「社会調査実習」とは,社会調査の企画から,実査,データ分析,報告書の執筆までを,通常10~15名ほどの少人数で1年間かけて行う科目です。専門の教員の指導のもとに,学生自身がフィールドに出てデータを集め,さまざまな方法で分析を加え,得た知見に基づいて年度末に報告書を作成します.自らの手で「社会学」を実践することができる,貴重な機会です。社会学科の学生は3年次にこの「社会調査実習」を履修することができます。また,2年次には「社会調査実習」の準備ともいえる「データ分析入門」という科目も置かれています。これらの科目は、社会調査士資格に必要となる科目で、とくに「社会調査実習」は仕上げとなる重要な科目です。
野沢慎司
(社会学科教員/2024年度 社会調査実習室長)
1年間の「社会調査実習」の成果を実習生たちがまとめ上げる『社会調査実習報告書』は、2024年3月に出た2023年度版が第40巻でした。明治学院大学社会学科には、社会調査教育に力を注いできた40年にわたる分厚い歴史があります。プライドがあります。(過去の『社会調査実習報告書』は大学の図書館で読むことができます。)
社会学を学ぶ方法はいろいろありますが、社会調査を体験することに優る方法はありません。1年次から社会調査に関わるいくつかの授業を履修し、調査の方法やデータ分析の方法を磨いてきたと思います。また、社会現象のいくつかへの関心を温めてきたことでしょう。そんな皆さんが3年次に履修する「社会調査実習」は、少しずつ鋭敏になってきた頭の中の知識とセンスを実際に使って試すチャンスです。言い換えれば、これまでの学びの最大の山場であり、一番おいしい仕上げです。「社会調査士」資格取得のための最後のハードルでもあります。
多様な調査フィールドに出ることによって、少しずつ「問題」が姿を現します。データを集め、分析する(少々苦しい)過程の中で、答えのようなものも少しずつ見え始めます。それは、社会を知り、社会学を学ぶことの意味が結晶化する過程です。ばらばらの個人ではなく、個性溢れるメンバーからなるチームの力が結晶化する瞬間でもあります。その過程全体が、社会調査実習の醍醐味です。
私自身、2021年度の実習を久々に担当して、15名の実習生とのコラボレーションを経験しました。コロナ禍でオンラインの実習授業が大半を占め、調査のためにどこかのフィールドに出かけること自体が大きな制約を受けました。それでも、実習生たちの柔軟な挑戦と熱意によって、そして協力者に恵まれて、オンラインインタビュー調査が実現できました。そこから多くの重要な情報を得ました。予定通りに進行しない現実と格闘する調査実習ならではの、結晶化の醍醐味を味わいました。
果たして自分にそれができるだろうか、と迷っている2年生のあなた。勇気を出して、一歩前に踏み出してみてしてください。その小さな勇気が大きな学びと成長をもたらします。明治学院の第1期生である島崎藤村が、後輩たち(皆さんのことです)に贈った言葉を思い出しましょう。
「眼さめよ 起てよ 畏るるなかれ」
クラス | テーマ |
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飯野智子クラス | ダイバーシティ、ジェンダー、女性学、男性学という領域で、現代社会におけるジェンダーおよびセクシュアリティに関する問題を扱う |
上村淳志クラス | セクシュアリティと教育 |
鬼頭美江クラス | 現代の対人関係形成システムに関する調査研究 |
佐藤正晴クラス | タレントとメディアの関係についての調査研究 -イメージ戦略とプロモーションを中心に |
柘植あづみクラス | 健康とは何か――都市の高齢者と医療者の健康認識と実践 |
松波康男クラス | 東京のイスラーム |
渡部沙織クラス | 人々の健康や身体に関する意識、医療や福祉の政策、ゲノムや生殖医療に関する実践と葛藤、ジェンダーやセクシュアリティと医療の関係など、医療社会学の質的研究 |
※実習テーマは今後変更になることがあります。
クラス | テーマ |
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飯野智子クラス | 現代社会におけるジェンダーおよびセクシュアリティに関する問題 |
上村淳志クラス | セクシュアリティと法 |
春日清孝クラス | 魅力ある地域づくりのために-「SDGs」,「エンパワーメント」をキーワードに- |
鬼頭美江クラス | 現代の対人関係形成システムに関する調査研究 |
仲修平クラス | コロナ禍における「雇われない働き方」の実態 |
林雄亮クラス | ライフイベントと格差 |
クラス | テーマ |
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飯野智子クラス | ダイバーシティ、ジェンダー、女性学、男性学という領域で、現代社会におけるジェンダーおよびセクシュアリティに関する問題を扱う。①恋愛、結婚、労働におけるダイバーシティ推進の試み ②セクシュアリティ表現と商品化の多様性 ③変わりゆく男性 |
春日清孝クラス | 地域活性化 と「教育」の 取り組み -「 SDGs 」を切り口として- |
佐藤正晴クラス | タレ ント とメディアの関係についての調査研究-イメージ戦略とプロモーションを中心に |
林雄亮クラス | 「 コロナ 禍 ウィズコロナ、 ポストコロナ 時代 の 人々の 日常生活と 社会意識 」を 大きな テーマとし、 受講生 が サブテーマ 例 ジェンダー、 働き方、 余暇 活動 、 ライフスタイル 、 価値 意識 など を 設定する。 |
渡部沙織クラス | 人々 の 健康 や 身体 に 関する 意識 、 医療や福祉 の 政策 、 遺伝 や 生殖 医療 に 関する実践と 葛藤 、 ジェンダーや セクシュアリティ と 医療 の 関係 など 、 医療 社会学 の質的 研究 が 扱う 多様な テーマ を 取り上げる。 |
クラス | テーマ |
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春日清孝実習 | 地域課題の解決を目指した地方公共団体の取り組み |
加藤宏実習 | コロナ禍における恋愛事情 |
品田知美実習 | 新型コロナウィルス禍の親子生活 |
野沢慎司実習 | 職業生活と「親」との間 --コロナ禍における職業・家族・ネットワーク |
松波康男実習 | 東京都城南地区に観られるイスラーム関連施設と諸実践 ;日本ムスリム協会、マスジット・インドネシアの諸活動および、明治学院大学におけるハラールの取り組みについて |
渡部沙織実習 | SDGsと地域の課題 --多様なステークホルダーのSDGs実践に関する質的調査 |
クラス | テーマ |
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飯野智子実習 | ジェンダーを超えてー多様性への取り組み |
加藤宏実習 | コロナ禍における表現文化・趣味文化の変容 |
佐藤正晴実習 | メディア・スタディーズ-テレビ番組の内容分析とコミュニケーション |
品田知美実習 | オーガニック農業に取り組む若年世代の意識 |
半澤誠司実習 | アートイベントと地域の関係性 |
水谷史男実習 | 地方都市商店街の現状とコロナ禍の影響 ―山形県酒田市を事例として― |
クラス | テーマ |
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飯野智子実習 | セクシュアリティの多様性--自認と表現 |
石原英樹実習 | 都市における商店街の役割~変わりつつある吉祥寺・高円寺・下北沢をフィールドとして~ |
加藤宏実習 | YouTubeの現在 |
鬼頭美江実習 | 大学生の学習意欲は低下するのか? (2) -大学4年間における学習意欲の変化と学習意欲を予測する要因の検討- |
品田知美実習 | オーガニックな食の提供にかかわる人々の意識と実践 |
菅野摂子実習 | 大学生のジェンダー意識と男性の育児休暇取得に対する考え方 |
水谷史男実習 | 地方都市の商店街における活性化の可能性 ~山形県鶴岡市を事例として~ |