多文化共生とは総務省の定義によれば、「国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的違いを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくこと」を指します。日本社会において、多文化共生はすでに達成されているでしょうか。あるいは、まだ課題があるでしょうか。
日本社会では2024年末時点で376万人を超える「国籍や民族などの異なる人々」(移民)が共に生活をしています。少子高齢化が進む中、ますます多くの移民が社会福祉の担い手、または受益者になることが想定されます。大学で社会福祉を専攻している皆さんが多文化共生論を学ぶ意義は大いにあるといえます。
多文化共生論Aでは、在日コリアン、日系ブラジル人、結婚移民、技能実習生、外国にルーツを持つ子ども、難民など、毎回テーマを設定し、彼/彼女らがいつ、なぜ日本に来て、どのように暮らしているのかを理解することを目指します。また、ベトナム系移民の例から、多様性の中の多様性(superdiversity)のあり方に触れます。
多文化共生論Bでは、移民が「日本人」と同じように社会福祉を享受してこられたのかを問い直します。在日コリアンと非正規移民の例を歴史的に結び、彼/彼女らがどのように、なぜ社会福祉から排除されてきたのかを考えます。そして、「誰一人取り残さない」社会福祉を実現するためには何が必要なのかを言語化することを目指します。
授業には、演劇ワークショップ、ケーススタディ、政策立案ワークなどのアウトプット型の活動を盛り込んでいきます。講義で習得した知識を、皆さんがアウトプットをする中で実際に体得できるようにしたいと思います。
世界各国で政治的な「分断」が進んでいます。皆さんは分断された社会で生きていくのでしょうか。私は、周りの人のことを今よりも少しでも多く想像すれば、社会には「分断」を乗り越える余地が残っていると信じています。
「多文化共生論A・B」は社会福祉学を専攻している(したい)皆さんにこそ、学んで欲しい科目です。2年生対象の「福祉開発フィールドワーク」では、日本の中の多文化に触れる機会を沢山提供します。3年生対象の「演習1」では、全てのゼミ生が移民への生活史調査を実現できるように全力でサポートします。
移民のことを学ぶのは、自らについて学ぶことでもあります。今よりも目線を少し低くして、周りの人のことを想像しながら、共に学びを深めていきましょう。