明治学院大学

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社会学部

日々の社会福祉学科

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北海道利尻島の福祉と就労について研究しました(演習1・金子ゼミ)

福祉開発コース・演習1金子ゼミの8人は、2023年夏に北海道利尻島(利尻富士町)を訪問し、離島過疎地域の福祉と就労、地域づくりをテーマに研究を進めました。

稚内に隣接する利尻島は、急速な人口減少と高齢化という社会課題を抱えています。利尻昆布やウニを中心とする漁業と観光業によって人々の雇用と生活が支えられてきましたが、後継者不足で産業の維持存続が課題になっています。そのため新たな雇用創出、高齢者や障害者の雇用拡大、島外からの移住の促進、関係人口の増加等が重要になっています。

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田村祥三町長と訪問メンバー
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役場の方々と意見交換会

ゼミではこうした利尻島の地域再生と地域づくりをテーマに利尻富士町を中心としたフィールドワークを行い、町役場、社会福祉施設、商工会、漁業関連施設等を訪問して複数の関係者にインタビューをおこないました。また、利尻富士町長を表敬訪問し、町役場の方々とともに町の魅力等について意見交換をすることができました。

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ウニの種苗施設の見学 
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ウニ剥き体験

利尻島の漁業の中心は、利尻昆布、ウニ、アワビ、ほっけ漁です。漁師だけでなく漁業には陸揚げした後にも多くの人手が必要であり、そこで高齢者や障害のある方でも仕事と社会参加の機会を得ることができるのが強みです。しかし後継者不足は深刻です。島外からの移住の促進を図っていますが、漁業で働く人材の確保は困難な状況です。

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観光を支えている大自然とサイクリング

また、利尻富士町では観光客がもたらす経済効果をめざし、体験・滞在型観光の推進やインバウンド対策等を図っているそうです。サイクリング専用道路を整備したり、自転車イベントを開催したり、また冬にはウインタースポーツを楽しめるように工夫しています。こうした地域おこしが島民の雇用と生活を支えていることを理解できました。

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町役場でのインタビュー

利尻富士町商工会青年部へのインタビューでは、島内の人口減少と高齢化によって消費経済が頭打ちであることや、競争ではなく共存型の経済が不可欠であること等の話をうかがうことができました。また、近年ではネット販売や動画配信サービスの普及によって、離島でありながら買い物や文化活動において不便は少なくなり、暮らしやすさが増していることをうかがいました。さらに地域コミュニティにおけるつながりは深く、孤立を防いでいる様子も語られていました。

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定住移住支援センター「ツギノバ」
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ペシ岬にて朝日を見る

島の医療・社会福祉の現状について、利尻富士町福祉課、社会福祉協議会、総合保健福祉センターの職員の方々からお話をうかがうことができました。
漁業で成り立っている地域ゆえに、島民の特性は自立心が強いことを特徴としているそうです。そのため介護サービスや生活保護を受けることに難色を示す高齢者も多いという課題があります。また医療機関が少ないため、受診のための稚内・札幌までの旅費を町が助成しているとのことでした。さらに町では270戸の低家賃の公営住宅も運営していたり、75歳以上のひとり暮らし高齢者に冬季の「福祉灯油代」という燃料補助の給付金を出していたり、北欧のような独自の福祉サービスが充実している様子もうかがえました。
利尻町定住移住支援センター「ツギノバ」では、スタッフの方々から事業概要について説明をうかがいました。ツギノバは島外からの定住と移住を促進する相談窓口であり、求人や住居探しのサポートをするというユニークな取り組みでした。

島の人々の暮らしを支え、地域の福祉を高めるために、雇用、移住、関係人口の増加が鍵になることが理解できました。そのために、SNS等を活用して「島の話題」を拡散するなど、若い人のアイデアを手がかりにして新しい取り組みがおこなわれていました。今回の訪問で、都会では想像することさえできなかった離島過疎地域の「福祉」について幅広く学ぶことができました。

(文責: 演習1金子ゼミ利尻島訪問グループ&金子充)

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