社会学科岩永真治ゼミナールでは、毎年2月中旬に、台湾・台北の中心部にある私立東呉大学とグローバル文化交流会を開催しています。今年で5回目になりました。以下、参加した学生から今回の交流会に関する印象記が届きましたので、紹介します。
古典ギリシア語で「生を共にする」(συζην, living together)という言葉の「人間的な意味」は、「談論(λόγος, reasoning)や思考(知的認識, διάνοια, the intellectual)を共にすること」にあると言われています。そして、そのような「知覚」(=感覚され知的に把握されるもの)は、Zoom教室内の「空間の共有」においてもまさに「リアル」かつ「知的に快適で刺激的である」ことを、以下の2つのエッセイは表現してくれていると思います。
エッセイからは、時代の困難さがあるがゆえに可能になった「新しいコミュニケーション空間」のヴィヴィッドな「皮膚感覚」(αἴσθησῐς, bodily affections)と、直接訪問が「叶わなかった無念さ」(βούλησις, wishes, 未来への希望)が、同時に伝わってきます。
(社会学科教員 岩永真治)
台湾の東呉大学との交流会を終えて−グローバル文化交流会印象記−
2023年2月23日(木曜日)、私たち明治学院大学社会学部社会学科岩永ゼミは、台湾の東呉大学とオンライン文化交流会を行いました。
時差があり台湾時間で13:00、日本時間で14:00から2時間程度、Zoom教室でブレークアウトルーム機能を用いて、3~5人のグループで自由に日本語で会話をしました。各部屋のグループは、15分ほどでランダムに人が入れ替わり、東呉大学の学生参加者全員と話をする機会をもてました。開始直後は意思疎通が上手くできない状況で、かなり学生相互の交流が難しいと感じていました。というのも、東呉大学の学生は普段授業でZoomを使わない(Teamsを使用している)そうで、接続や操作を手探りの状態で行っていたからです。
台湾側は一つの大きな教室で交流会に参加されていて、各ブレークアウトルーム周辺の声や音で話し声が遮られてしまう場面もありました。しかし、Zoomを使い慣れている私たち明治学院大学岩永ゼミの学生が、操作を説明したり、またイヤホンをつけることを勧めたり、東呉大学の学生さんたちが教室を移動したりしたことで、「会話ができる空間」を「国境を超えて一緒に作り上げる」ことができました。これは些細なことかもしれませんが、このように物理的空間を超えて協力して一つの(また、複数の)場を作り上げたことが、その後の交流をより円滑にしたと感じました。
東呉大学の学生からは、「学校生活」と「サークル活動」「日本の文化」に関して多く質問をいただきました。「学校生活」に関連して大学の授業の話になった時、「私たちは地域のこと、教育のこと、メディアのことなど幅広く学んでいる」ことを伝えると、分野の広さに驚いていました。一方、東呉大学の日本文化の授業では「着物を着ることができ、面白い」と聞き、日本文化の象徴的存在として着物があり、それもまたあらためて興味深いと感じました。
盛り上がったのは、やはり「日本の音楽やアニメ」の話です。日本語を学んでいる学生さんたちでしたので、日本に興味を持っている人がほとんどで、日本の文化に興味を持つに至ったきっかけはアニメや音楽という方が大半でした。日本の伝統的な国民的アニメはもちろん、最近のアニメを知っているという学生もいて、私たちより詳しかったです。「おすすめの日本のアーティストを教えてほしい」と質問をもらった時も、私たちが提案するアーティストはほとんど知っていて、頭を抱えてしまった場面もありました。
この交流会は、私たちが自分たちの文化を客観的に見る視点を得ることができた、よい機会であったと思います。もちろん、台湾の大学生活や食べ物やお店のことも教えていただき、それも大変勉強になりました。くわえて、上で述べたように、最近の日本の流行や日本の文化、場所やお店などに関して詳しく知っている台湾の学生が多く、私たちがむしろ日本の魅力を教えていただいたように感じました。
さて、今回、私たちはオンラインで(Zoomで、ブレークアウトルーム機能を利用して)台湾の大学と交流会を行いました。実際にやってみると、オンラインならではの特徴を生かしたよい交流を行えたと感じます。たとえば、お互いが自分のいる空間(自分の部屋やそこからの景色、学校からの景色など)を映すことで、リアルな生活空間を目の前で互いに共有したり、また伝わりにくい単語や記録しておきたいお店の名前を瞬時にチャット機能で共有したりできました。コロナ禍でなければ対面で行えたはずの交流会でしたが、対面で行った際と変わらない量と質の学びを得たと思います。
東呉大学のある台北は、時差があるような離れた土地であるにも関わらず、オンラインを用いて時間と空間と会話を共有できたことは素晴らしいことだと感じました。台湾にあるドリンクのお店、日本にあるラーメン屋さんに、東呉大学の学生さんたちと行く約束を叶えられる日が楽しみです。
(社会学科3年 百瀬友希)
国境を超えた小さな抵抗―台湾の東呉大学との交流会を終えて―
2023年2月23日(木曜日)に、私たち岩永ゼミは、台湾の台北にある東呉大学とZoomを使った交流会を行いました。当初は私たちが台湾まで足を運び、直接顔を見て交流することを予定していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でなかなか予定を組むことができず、残念ながらZoomでの開催となりました。しかし、コロナ禍で大学生活を始めた私たちです。オンラインによる交流はお手の物でした。画面越しでも、みんな楽しそうにいきいきと、この貴重な体験をしていました。
具体的な交流のやり方は、1グループ4、5人程度でおよそ10分の交流を行い、日本人学生がローテーションで各グループを回っていくというものでした。とくに話さなければならないテーマなどはあらかじめ設けず、ざっくばらんにお互いの近況や文化に関する質問をし合いました。なかでも、「ガールズトーク」というものは万国共通で盛り上がるのだなと実感しました。お互いの国で流行っているメイクについて話したり、人気のあるアイドルの話をしたりと、すぐに互いに友だちのように話すことができました。
また、台湾に行ったことがある岩永ゼミ生も多く、自分が行った場所や食べたことがあるもの、それがいまはどんなふうに変わっているのか、などについて話をしました。個人的には台湾で飲んだタピオカのお店が、まだ人気店として残っていることに感動しました。他方で、日本に来たことがある台湾の学生も非常に多く、私たちも知らない人気ラーメン店を教えてもらい、今度行ってみようと思いました。それぞれがお互いの国で楽しかった思い出を話し合い、最後には必ず「また早く行きたい」という言葉があふれる交流会は、とても素敵な時間になったと思います。
最後に、交流会を終えてふと考えてみると、コロナ禍の話を一度も学生同士でしなかったことを思い出しました。コロナ禍での生活、コロナで変わったことを、ここ最近は日本では耳にタコができるほど聞かされてきました。そのために、とくに私たちの世代は、どこに行っても「可哀想」と言われる世代です。それでも、台湾と東京の学生同士でそのような会話がなかったことは、少しずつでもコロナが私たちの生活から消えようとしていることであると実感もしました。そして、そのような会話がなかったことが、コロナに大学時代を潰された私たち世代の、国境を超えた小さな抵抗であったようにも感じました。
来年以降もぜひ、後輩たちにこの素晴らしい交流会を体験してほしいと思います。
(社会学科3年 伊藤渚紗)