世間ではよく、小さな親切、大きなお世話といいます。放っておいてほしいということもあります。また、相手のためによかれと思ってしたことが相手にとっては迷惑であることもあります。私たちは時として「何のための援助か?」という援助の本質を見失うことがあります。この科目では、他者を援助するとはどういうことなのか、他者の人生の決定に加担することの意味と、そうすることの根拠、さらには社会的責任は何なのか、社会福祉の立場から考えていきます。多様な形態の援助活動がありますが、ソーシャルワークとは、わかりやすくいうと、専門的な対人援助実践です。その担い手であるソーシャルワーカーが他の援助専門職と区別されるのは、構造的に不利な状況におかれている人びとに目を向け、その立場に立って援助実践を展開するところにあります。ソーシャルワークは価値の実践と言われることがあります。それは、ソーシャルワークが知識やたんなる技術だけではなく、ソーシャルワーク実践を方向づける価値を含んでいるということを意味しています。このソーシャルワークの根源について探求していきます。
ソーシャルワークが誕生した、今からおよそ1世紀前には、貧困問題を中心とした社会的問題の解決が中心課題でした。これに加えて、現代社会では、児童・高齢者虐待、さまざまな差別など、社会的問題が複雑化・多様化しています。そして、そうした問題に適切に対応するために、ソーシャルワーカーが他の専門職のみならず、非専門職たるボランティアや一般市民を巻き込んだ形で援助実践に取り組むことが要請されています。また、ソーシャルワークとカウンセリングのオーバーラップにみられるように、実際の援助行為が重なる部分も多くなっています。つまり、ソーシャルワークがソーシャルワーカーだけの独壇場ではなくなっている状況があります。したがって、これまで以上に、ソーシャルワークの力量が問われているといえ、ソーシャルワーク実践の固有性を発揮し、その存在意義をソーシャルワーク内外に示していくことの必要性があるといえるでしょう。
ソーシャルワーク実践の営みは、看護・医療など隣接領域の対人援助職に比べて、「わかりづらい」といわれます。ソーシャルワーク実践理論については、他領域からは、借り物科学と揶揄されることもあります。これまで、理論と実践をつなぐべく、勘と経験に依拠する実践から、一定の科学の成果を援用して応用する科学的実践へ、さらにはソーシャルワーカーの実践を体系的に積み上げ、そこから一定の経験法則を導き出していくような、実践の科学化への努力がなされてきました。そして、こんにちでは、当事者(クライアント)の語りから理論構築していくことが模索されています。それは、援助者側の論理によって援助活動を展開するのではなく、当事者側の論理によって援助活動を展開することが求められていることと連動しています。理論は日々の実践から導き出されるもので、「理論、先にありき」ではありません。当事者を含んだ、実践と研究の地続きの協働作業により、血の通った実践理論の構築という課題に取り組んでいきます。
女性福祉領域におけるソーシャルワークの支援論を学んでいます。クラスワークでは関連する文献や実践事例などを調べるとともに、各メンバーが実習テーマを絞り込み、実習計画を立案し、現場実習に臨みます。そして、実習の事後学習を経て、卒業論文をまとめ上げていくプロセスを共に支えあい、刺激しあいながら、学んでいます。
社会福祉を学ぶということは、自分自身の生活・生き方を見つめることでもあると思います。そして、個人と社会のつながりに目を向けてください。