職のみならず、非専門職たるボランティアや一般市民を巻き込んだ形で援助実践に取り組むことが要請されています。また、ソーシャルワークとカウンセリングのオーバーラップにみられるように、実際の援助行為が重なる部分も多くなっています。つまり、ソーシャルワークがソーシャルワーカーだけの独壇場ではなくなっている状況があります。したがって、これまで以上に、ソーシャルワークの力量が問われているといえ、ソーシャルワーク実践の固有性を発揮し、その存在意義をソーシャルワーク内外に示していくことの必要性があるといえるでしょう。

ソーシャルワーク実践の営みは、看護・医療など隣接領域の対人援助職に比べて、「わかりづらい」といわれます。ソーシャルワーク実践理論については、他領域からは、借り物科学と揶揄されることもあります。これまで、理論と実践をつなぐべく、勘と経験に依拠する実践から、一定の科学の成果を援用して応用する科学的実践へ、さらにはソーシャルワーカーの実践を体系的に積み上げ、そこから一定の経験法則を導き出していくような、実践の科学化への努力がなされてきました。そして、こんにちでは、当事者(クライアント)の語りから理論構築していくことが模索されています。それは、援助者側の論理によって援助活動を展開するのではなく、当事者側の論理によって援助活動を展開することが求められていることと連動しています。理論は日々の実践から導き出されるもので、「理論、先にありき」ではありません。当事者を含んだ、実践と研究の地続きの協働作業により、血の通った実践理論の構築という課題に取り組んでいきます。

ソーシャルワーク専門実習(3、4年)、社会福祉方法演習2

女性福祉領域におけるソーシャルワークの支援論を学んでいます。クラスワークでは関連する文献や実践事例などを調べるとともに、各メンバーが実習テーマを絞り込み、実習計画を立案し、現場実習に臨みます。そして、実習の事後学習を経て、卒業論文をまとめ上げていくプロセスを共に支えあい、刺激しあいながら、学んでいます。

専門領域の理解を深めるための文献紹介

初級者のために

  1. 糸賀一雄『福祉の思想』日本放送出版会、1968年
    福祉を志す人にとって必読の書といえます。福祉の根底にある価値・人間観・援助観を本書から学んでください。
  2. 阿部志郎『福祉の哲学』誠信書房、1997年
    著者の実践に裏打ちされて語られる、福祉実践における価値、援助とは何か、といった福祉の本質に触れてください。
  3. 野村豊子ほか『ソーシャルワーク・入門』有斐閣、2000年
    タイトルに入門とあるように、理論と実践をつなぐという視点に立ち、初学者をわかりやすくソーシャルワークに誘ってくれるでしょう。
  4. NHKスペシャル取材班編『二人だけで生きたかった』双葉社、2004年
    高齢者夫婦の心中事件の周辺をたどったドキュメンタリーです。本人の意思に寄り添う援助とは、よりよい生活を支援するサービス供給システムとは、と問いかけています。

中級者のために

  1. バートレット,H.M./小松源助訳『社会福祉実践の共通基盤』ミネルヴァ書房、1978年
    ソーシャルワークは実践の領域も形態も多様ですが、その実践には共通する要素があることを呈示し、価値についても詳細に述べています。ソーシャルワークの統合化に貢献した歴史的著書といえます。
  2. 嶋田啓一郎『社会福祉体系論』ミネルヴァ書房、1980年
    ソーシャルワークの価値を語る際に忘れてはならないのは、いわゆる「嶋田理論」です。難解ですが、価値と科学の統合理論の必要性を主張する嶋田理論に挑んで下さい。
  3. 岡村重夫『社会福祉原論』全国社会福祉協議会、1983年
    言わずと知れた「岡村理論」を学ぶ入門書といえます。主体性の社会福祉論、社会福祉の固有の視点を学んでください。
  4. ブトゥリム,Z./川田誉音訳『ソーシャルワークとは何か』川島書店、1986年
    ソーシャルワークとは何か、これに対する答えは幾通りもあるかもしれません。ソーシャルワークのゆらぎが言われる今日、アイデンティティの混迷に悩むソーシャルワークに今なお、示唆を与えてくれる書です。

その他

福祉を志す高校生・大学生へのメッセージ

社会福祉を学ぶということは、自分自身の生活・生き方を見つめることでもあると思います。そして、個人と社会のつながりに目を向けてください。