「社会調査実習」とは,社会調査の企画から,実査,データ分析,報告書の執筆までを,10~15名ほどの少人数で1年間かけて行う科目です。専門の教員の指導のもとに,学生自身がフィールドに出てデータを集め,さまざまな方法で分析を加え,得た知見に基づいて年度末に報告書を作成します.自らの手で「社会学」を実践することができる,貴重な機会です。社会学科の学生は3年次にこの「社会調査実習」を履修することができます。また,2年次には「社会調査実習」の準備ともいえる「データ分析入門」という科目も置かれています。これらの科目は、社会調査士資格に必要となる科目で、とくに「社会調査実習」は仕上げとなる重要な科目です。
野沢慎司
(社会学科教員/2022年度 社会調査士連絡責任者・関連科目運営委員)
1年間の「社会調査実習」の成果を実習生たちがまとめ上げる『社会調査実習報告書』は、2022年3月に出た2021年度版が第38巻でした。今年度の実習の報告書は第39巻になります。明治学院大学社会学科には、社会調査教育に力を注いできた40年近い分厚い歴史があります。プライドがあります。
社会学を学ぶ方法はいろいろありますが、社会調査を体験することに優る方法はありません。1年次から社会調査に関わるいくつかの授業を履修し、調査の方法やデータ分析の方法を磨いてきたと思います。また、社会現象のいくつかへの関心を温めてきたことでしょう。そんな皆さんが3年次に履修する「社会調査実習」は、少しずつ鋭敏になってきた頭の中の知識とセンスを実際に使って試すチャンスです。言い換えれば、これまでの学びの最大の山場であり、一番おいしい仕上げです。「社会調査士」資格取得のための最後のハードルでもあります。
多様な調査フィールドに出ることによって、少しずつ「問題」が姿を現します。データを集め、分析する(少々苦しい)過程の中で、答えのようなものも少しずつ見え始めます。それは、社会を知り、社会学を学ぶことの意味が結晶化する過程です。ばらばらの個人ではなく、個性溢れるメンバーからなるチームの力が結晶化する瞬間でもあります。その過程全体が、社会調査実習の醍醐味です。
私自身、昨年度(2021年度)の実習を久々に担当して、15名の実習生とのコラボレーションを経験しました。昨年度は、コロナ禍でオンラインの実習授業が大半を占め、調査のためにどこかのフィールドに出かけること自体が大きな制約を受けました。それでも、実習生たちの柔軟な挑戦と熱意によって、そして協力者に恵まれて、オンラインインタビュー調査が実現できました。そこから多くの重要な情報を得ました。予定通りに進行しない現実と格闘する調査実習ならではの、結晶化の醍醐味を味わいました。
果たして自分にそれができるだろうか、と迷っている2年生のあなた。勇気を出して、一歩前に踏み出してみてしてください。その小さな勇気が大きな学びと成長をもたらします。明治学院の第1期生である島崎藤村が、後輩たち(皆さんのことです)に贈った言葉を思い出しましょう。
「眼さめよ 起てよ 畏るるなかれ」