福祉社会学を専門にしています。人々の福祉(well-being)を対象とする社会学が、福祉社会学です。福祉社会学と社会福祉学との違いのひとつは、社会福祉学が対象の支援や社会福祉の向上を重視するのに対して、福祉社会学は対象の理解に重きを置いている点にあります。しかし、対象(社会問題)の理解のためにも、社会福祉学や課題の現場を知り、学ぶことは不可欠です。一方で、支援実践にとっても、対象についての幅広い理解を欠かすことはできません。社会福祉学と(福祉)社会学をともに学ぶことで社会問題へのより適切な取り組み方が見えてくるのではないでしょうか。 アプローチとしては、社会福祉に直接関わる研究(社会福祉学、福祉社会学、社会政策学など)とともに、知識社会学・現象学的社会学の考え方に多くを学んできました。現象学は当事者の経験を重視する哲学の立場です。問題を経験している当事者の視点から社会を見ることは、ともすれば支援する側の視点に偏りがちな社会福祉研究にとって、とても重要なことだと考えています。支援とはそもそも何をすることなのか、といった根本的な問いが、問題経験の当事者の視点からは投げかけられていると思います。知識社会学は、言葉・概念の使われ方や働きに注目し、私たちが当たり前に使っている言葉がどのように私たちの生を形づくり、また私たちの思考・実践を規定しているかをとらえ直すアプローチです。この視点も当事者の経験や社会問題を理解・解明し、適切な支援を構想する上で重要なものだと考えています。
2000年代半ばから、ひきこもりについて調査・研究をしてきました。ひきこもりという経験、より一般化していえば、社会と個人の関係の難しさ、社会参加(社会への一方的な参入だけを意味するのではなく、社会からの距離の取り方も含めて)のあり方について関心を持っています。一方で、社会問題としてのひきこもりを理解するためには、個人の経験・生き方と直結する社会保障制度の理解が不可欠です。こうした調査・研究を通して、公正な社会とは何か、公正な社会を実現するために何が必要なのかを考えています。
神奈川県出身。早稲田大学第一文学部社会学専修卒業。早稲田大学大学院文学研究科社会学専攻修士課程修了(修士(文学))、早稲田大学大学院文学研究科社会学専攻博士後期課程満期退学。博士(博士(文学))。立正大学社会福祉学部を経て、2023年より本学社会学部社会福祉学科准教授。