私は、学際的かつ国際的な視点から、批判的で社会変革志向のソーシャルワーク理論の研究に取り組んでいます。特に、人種・民族、ジェンダー、セクシュアリティなどに起因する社会的排除や抑圧の構造に関心を寄せ、在日朝鮮人やセクシュアル・マイノリティへの聞き取り調査を通じて、ソーシャルワークが果たしうる役割を探究してきました。
近年は、ポストコロニアリズム、反レイシズム、フェミニズムといった理論的枠組みを導入し、周縁化された人びとを社会変革の主体として捉える視点を重視しています。植民地主義を背景とする抑圧の構造を可視化し、それに抗する営みに注目することを通じて、ソーシャルワーク理論の再考を試みています。
また、ジュディス・バトラーの「哀悼可能性(grievability)」という概念に着想を得て、歴史的トラウマや記憶の継承、哀悼の政治にも関心を寄せています。社会が「誰の死を悼み、誰の死を不可視化するのか」という問いは、ソーシャルワークにおける倫理や責任のあり方に深く関わるものです。
こうした問題意識のもと、近年は年に数回フィリピンを訪問し、先住民族のコミュニティや日本軍性奴隷制(いわゆる「慰安婦」)のサバイバーによる記憶継承運動の実践を現地で調査しています。歴史的暴力が現在に及ぼす影響と、それに抗する人びとの営みに学ぶことを通じて、こうした実践がもつ社会的意義を明らかにし、周縁化された人びとの抵抗と連帯に基づくソーシャルワークの再構築をめざしています。
北星学園大学社会福祉学部福祉計画学科卒業、同大学院社会福祉学研究科社会福祉学専攻修士課程修了、同博士後期課程単位取得退学。博士(社会福祉学)(北星学園大学)。
旭川大学保健福祉学部コミュニティ福祉学科助教、名寄市立大学保健福祉学部社会福祉学科講師などを経て、2021年4月より本学社会学部社会福祉学科准教授。