明治学院大学

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社会学部

社会福祉学科

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"生きづらさ"の理解を通して、社会のあり方と自分の価値観を問い直す(担当教員:相澤 京美)

1. 目的及び一年間の取り組みの概要
 2016年度の福祉開発フィールドワークは、様々な理由により「生きづらさ」を経験している当事者との語らい、こうした人々への理解を通して、社会のあり方、自分の価値観や思い込みを問い直す機会を得ることを目的に授業を展開しました。
 当初は「マイノリティ」などのキーワードもあげていましたが、それにこだわることなく、各人が関心のあるテーマや対象をとりあげ、学びをすすめることとしました。
 本年度は6名の履修者がおり、各人があげた具体的なテーマには、若年性認知症、精神障害、発達障害、視覚障害、聴覚障害、LGBTなどがあります。

1年間の取り組み(概要)

【春学期】・・・各テーマについて理解を深める、インタビュー内容を構築する
 履修者によるテーマの設定
 設定したテーマに関する情報や資料収集、現状と課題の整理・分析
 資料の視覚化(パワーポイントを用いた資料作成)
 自らが設定したテーマについてのまとめ・課題の提示(プレゼンテーション)
 課題を把握するためのインタビューの視点・項目の設定

【秋学期】・・・インタビューの実施、分析・考察を行う
 インタビュー項目の再構築
 インタビューの実施(4回)
 インタビュー内容のデータ化
 インタビュー結果のレポート作成と各人発表(振り返り)
 「生きづらさ」の分析と視覚化(図式化)
 まとめ(レポート)

2. インタビューの実施(①~④)
image002.jpg【①テーマ:聴覚障害】
日時:平成28年10月11日(火) 15:05~16:35
場所:明治学院大学 1553
髙島良宏さん(ろう者)
世田谷福祉専門学校教員、日本ろう自転車競技協会理事、元NHK手話ニュースキャスター
太田佳代子さん(聴者)
世田谷福祉専門学校教員、手話通訳士、小平市登録手話通訳者、手話通訳者養成講習会講師

image004.jpg【②テーマ:視覚障害】
日時:平成28年11月15日(火) 15:05~16:35
場所:明治学院大学 1553
天野 亨さん
盲導犬と共に世界を旅する声楽家、数々のテレビ番組・講演会等に出演
北村悦子さん ガイドヘルパー
盲導犬クラウス号
ラブラドールレトリーバー、男の子

image006.jpg【③テーマ:LGBT】
日時:平成28年11月22日(火) 15:05~16:35
場所:オフィスパープル(文京区)
原ミナ汰さん
NPO法人 共生社会をつくるセクシュアル・マイノリティ支援全国ネットワーク代表理事
熟田桐子さん
東京メンタルヘルス・セクシュアルセンター
Aさん LGBT法連合会
Bさん LGBT法連合会

image008.jpg【④テーマ:精神障害】
日時:平成28年12月22日(水) 15:30~17:00
場所:横浜市磯子区生活支援センター
インタビューを受け入れてくださった方
横浜市磯子区生活支援センター 
所長 福山 修三さん
※センターの活動の参加者にインタビューを実施
※当日はピアスタッフとして活躍されている方にもお話しをうかがいました

3. 1年を振り返り、問いかけたいこと・伝えたいこと
■実態をとらえることの難しさを忘れずに
春学期は各自でテーマを決め、資料の収集・整理を行い、テーマに関する基本的な現状及び実態把握とプレゼンテーションに取り組み、インタビュー実施に必要な視点と知識を学びました。
自分が机上で理解し、発表したことは、実際にインタビューを通して知った事実と"どれほどの違い"がありましたか?
資料の収集・整理の大切さと難しさ、そして、それだけでは"その人・テーマを理解する"には不十分であったと感じた経験を大切にしてください。

■感性を大切に
秋学期は合計4回のインタビューを行いました。インタビュー項目をあらかじめ皆で用意して臨みましたが、個性的な方たちばかりで、質問しても逆に意見を求められたりと、"インタビューの醍醐味を十分に味わえる経験"ができました。そして、インタビューすること、つまり「実際にふれること」の重要性を感じたと思います。
今回インタビューをお願いした方々、とりわけ前半にインタユーをした高島さんや天野さんは、私たちよりずっとパワフル、ポジティブであり、「生きづらさ」なんて感じていないかもしれないということが伝わってきました。また、LGBTに関する問題に取り組む方たちへのインタビューでは、私たちが勝手にイメージを作り、思いこんでいることに気付かされました。そして、精神障害の方たちへのインタビューでは、思ったような回答が得られないこと、表面的な質問ではなかなか心を開いてくれないこと、話術や話しをすることの難しさを学んだと思います。
製本された報告書に掲載されている履修者レポートからは、新たな発見をしたという声が複数あがっていますが、実際にインタビューをしたことが、新しい発見や気づきを与えてくれたという真実を忘れないでほしいと願っています。

■構造的に理解する力を養う
image010.jpg私たちの社会や生活を取り巻く要素はとても複雑で、難解であるがゆえ、その構造や関係を理解しようとする努力を怠ってはならないと常に感じています。「□□さんが○○と言っていた、だから○○でいいのではないか」そんな単純な理解では、生活の実態や課題を理解することはできません。
インタビューで得られたデータを整理し、構造を理解する力の修得をめざして、秋学期はインタビューごとに丁寧に振り返りをするよう取り組みました。インタビューで得られたキーワードをあげる→その関係図・構造図をつくる、を繰り返しました。試行錯誤を繰り返しつつ、経験を重ねることでコツが得られるので、これからも構造的に物事を整理・理解することに継続的にチャレンジしてほしいと思っています。

■「生きづらさ」とは
フィールドワークを通じて、「生きづらさ」についてどう感じましたか?
私たちは社会の中で人との関係を保ちつつ生きていて、その中で「生きづらさ」が生まれるのですが、実はそれを乗り越える力を与えてくれるのも社会であり、人との関係であることに気づいたと思います。
「生きづらさ」とは何かについて、正解や一つの答えを求める必要はありません。インタビューを通じて出会った方たちの言葉や行動から、どうして「生きづらさ」が生まれるのか、それを乗り越えるにはどうしたらいいかのヒントを得られたと思います。就職して困難にぶつかったときなどは、今回のインタビューをぜひ思い起こしてください。

■インタビューにご協力していただいた皆様に感謝
学生にとってはかけがえない体験であったばかりでなく、私自身も新しい発見や気づきをたくさんいただきました。お忙しい中、インタビューにご協力いただきました皆様に改めて心より感謝申し上げます。

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