この科目では、個人や家族を対象としたソーシャルワーク実践における支援の展開過程と方法論を学びます。おもにアセスメントやプランニングなどの方法についてレクチャーしますが、それらを単なるやり方や手順としてではなく、背後にある前提や権力構造を批判的に検討することを重視します。
出発点としてジェネラリスト・ソーシャルワークを取り上げますが、それがアメリカ合衆国の主流社会の知に依拠し、マイノリティやグローバル・サウスの知を周縁化してきたという批判を踏まえ、歴史的・構造的視点から問い直します。また、「ミクロ・メゾ・マクロ」といった枠組みが、複合的な抑圧を断片化し、個人の困難を構造から切り離してきた問題も扱います。
本講義では、方法論の理解とともに、それが何を見えにくくし、どのような現実を再生産しているのかを考察します。支援とは人びとの経験をいかに語り直し、意味づける営みであるのか、その政治性を見つめ直すことが中心的な課題です。
この科目では、ソーシャルワークの実践理論(practice theories)を、社会的・歴史的文脈のなかで批判的に検討します。理論は単なる技術の裏づけではなく、どのような社会を構想し、他者とどのように関わるのかを方向づける枠組みです。
生活モデルや課題中心アプローチ、エンパワメント・アプローチなどを取り上げ、それらが誰の経験を基に構築され、何を見落としてきたのかを問います。特に植民地主義、制度的レイシズム、ジェンダー不平等といった構造的暴力に対し、理論がどのように応答または沈黙してきたのかを検証します。
ソーシャルワークの理論は中立ではなく、常に特定の立場から構築された知です。本講義の後半では、ポストコロニアル・フェミニズム、哀悼可能性、当事者運動などと接続した理論枠組みを学び、オルタナティブな実践の可能性を探ります。既存の実践を延命させるためではなく、支援とは何か、連帯とは何かを、理論を手がかりに考え続ける姿勢を養います。
福祉を志す高校生・大学生へのメッセージ
社会福祉学は、誰かを「支援する」ため(だけ)の学問ではありません。互いにわかりあえない痛みを抱えながら、それでも他者と共に生きていかざるを得ない私たちが、排除や抑圧のない社会をどう築くことができるのか。社会福祉学は、そうした問いを絶えず立て直し続ける営みです。その問いは、目の前の困難にとどまらず、歴史的な不正義や植民地主義といった構造的な問題にも深くつながっています。
そして、DEI(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包括性)に関心を持つみなさん。クリティカルなソーシャルワークの学びは、社会を変える力を育むと同時に、他者との出会いに自分自身を開き、自らの立ち位置や価値観を問い直す機会を与えてくれます。ともに考え、ともに学びながら、変革への道を歩んでいきましょう。